【報告】ともに市民社会をつくる学びのコミュニティ ともしび・NPOスクール開講!

2024年7月20日(土)、レンタルスペース SOOO dramatic!(東京都台東区)およびオンライン(Zoom)で「ともに市民社会をつくる学びのコミュニティ ともしび・NPOスクール」開講式が開催され、全国各地80人を超える受講メンバーの学び合いが始まりました。

本事業は社会の課題解決や価値創造に向け、NPOやNPOに伴走するNPO支援者、行政・企業の担当者などが垣根を越えて学び合い・交流する場をつくり、さらなる市民社会の創出を目指すものです。全18講座から自由に選んで参加することのできる「NPOスクール」を11月まで実施します。年度後半にはさらに学びと交流を深めることのできる「ひみつゼミ」も開催予定です。
開講式では『市民社会とケア 「する/される」から「つくりだされる」へ』をテーマに、毎日出版文化賞、小林秀雄賞、大宅壮一ノンフィクション賞、新潮ドキュメント賞などを受賞した「シリーズ ケアをひらく」を立ち上げ長年編集に携わってきた元医学書院の編集者・白石正明さんと、全国に広がる「こども食堂」の名付け親でもある気まぐれ八百屋だんだん店主の近藤博子さんに話題提供をいただきました。

「市民社会」と「ケア」って相性悪い?

まず白石さんは近代的な市民社会に対する、自立した個人が自己決定と契約によって、目的や目標に向かって能動的・積極的に行動する「しっかりとした」イメージへの違和感をお話しつつ、「市民社会とケアは、相性が悪いのでは?」と話されました。
白石さんは最近、新聞記者から「白石さんの本は、みんな自己啓発本の反対ですね」と言われて、「成長」や「こうすればできる」と言わない、徹底的な現状肯定、今ここにいて、それが素晴らしいという論理について本づくりでやってきたことを感じたと言います。例えば、2012年に作られた『弱いロボット』という本の帯には『ひとりでできないもん』と記されました。その意図を「ひとりでできることが良いことなのか?という問いがあった」ことと紹介されました。

近藤さんは、「子ども食堂がここまで全国的に広がることや、子ども食堂に期待される役割がこんなに広がるとはと想定していなかった。たまたま出会った子どもの話を聴いて私たちのできることを考えた結果が、今でいう”子ども食堂”だった」と話されました。
近藤さんは目の前の人を大事にした活動を徹底してきたといいます。その背景に、市民活動は「大きなことじゃなくて良い」、「実は、私たちは大きなことができる訳ではない」という思いがあります。大きな何かをする以前に目の前の人を大切にできているか、その方が重要なのではないかと、近藤さんは話します。

「つくりだされる」ケアとは?

そして、話題は「”する/される”関係性ではない”お互いさま”を身近に、地域につくることができているか」という問いに展開しました。

白石さんは「『発酵』とケアは似ていると感じる」と表現されました。例えば漬物をつくろうとするときにやることは発酵する素材を仕込むまでで、そのあと自ずと美味しい漬物が出来上がるように、ちょっとした偶然や冗長性、本来の目的とは異なる要素も含めてケアが能動的な行動を超えて「つくりだされる」。白石さんから、そのような説明がありました。

また、ほかにも「例外を許容することができるか」、「シンフォニーよりポリフォニー(たくさんの声や意見)」、「多様性という言葉で、自己責任にしていないか」など、2人のお話からさまざまなキーワードが提示されました。その後も、参加者との意見交換を通じて「何事も目の前の人を大事にすることから始めること」や、「一歩を踏み出せない人も地域や社会の一員であることを再確認すること」など市民社会とケア、そして今後の各講座でも考えたい論点などが共有されました。

参加者からの感想をいくつか紹介します。

・「市民社会」「ケア」その言葉を引用して意見を述べるとき、その言葉が一人歩きしないように、今回のような研修は、とても有意義だと感じました。学ばせていただき、ありがとうございました。お二人の世間を見つめる視点のお話に、共感することばかりでした。活動内容は異なっていても、求めているものが似ていると感じました。(岩手県・50代・女性)

・開講式ということで、学びというよりこれからの講座の導入という気持ちで挑みました。市民社会とケアというテーマでしたが、そこに出てくるワードに対し、自立やケアの意味について、自問自答しながら聞いていました。モヤモヤとした始まりで、参加していて、さらにモヤモヤが深まって終了しました(笑)しかし、そのモヤモヤも悪い意味ではなく、これからいろんな方と講座を受ける中で、自分なりに答えが出るのではと期待しています。(熊本県・40代・女性)

・今回の学びに参加した理由は、26年以上仕事をしているのに、「NPOってなんだっけ?」という疑問と「このまま活動を続けていけるのかな?」という漠然とした不安があったからでした。少しでも皆様からなにかお知恵をいただけたら…という期待を持って参加させていただきました。結果、参加してとても良かったです。皆様の社会への疑問や活動に対してのスタンス。その、疑問に思うことを止めない姿勢に強く共感しました。(神奈川県・40代・女性)

・「市民社会とケア」は、考えたことないテーマでした。しかし、白石さん、近藤さん、主催者である日本NPOセンターの考えを聞いていくうちに、最近の自分の問題意識と実は重なっていた!ということがわかってきて、面白かったです。(東京都・30代・男性)

ともしび・NPOスクール開講式にご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。今後も多彩な講座を通して、新しい開かれた学び合い・交流・仲間づくりの場をつくってまいります。ぜひ、ご参加ください!

▼市民社会② いろんな人の市民社会論「続・ケアの観点からNPOのあり方を考える」

日  程:2024年7月30日(火)13:30~15:30
会  場:オンライン(Zoom)
話題提供:播磨 靖夫さん 一般財団法人たんぽぽの家 理事長 / 社会福祉法人わたぼうしの会 理事長
参 加 費:5,500円(税込)*「受講メンバー」は無料です
内容・話題提供者プロフィールはこちら(話題提供の後に参加者同士の意見交換を行います)

▼連携・協働② そうだったのか!協働の考え方・基礎知識

日  程:2024年8月6日(火)13:30~15:30
会  場:オンライン(Zoom)
話題提供:椎野 修平 認定特定非営利活動法人日本NPOセンター 特別研究員
参 加 費:5,500円(税込) *「受講メンバー」は無料です
内容・話題提供者プロフィールはこちら(話題提供の後に参加者同士の意見交換を行います)

▼NPO支援② NPO支援者の仕事と姿勢「寄り添い、向き合う」

日 程:2024年8月20日(火)13:30~15:30
会 場:オンライン(Zoom)
話題提供:生越 康治さん 特定非営利活動法人NPOくまがや 熊谷市市民活動支援センター センター長
     入江 陽子さん NPO法人市民ネットすいた 吹田市立市民公益活動センター ラコルタ
参 加 費:5,500円(税込) *「受講メンバー」は無料です
内容・講師プロフィールはこちら (話題提供の後に参加者同士の意見交換を行います)

▼いろんな人の市民社会論「仲間とともに活動をつづけるコツ」

日  程:2024年8月27日(火)13:30~15:30
会  場:オンライン(Zoom)
話題提供:山崎 宏さん 特定非営利活動法人 ホールアース自然学校 代表理事
参 加 費:5,500円(税込)*「受講メンバー」は無料です
内容・話題提供者プロフィールはこちら(話題提供の後に参加者同士の意見交換を行います)

ともしび・NPOスクールには「受講メンバー」に登録して参加がおすすめ!

NPOスクールの参加方法は「受講メンバー(日本NPOセンター正会員22,000円/一般33,000円/団体66,000円*)」と「各回参加(5,500円)」の大きく2つ。「受講メンバー」に登録すると、全18講座から自由に選んで参加することができます。
受講メンバーには各講座の内容を一定期間アーカイブで共有し、いつでも学びたいときに学ぶことができます。4回以上ご参加される場合、受講メンバーの方がお得になります。ぜひ日本NPOセンター正会員にご入会いただく形での参加をご検討ください。詳しいご案内はこちら
*団体正会員のみ。団体参加は1団体あたり原則3名までですが、講座ごとに団体内の異なるメンバーやスタッフが参加しても構いません。