2012年5月から実施している「市民活動団体(NPO)育成・強化プロジェクト」は、8月で集合研修「NPOを磨く15の力」が、終了し、いよいよ、このプロジェクトが本来目指そうとしている、寄り添い型プログラムであるメンターサポートプログラムに移行しました。
集合研修後には、自主勉強会も始まっています。
岩手、宮城、福島の現地事務局からの報告が届きましたので、様子をお伝えします。
岩手
地域課題解決の為に岩手県で活動するNPOの皆さん。今回のプロジェクトにおいて、岩手県では、21団体から参加して頂いております。震災前より設立されていた団体が7団体、震災後に設立された団体が14団体と比較的若い団体、メンバーが多いのが岩手の特徴です。
震災後、皆さん、その課題解決の為に奔走してきました。今回のプロジェクトの前半で実施された「NPOを磨く15の力」の座学。各会場、メンバー以外からも参加を頂き、とても貴重な機会になりました。
岩手も面積が広い事もあり、あまり、市町村を超えての交流は少ない現状でしたが、今回のプロジェクトにより、市町村を超えたメンバー同士の交流が行われておりました。さらに9月1日-2日の3県メンバーによる合宿が行われ、さらに広い交流の機会を頂きました。それぞれのテーマ、地域毎による熱い交流は、相互研鑽、刺激を与え合う素晴らしい場となりました。また、この合宿で、担当して頂くメンタ―との顔合わせが行われ、各メンバー自団体の紹介、考える課題等についての時間を経て、自団体の基盤強化に向けて、7月までご指導を頂きます。震災後にできた団体が多い岩手において、こうして全国のNPOのノウハウを直接伝授頂ける事は、まさに今後の団体の礎になります。
また、今回の合宿による副産物として、各県メンバーが主体となって行われる、「自主勉強会」が始まりました。メンバーも自団体における立場は、代表、事務局長、職員等様々です。また、市町村も広く分布しており、取り組む課題もそれぞれです。そんなメンバーがある一つのテーマで議論したり、自分たちで学習する機会をつくるという事はとても意義があり、岩手県のNPOにとって、素晴らしい機会になります。この場には、全国のメンタ―も参加頂く場合もあり、多くの学びがあります。
また、こうした学びの機会は大切ですが、岩手の自主勉強会においては、ざっくばらんな交流の時間もまた、とても貴重な時間になっています。メンバーはそれぞれの団体では、大きな責任と職務を担っております。それぞれの悩み、課題を同期ともいえるメンバー同士で共有し、ひと時を過ごす事により、深いつながりも生まれています。
自主勉強会の運営については、その都度開催場所を決め、その開催場所市町村のメンバーがその自主勉強会の企画を担います。3県の集合合宿の後行われた、10月19日に行われた自主勉強会では、大船渡のメンバーが企画、運営を担いました。またメンバーの他、メンタ―4名にも参加頂きました。会場は、大船渡市越喜来の研修施設でしたが、風光明媚な場所で、三陸の幸を実感しながら時間を過ごす事ができました。
全国メンタ―による、岩手メンバーへのメンタリングも順調にスタートしております。今回のプロジェクトにおいては、「団体基盤強化のプログラムへの助成」「他団体へのメンバーのインターン助成」も組み込まれており、メンタ―、メンバー、事務局でこうした機会を活用し、団体運営における課題解決に向けて行っております。
世界規模で活動されるNGO、全国規模で活動されるNPO、そうした先進的なノウハウが岩手に伝授される貴重な機会を頂き、本当にありがとうございます!岩手事務局からの報告でした。今後もご指導宜しくお願いします。
(岩手事務局担当 葛巻徹)
宮城
宮城のメンバーは、気仙沼、南三陸、登米、石巻、栗原、大崎、仙台、名取、岩沼、角田、山元に拠点をおく19団体から参加しています。昨年の6月から約2ヶ月間、15のテーマで構成された集合研修を登米や仙台の会場に通い、学び合いながらそれぞれメンバー同士も交流を重ねてきました。
研修プログラムが終了してからは、メンターサポートを柱としたプログラムが始まっていますが、メンバーの自主企画として“情報交換会”をこれまでに2回(10月:石巻、12月:角田)行っています。これまでの2回は、メンバーの活動拠点でミーティングスペースを提供いただき、活動場所を見学がてら訪問することができました。研修の頃に顔を合わせていたメンバー間の雰囲気とはまた違って、「久しぶり~!」と声を掛け合い、訪ねるメンバーも迎えるメンバーもなんだか嬉しそうな様子。そもそも参加しているメンバーはそれぞれ団体の代表者や事務局長、スタッフとしてプログラムを担当しながら現場で奮闘中のみなさんばかり。現場をやりくりしながらこの場を確保し、足を運んできています。
情報交換会では、メンターサポートプログラムや企画提案の取組み状況や参加メンバー自身の困りごとなどもつぶやかれ、それにはアドバイスが飛びかい、ざっくばらんに意見が交わされました。初回のその様子を見ていた時、短期間とはいえ約2ヶ月間集中して共有した集合研修の時間と学びの機会は、メンバーとメンバーの間を寄せ、関係づくりの素地となっていたことを改めて実感。
次回は2月。本プロジェクト期間の7月まで、この集まりをメンバーそれぞれがどう活かし合い、育んでいくのか、またどう発展していくのか、と期待を寄せつつ引き続き見守っていきたいと思うのでした。
(宮城事務局担当 青木ユカリ)
今、NPO育成強化プロジェクト(以下、当PJ)では、メンバーとメンターによる「メンターサポート」(※1)の真っ最中です。今まで当PJでは、2012年の5月~8月まで「NPOを磨く15の力」をテーマに研修を実施しました。その後、9月から当PJが終了する7月まで、この「メンタリング」が実施されます。これは、全国のNPO中間支援組織等のCEOがメンターとなり、メンバーさんを応援・支援するというものです。方法としては、対面で、Eメールで、電話でとなりますが、多忙なメンターさんが頻繁に現地を訪れることはなかなか難しいので、みなさん、Eメールと電話を組み合わせて工夫してやり取りを続けておられます。
先日は、宮城県担当のメンターの方が「もっと気軽に楽しく理解し合えたら」という思いから、忘年会を兼ねて「メンバーメンター交流会」を実施しました。当日は、メンターの方の担当しているメンバーさん等が4名集合。「最近活動はどう?」「Eメールの返信がないね~」「宿題は考えた?」などと、お互いに普段の活動のこと、組織の課題に関わること、地域の問題のことなど、硬軟取り混ぜた様々な話題がテーブルに上がりました。やはりお酒という潤滑油が効いたのか、真面目な形での対面やEメールだけではなかなかできないやり取りや話も出て、とてもいい機会になりました。
「楽しかった」だけに終わらない「メンバーメンター交流会」。当PJが終了するまでにまた開催できたら、と思いました。
※1メンターサポートとは
組織やコミュニティにおける個別に行われる“トータルな支援の仕組み”を指します。 真の支援マインド(被支援者の自律を意識した)を持ち、特定の領域において知識、 スキル、経験、人脈などの豊富な人(メンター)が、未だそうでない人(メンティ)に 対して成果と効果の両面において、共に学びながら(共創・共進化しながら) 継続して行う支援行動全体を意味しています。
(宮城・福島事務局担当 遠藤智栄)
福島
現在このプロジェクトの福島県のメンバーは19人です。「15の力」の講座では月に2回顔を合わせてきたメンバーですが、9月からはメンターサポートに入り、そろって顔を合わす機会がなくなってしまいます。
そこで、10月から2~3か月に1回のペースで、福島県メンバーが有志で集まる「情報交換会」を実施しています。毎回開催準備を中心に担当する「世話人」を決めての開催です。
福島県が現在抱える課題は、津波被害、避難、原発事故による放射線、風評被害、などがありますが、地域によってその課題が違います。その違いは同じ福島県内であっても十分に理解できていない現実があります。そこで、このプロジェクトで出会った19人は各地区から集まっていますので、互いの場所に行き、その地区のメンバーが案内人となって、そこの課題を共有し理解する会を行うことになりました。
第1回の10月は南相馬市に集まり、沿岸部の現状を視察し、仮設住宅で行われているサロン訪問、原発事故による立ち入り禁止区域の入口ゲートまで行き、現状を見て、感じてきました。
そして第2回は、12月6日いわき市に集まりました。この日、業務で都合がつかなかったり、風邪をひいてしまったり、参加人数は少なくなってしまったのですが、それぞれが今抱える課題やこれから先の見通しへの不安について語る率直な意見交換会になりました。下記に概要を紹介します。
第2回 情報交換会
日時:12月6日(木)10:00~16:00
会場:いわき市生涯学習プラザ
主催:福島メンバー有志
まずはいわき市の現状を見るために、バスに乗りいわき市の海岸部で津波被害が大きかった薄磯・豊間地区を視察しました。いまだガレイが残り、基礎だけ残された町並み、防波堤は壊れたままの沿岸地区を少し歩きました。その後、いわき市内の高級住宅地に作られた仮設住宅がある地区を視察しました。現在いわき市内には、他の市から移築された仮設住宅を含め、21地区36か所3,512戸の仮設住宅があります。それ以外に民間借り上げ住宅(みなし仮設)に入居している方もたくさんいます。いわき市民で一時提供住宅入居者は8,427名、双葉郡などからいわき市内への避難者は23,867名となっています。一方、いわき市外へ避難しているいわき市民は7,417名います。
昼食後、いわき市の現状などについて話を聞いたあと、皆で意見交換をし、それぞれの現状報告をしました。
その中で、メンバーから出てきた意見に、以下のような言葉がありました。
「NPOの(被災者支援)活動を行っていて感じていることは、社会に停滞感を感じる」
「復興への進捗が見えないために、市民に「あきらめ」感があるような気がする」
NPO活動をしていくためには、目標とか到達点の設定やイメージが大切ですが、現状として、どこに向かっていけばいいのかを整理できないまま、そして、いつまでこの状態が続くのかもわからないまま、NPOのスタッフは皆立ち止まることもできず走り続けています。
最後に、このプロジェクトのテーマである「組織基盤強化」について少し話し合いました。私たちの組織基盤強化のためには、県内各地域の課題を(NPOが)共有することは必要なことだ。という共通理解のもと、今後もこのような情報交換会を続けながら、各地域の課題や悩みを共有できる場を作っていこう、という意見が交換されました。
(福島事務局担当 内山智子)