2025年2月に災害対策基本法や災害救助法などさまざまな関連法の改正案が閣議決定されました。日本NPOセンターでは、この改正案の主に「被災者援護協力団体の登録」によってNPOの被災者支援活動が妨げられないよう意見書を内閣府に提出しました。
引き続き、全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)等とも連携しながら関係省庁との意見交換などを行っていければと考えています。
「災害対策基本法改正案に関する意見書」
(前文省略、項目以下を抜粋)
1.官民連携について自治体に積極的に周知し、広く三者連携を推進することの後押しをすること
本来、発災時に官民連携を円滑に進めるためには、被災地域の自治体の判断でNPO等と連携できる体制の整備が理想で、日ごろからの自治体担当者とNPO等との対話や連携が不可欠です。いざというときに被災者援護協力団体制度に頼らずとも地域のレジリエンスを軸とした官民連携が積極的に展開されるよう、日ごろからの取り組みを後押ししてください。
そのために特に災害時に最も被災者に近いところで対応にあたられる基礎自治体において、日常的にNPO等との対話や協議の場を持つ、協働事業を行う、訓練を合同で行うなどNPO等への理解を深める機会を作っていただくとともに、そうした対話と連携から得られた知見が地域防災計画に反映されるよう、自治体に対する普及啓発をこれまで以上に行ってください。
2.被災者援護協力団体以外の団体の被災地での活動を妨げないこと
被災者援護協力団体はその趣旨から被災者支援に関する高い専門性と組織基盤が求められるため、これまで被災地で活動を行ってきたNPOの中でも一部のみが対象になることが想定されます。一方で従来の被災者支援活動では、特に復旧から復興のプロセスにおいて、時間の経過とともにボランティアグループを含む小規模な団体、災害支援を専門としない多分野の団体、地元住民によって新たに立ち上がる団体などが多数活動をしてきました。これらの団体はもっぱら災害支援を専門としていないため、被災者援護協力団体制度になじみません。登録外の団体であっても従来通り自発的な意思に基づいて被災者支援活動を展開することを妨げないように留意してください。
3.被災者援護協力団体以外の団体を三者連携の枠組みから排除しないこと
先述の通り、災害時には被災者援護協力団体になじまないNPOによる活動が多数展開されることが想定されます。そうした団体も被災者支援においては重要な役割を果たしていることに鑑み、三者連携などの官民連携の枠組みや、情報共有会議などにおいて排除されないように留意してください。また、被災者援護協力団体が登録外のNPOと連携して活動を行う際に、必要に応じて個人情報を含む情報共有ができる枠組みを整備してください。
4.被災者援護協力団体制度の設計にあたっては、官民の対話を重視すること
今回の改正案において新設される被災者援護協力団体については、改正法成立後に運用についての詳細設計がなされることと思います。本制度が一定の専門性と情報管理を求められることに鑑み、登録対象となる団体には相応の専門性とガバナンス体制、説明責任を担保できる仕組みが必要であると考えます。検討に際しては本制度の趣旨に沿って対象となるNPO等の想定を明確にするとともに、現実に即しNPOの専門性が最大限に活かせる制度設計となるよう、NPO等へのヒアリングや意見交換会の開催など、開かれた対話の機会を持つようにしてください。また、客観的で透明性のある制度設計となるように留意してください。