7月2日、3日。横浜市八景島のホテルにて「NPO支援センター初任者研修会2015」を開催しました。NPO支援に携わるスタッフの中から概ね勤務開始2年以内の方を対象に、「社会課題解決のために、求められるNPO支援センターの役割」をテーマに1泊2日の合宿型で学びます。今年の参加者は総勢47名(37団体)。全国各地から集まりました。
支援センタースタッフ初任者と言っても参加者の経験は多種多様。研修会の冒頭では、2日間共に学ぶ参加者の顔と名前を覚えることも兼ねてアイスブレイク。誕生日順に並んで輪をつくるバースデイサークルや、自己紹介じゃんけんなどでまずは動くことと話すことで、参加者も緊張が少しほぐれたようです。
1日目の研修は主に講義と事例報告。「NPOを取り巻く環境の変化とNPO支援センターに求められる役割とは」と題して日本NPOセンター事務局長の新田英理子より講義を行いました。最後のメッセージとして「あなたは何のためにNPO支援センターで活動しているのか?」、「本当の”支援”を行っているか?」という問いがありました。この2日間で特に考えてほしいこのテーマ。参加者からは「何のため? 誰のため? 色々考えさせられる話が多かった。」、「入って間もないからという逃げが消え、気が引きしまる思いがした。」という感想をいただきました。
講義をふまえ、参加者自身のNPO支援センターではどのような特徴をもって活動しているのかについて同じテーブルの参加者と話し合い、次の事例報告に臨みます。
事例報告では、かつて初任者研修に参加されたお二人からお話いただきました。お一人目は、特定非営利活動法人せんだい・みやぎNPOセンターの桃生和成さん。主に前年度まで所属されていた公設民営(行政が施設を整備し、民間団体で運営する形式)の多賀城市市民活動サポートセンターでのご経験を中心に、概要や、事業説明、職務の進め方など細かにお話いただきました。その中で公設民営の支援センターで桃生さんが大切に感じていることとして(1)「行政施設」ではなく、「公共施設」であることを意識してほしいということ、(2)実現したい理想のまちや施設の姿を描くこと、(3)内外から信頼される組織をつくること、(4)誰のためにやっている仕事なのかを意識すること、をポイントして挙げられました。
お二人目は、特定非営利活動法人くびき野NPOサポートセンターの新保絵梨さん。こちらは民設民営のNPO支援センターとして、組織の沿革、地元紙「上越タイムス」との協働事業や、被災地支援ボランティアバスの運行など取組みをご紹介頂きました。新保さんからスタッフとして心がけていることとして(1)誰のため?何のため?かを常に考えること、(2)現場に飛び出ていくこと、(3)行政とNPO(自組織)だけがWin-Winになって、市民や市民活動団体が置いてきぼりになる危険性を意識すること、(4)他団体の研修会やイベントに赴いたら会場運営のコツを吸収できないか意識すること、(5)仕事を一人で抱え込まないこと、をポイントに挙げられました。
奇しくも、桃生さんと新保さんがスタッフとして心がけていることには通じるものがありました。また新田の講義の最後にメッセージとしてあった「誰のために、何のために」やっているのかということも、お二人が大切にされていることは参加者にも印象的だったのではないでしょうか。
お二人の事例報告のあとはパネルディスカッション形式で参加者からの質問をもとに、回答していくスタイルで進行しました。なかでも桃生さんからは「場(窓口・センターなどのハコ)があることが強いという反面、施設運営に追われ行政に向けての政策提言をしていくことが難しいということ、新保さんからは地域を構成する企業や地縁組織、市民から必要とされることが求められ、それが強みとモチベーションにつながっているということを挙げられました。
1日目の研修はこれで終了。さらに夜中まで続いた交流会でも議論が続きました。
2日目の研修内容は「NPO支援センターの役割について改めて考えるグループワーク」として日本NPOセンター企画部門長の吉田建治より2つのテーマに分かれてディベート形式による討論を行いました。2つの設問は「NPO支援センターは事業展開において自組織へのボランティア参加を最優先で進めるべきか、否か」、「NPO支援センターは貸会議室などのハードウェア支援をやめるべきか、否か」というもの。数人一組のグループで「YES」「NO」に分かれ、午前中にそれぞれで議論をして論理構築を行い、午後からいよいよ討論会。圧倒的な説得力でフロアを翻意させたグループもあれば、結局YESかNOかを断定するのは難しいように感じたところもありました。いずれにせよ、相手の論理をくじくことが目的ではなく、準備段階で「NPO支援センターの役割とは何か」について徹底して考え抜くことに意味があるこのパート。参加者からは「自分が思いつかないような意見に行きつき、とても新鮮だった。」、「自分と正反対の意見の立場になることで、見えてくるものがあった。」と多様な視点で考えることもできたという意見もいただきました。
最後に「YES」「NO」の立場を離れて気づきを話してもらい、振り返りを行って2日間の研修は終了。徹底討論で、クタクタの参加者の皆さまおつかれさまでした。
講義だけでなく、議論を多く設けた初任者研修会でした。参加者がそれぞれ現場のNPO支援センターで「誰のために、何のために」を意識して日々活動に取組んでもらえることを祈っております。来年も同研修会は開催を予定しています。