「NPO法人制度の税制改正に関する要望書」を提出しました

 北海道NPOサポートセンター、あおもりNPOサポートセンター、いわて連携復興センター、アットマークリアスNPOサポートセンター、杜の伝言板ゆるる、茨城NPOセンター・コモンズ、藤沢市市民活動推進連絡会、ふくおかNPOセンター、日本NPOセンターの9団体は、連名で「NPO法人制度の税制改正に関する要望書」を提出しました。

NPO法人制度の税制改正に関する要望書

2013年9月20日
特定非営利活動法人 北海道NPOサポートセンター
仮認定特定非営利活動法人 あおもりNPOサポートセンター
特定非営利活動法人 いわて連携復興センター
特定非営利活動法人 アットマークリアスNPOサポートセンター
特定非営利活動法人 杜の伝言板ゆるる
認定特定非営利活動法人 茨城NPOセンター・コモンズ
特定非営利活動法人 藤沢市市民活動推進連絡会
特定非営利活動法人 ふくおかNPOセンター
認定特定非営利活動法人 日本NPOセンター

 これまでに全国のNPO支援センター等で作るネットワーク組織である「NPO/NGOに関する税・法人制度改革連絡会(以下、NPO/NGO連絡会)」では、税制改正に関する要望書を提出しており、その多くを実現していただきました。2012年4月に改正NPO法が施行されてから現在まで、所轄庁が認定した認定NPO法人は136件、仮認定NPO法人は97件になり、申請件数はその倍を超えています。実際に認定を受けたNPO法人の数が増加する以上に、寄附金を集めて認定を取得することにチャレンジするNPOが増加していることは、改正の大きな成果であると言えます。ご努力いただいたみなさまに感謝申し上げます。
 今後、さらにNPO法人が自立的に活発な活動を進められるよう、より一層税制面での支援を充実させる必要があります。それがひいては共助社会づくり懇談会の趣旨でもある「さらに地域の活性化を図るとともに、全ての人々がその能力を社会で発揮できるよう下支えを進める共助社会をつくっていく」ことに寄与すると考えます。
 そこで、2011年の「NPO/NGO連絡会」による要望書で実現をしていないことを含めて、ぜひ以下の事項を実現していただきたく、要望いたします。

【寄附金税制の拡充等】
1.課税仕入れ等以外に使途が限定されている寄附金等を特定収入から除外すること。
2.消費税制における仕入控除税額の特例の対象となる特定収入の範囲を適正化すること。
3.寄附金控除において年末調整での適用を認めること。また、適用下限額・控除上限額を撤廃するなど個人向け寄附税制をより一層拡充すること。
4.法人寄附金の損金算入限度額を所得の10%まで引き上げること。また、現物寄附は全額損金算入可能にするなど法人向け寄附税制をより一層拡充すること。
5.認定NPO法人への不動産等の寄附は、みなし譲渡所得課税を自動的に適用除外とすること。
6.受取利子・配当等の源泉税は、公益社団・財団法人と同様に非課税とすること。
7.「大規模災害発生時に、救援・支援活動を行う認定NPO法人等に対する指定寄附金制度を迅速に発動できるよう制度化すること

【NPO法人税制の改善】
8.「収益事業」の定義を厳密にした上で明確化すると共に、実質的に寄附とみなせるものは収益事業に該当しないものとすること
9.地方税においては、用途により不動産取得税・固定資産税は非課税とすること
10.小規模NPO法人に対する法人税の免税点制度・簡易申告制度を創設すること

【寄附金税制の拡充等】

1.課税仕入れ等以外に使途が限定されている寄附金等を特定収入から除外すること。

 現行の消費税法では、NPO法人が民間から受け取る寄附金は全額が特定収入に該当することとされています。この結果、例えば、受取寄附金を原資として国外への助成活動を行なっているNPO法人では、海外への助成金の一部を消費税として納税し、受取寄附金の全額を助成に充当できないといった事態が生じています。こうした不合理を解消するため、平成25年度税制改正大綱に盛り込まれ税法改正のなされた、「公益社団・財団法人が受ける寄附金のうち、当該寄附金の募集要項等においてその全額の使途が課税仕入れ等以外に限定されているものについては、消費税の特定収入から除外する」という規定を、認定NPO法人にも適用するよう、お願いいたします。

2.消費税制における仕入控除税額の特例の対象となる特定収入の範囲を適正化すること。

 現行の消費税は課税売上にかかる消費税額から、課税仕入れにかかる消費税額(仕入控除税額)を控除する仕組みとなっていますが、寄附金等の対価性のない収入(特定収入)によって賄われる課税仕入れ等の消費税額は仕入控除税額の対象から除外することとされています。そのため、特定収入が多い団体ほど、消費税の負担が増える状況になっています。
寄附金控除等の充実により期待される、認定NPO法人への寄附の拡大を団体の自立的運営につなげることができるよう、下記項目の実現をお願いいたします。

・認定NPO法人が受ける寄附金、会費等は、使途の指定の有無にかかわらず、消費税の特定収入から除外する。

3.寄附金控除において年末調整での適用を認め、適用下限額を撤廃するなど個人向け寄附税制をより一層拡充すること

 東日本大震災支援においても、非常に多くの国民が義援金や活動支援金の寄附を行っています。しかし、現在は寄附金控除を受けるためには、給与所得者(サラリーマン)であっても確定申告することが求められます。一般の給与所得者が確定申告を行うことは敷居が高くなっています。税額控除導入による、寄附のすそ野の拡がりを最大化するためには、同時に利便性の向上も不可欠です。少額寄附を対象外とする適用下限額(足切り金額)も、税額控除制度導入を受けて、撤廃するべきです。さらに、控除上限額の引き上げまたは撤廃も検討する必要があります。
 また、現行の方式では、年度末(年末)になって所得が確定してから、やっと寄附金控除の限度額や損金算入の限度額が分かる仕組みとなっています。このため、年度末(年末)にならないと安心して寄附できなくなっています。一方、米国では5年間の繰り越し控除が認められています。
 より実効性の高い寄附金控除制度に向けて、下記項目の実現をお願いいたします。

・給与所得者が年末調整で寄附金控除を行えるようにする
・所得税・個人住民税における寄附金控除適用下限額(2千円)を撤廃する
・所得税・法人税において、寄附金の5年間にわたる繰り越し控除制度を導入する

4.法人寄附金の損金算入限度額を所得の10%までに引き上げ、現物寄附は全額損金算入可能にするなど法人向け寄附税制をより一層拡充すること

 最近では「寄附付き商品・サービス(商品価格の数%をNPOなどに寄附するもの)」や企業によるNPOへの助成・寄附も盛んになってきています。しかし、企業等からNPOに対する寄附税制は、特に中小企業の場合、損金算入限度額に問題があります。例えば、資本金1000万円の中小企業が、年間100万円の利益全額を認定NPO法人に寄附したとしても、37,500円しか損金算入できません。その結果、決算が損益0となっても40万円近い税金(税率40%と仮定)を納付しなければなりません。
 また、現在の税法では、自社製品などの現物寄附に課題があり、認定NPO法人に寄附をした場合でも、損金算入限度額の枠内でしか損金として扱えません。一方で、法人税法基本通達にて、不特定/多数の被災者支援への提供は全額損金算入が可能です。しかし、平時においても、企業の棚卸資産や不要品の提供はNPOを支えてくれています。
民間が民間を支える仕組みをより促進し、日本の寄附文化を大きく発展させるためにも、下記項目をお願いいたします。

・法人寄附金の損金算入限度額を所得金額の10%等へ引き上げる(または、法人寄附金に対する税額控除制度を創設する)
・不特定または多数の支援を行う認定NPO法人に対する法人の現物寄附は全額損金算入を可能にする

5.認定NPO法人への不動産等の寄附は、みなし譲渡所得課税を自動的に適用除外とすること

 現在、みなし譲渡所得課税の適用除外は、公益社団・財団法人や特定一般法人(非営利型)は明示的に認められていますが、認定NPO法人は明確ではありません。また、実際の適用には厳しい要件のクリアと煩雑な手続きが必要です。認定NPO法人の中には、ナショナルトラスト活動やホームレス・DV被害者支援施設の設立活動など不動産や建物の寄附が、非常に重要となる団体も多くなっています。少子高齢社会においては、不動産の相続と共に、不動産の寄附も増加が確実です。ぜひ、下記項目の実現をお願いいたします。

・認定NPO法人も「みなし譲渡所得の非課税」の適用対象であることを明示し、煩雑な手続きなしに自動的に適用されるものとする

6.受取利子・配当等の源泉税は、公益社団・財団法人と同様に非課税とすること

 受取利子、配当等の源泉税については、公益社団・財団法人では非課税とされているのに対し、認定NPO法人では課税とされています。制度的に不公正な状況を考慮し、ぜひ下記項目の実現をお願いいたします。

・認定NPO法人の受取利子・配当等の源泉所得税は、非課税とする

7.大規模災害発生時に、救援・支援活動を行う認定NPO法人等に対する指定寄附金制度を迅速に発動できるよう制度化すること

 東日本大震災を受けて、震災特例税制(第1弾)にて創設された「被災者支援活動を行う認定NPO法人等向け指定寄附金制度」は、19法人(2013年6月17日現在・期間が終了した法人を含む)が活用しており、認定NPO法人の評価も高いです。しかし、制度創設までに2ヶ月弱を要し、また指定寄附金制度上、遡及適用ができないことに改善を求める声もあります。近い将来、再び東日本大震災レベルの大規模災害が発生する可能性も十分に考えられます。そこで、大規模災害発生時の寄附促進を素早く行うため、下記項目の実現をお願いいたします。

・大規模災害発生時(例えば災害救助法適用時)に、救援・支援活動を行う認定NPO法人等に対する指定寄附金制度を迅速に発動できるよう制度化する

【NPO法人税制の改善】

8.「収益事業」の定義を厳密にした上で明確化すると共に、実質的に寄附とみなせるものは収益事業に該当しないものとすること

 現在、NPO法人は税法上の収益事業を行った場合、所得に法人税が課税されます。収益事業は「列挙された34業種に該当し、継続して事業場を設けて営まれるもの」と規定されていますが、曖昧で分かりづらい上にNPO法人側に厳しく規定されています。
「地域福祉のため、年6回開催されるチャリティバザー」や「音楽家を招いて開催したチャリティコンサート」、「海外支援のための書き損じハガキの収集・換金」に課税されているのが現状です。人々の善意を基にして得た活動資金が、税務負担で減少しNPO法人の資金難に拍車をかけています。ぜひとも、下記項目の実現をお願いいたします。

・税法上の収益事業の定義を厳密にした上で、明確化する
・寄附された不用品のチャリティバザーなど、実質的に寄附とみなせるものは、回数・日数に関わらず収益事業に該当しないものとする。

9.地方税においては、用途により不動産取得税・固定資産税は非課税とすること

 現在の地方税法では、公益社団・財団法人や社会福祉法人、一般社団・財団法人などには、不動産の用途に応じて不動産取得税の非課税措置が設けられています。また、固定資産税においても、これら法人には同様の非課税措置が設けられています。しかし、NPO法人に対しては、公益法人等に認められている両税の非課税措置が、認められておりません。NPO法人の中には、保健・福祉や社会教育、環境保全など土地・建物の取得が活動発展の鍵となる分野も少なくありません。ぜひ、下記項目の実現をお願いいたします。

・用途によりNPO法人の不動産取得税・固定資産税は非課税とする

10.小規模NPO法人に対する法人税の免税点制度・簡易申告制度を創設すること

 小規模のNPO法人が税法上の収益事業を行った場合、会計を区分して事業別の決算書を作成し、法人税等の税務申告書やそれに関する添付書類を作成することは、NPO法人の現状では、財政面や人的面から相当の負担になっています。小規模の営利企業では、こうした業務を税理士等が有償で代行していますが、NPO法人の場合はその資金捻出も困難なため、多くの団体で本来活動の時間を削って職員やボランティアが対応しています。
米国では、一定規模以下の小規模NPO法人は免税になる制度が存在します。こうした制度にならい、小規模なNPO法人の活動しやすい環境整備に向けて、ぜひ、下記項目の実現をお願いいたします。

・事業収入が例えば年間300万円未満の場合、法人税、都道府県・市民税(均等割を含む)、事業税の申告納税義務を免除する免税点制度を創設する
・事業収入が年間1000万円未満の場合、事業収入の一定比率を自動的に課税所得とする申告を選択可能する簡易申告制度を創設する

「NPO法人制度の税制改正に関する要望書」呼びかけ団体並びに賛同団体一覧

呼びかけ団体
特定非営利活動法人 北海道NPOサポートセンター (北海道)
仮認定特定非営利活動法人 あおもりNPOサポートセンター (青森県)
特定非営利活動法人 いわて連携復興センター (岩手県)
特定非営利活動法人 アットマークリアスNPOサポートセンター (岩手県)
特定非営利活動法人 杜の伝言板ゆるる (宮城県)
認定特定非営利活動法人 茨城NPOセンター・コモンズ (茨城県)
認定特定非営利活動法人 日本NPOセンター (東京都)
特定非営利活動法人 藤沢市市民活動推進連絡会 (神奈川県)
特定非営利活動法人 ふくおかNPOセンター (福岡県)

賛同団体 (2013/10/30現在)
特定非営利活動法人せんだい・みやぎNPOセンター (宮城県)
群馬NPO協議会 (群馬県)
特定非営利活動法人和光まちづくりNPOセンター (埼玉県)
一般社団法人地域公益推進機構 (埼玉県)
特定非営利活動法人市民活動情報センター (東京都)
認定特定非営利活動法人NPO会計税務専門家ネットワーク (東京都)
特定非営利活動法人子どもNPO・子ども劇場全国センター (東京都)
特定非営利活動法人日本ファンドレイジング協会 (東京都)
特定非営利活動法人まちづくり情報センターかながわ (神奈川県)
認定特定非営利活動法人くびき野NPOサポートセンター (新潟県)
特定非営利活動法人いしかわ市民活動ネットワーキングセンター (石川県)
認定特定非営利活動法人しがNPOセンター (滋賀県)
公益財団法人淡海文化振興財団(淡海ネットワークセンター) (滋賀県)
社会福祉法人大阪ボランティア協会 (大阪府)
認定特定非営利活動法人 大阪NPOセンター (大阪府)
特定非営利活動法人岡山NPOセンター (岡山県)
特定非営利活動法人ひろしまNPOセンター (広島県)
特定非営利活動法人わかやまNPOセンター (和歌山県)
特定非営利活動法人かごしまNPO支援センター (鹿児島県)