Microsoft NPO Day 2010 地域別ミーティング(仙台・8/31)実施報告

Microsoft NPO Day 2010 地域別ミーティング 報告書(仙台)
■<1> 内容報告、当日の議論内容、様子
・セミナー名:『ICTスクールみやぎ』キック・オフ・イベント みやぎのNPOのIT活用を支援する
・開催日:2010年7月2日(金)13:30~16:00
・会場:マイクロソフト株式会社東北支店セミナールーム
(仙台市青葉区一番町3-1-1 仙台ファーストタワー21階)
・プログラム:
(1) 開会・主催者挨拶(13:30~13:37) 
特定非営利活動法人杜の伝言板ゆるる代表理事 大久保朝江
(2) NPO Dayの経緯と社会貢献活動について(13:37~13:50)
Microsoft株式会社 社会貢献部社会貢献コーディネーター 西堀 華子氏
(3) 事例報告「NPOのIT化を支援してきて」(13:50~14:40)
特定非営利活動法人あおもりNPOサポートセンター事務局長 三澤章氏
~休憩5分
(4) 講演「IT化をプロデュースする」(14:45~15:48)
宮城大学事業構想学部 藤原正樹氏
(5) ITサポート情報(15:48~16:15)
司会:特定非営利活動法人日本NPOセンター 吉田建治氏
報告:特定非営利活動法人杜の伝言板ゆるる 荘司紗敏・小林しのぶ
(6) 閉会(16:15~16:20)

●内 容

(1) 開会・主催者挨拶
 IT支援をしているNPOとネットワークを組み、NPOのIT化を促進したい。IT支援者の相互研鑽、レベルアップを目的に宮城県に提案し「ICTスクールみやぎ」を事業化。現在、12名のICTマスターが誕生している。
(2) NPO Dayの経緯と社会貢献活動について
マイクロソフト社では、NPOに対して助成金とリソースを提供する「マイクロソフトNPO協働プログラム」、NPOスタッフのITスキルアップによりNPO活動にIT導入を図る「NPO の人材育成(=NPO Day)」、中古PCやソフトウェアを寄贈する「「IT基盤の強化(インフラ整備)」といった社会貢献プログラムを実施している。寄贈プログラムでは、日本NPOセンターと共同実施しているソフトウェア寄贈プログラム(テックスープジャパン)、中古PC寄贈プログラムを行っている団体へのOS(Windows)やOfficeの提供などを実施している。
NPO Dayは2006年度から開始。NPOへのIT化促進の啓発から始まり、現在ではNPO中間支援組織、自治体とも連携し実践的な人材育成に至るところまで発展してきている。2009年はNPO Day としての取組を1年間休止していたが、今年復活。IT支援者をメイン対象として、NPOのIT支援体制をどのように実現化していけるか焦点を絞って展開していく。この会場でも、IT支援者と共に各地域の支援体制をどのように作っていけるのかを考える場にしたい。
(3) 事例報告「NPOのIT化を支援してきて」
ITを活用することで、NPOの活動や事業をパワーアップさせる手助けをしたいという想いから「ITげんき講座」という名前で1999年から取り組んでいる。職員2名、講座は有料で実施しており、各団体の実情に合わせられるよう個別対応を行っている。IT支援の他、あおもりNPOセンターのサポート事業として継続した相談対応をしている。ロービジョンの方へのIT支援にも取り組み、点字読解が難しい中途弱視の方のためハイコントラストな画面設定や音声読み上げブラウザを導入している。
【課題1】「人材育成」:ワード、エクセル、パワポなど単体アプリケーションの講習だけではなく、それらのソフトを使って、組織運営にどのように役立てるかの道順を示すことのできる、IT活用スキルを持った人材が必要である。
【課題2】「手持ちPCのパワーアップ」:現在のXP環境をWindows7に移行したい。講習時、受講者が最新の機械を持っていることが多く、初心者は少しでも画面が違うと戸惑うことが理由。
【課題3】「中間支援組織として伝える努力」:全国のIT活用に役立つ様々な情報提供をしたい。Windows Liveなど、データを管理共有しやすいクラウドに注目している。簡単にアクセスでき、セキュリティも万全であることが重要である。
NPOに適したクラウドの模索と普及は今後のテーマとなる。マイクロソフトとNPO支援センターが協働し、NPO向けのソリューションを作りたい。
【質 問】
1:クラウドについて、アカウントと共有されているデータの管理方法を教えてほしい。
→情報漏洩は一番が人的原因である。情報の公開可否をルール化し、セキュリティポリシーを作ることが重要。個人情報はPCに残さず金庫に入れるなど。
2:会計支援の担当者は誰か?
→事務局の2名で担当し、会計担当者を支援。会計を理解していないと会計ソフト導入支援ができない。クラウドについても、支援の前に自分たちが取り組み、NPOがどのように利用できるかを検証した上で支援している。
3:ITげんき講座のニーズは何か?
→ホームページと会計で3対7の割合。パワーポイントは年1回程度。Word、Excel基礎の相談はほとんどないため、単体アプリ支援から組織運営におけるIT支援へシフトしている。
4:コスト回収はどのようにしているか?
→講座は必ず有料で、八戸は1時間1,000円、青森は1コマ2,000円で実施している。教える側の責任感や参加者のモチベーションにも影響している。
5:料金の根拠は何か?
→個人支援ではなく組織支援であることが前提であり、最低限の価格設定で1時間2,000円としている。学習塾等も参考にした。
(4) 講演「IT化をプロデュースする」
企業の情報化が専門で、中小企業診断士としてITを活用した中小企業の経営革新をテーマにしてきた。中小企業も限られたリソースの中でITを使って効率化し、新たな事業を展開している。その経験から、NPOのIT支援者のスタンスやサポートのあり方について考えたい。
スタッフ個々のIT活用力を高めるという入り口ではなく、組織としてのIT活用力を高めるために、何が必要かというその先を考えることが必要である。組織で一番ITをわかっている人ではなく、組織の仕事を一番わかっている人にこそIT活用を考えてほしい。組織運営をするためにITをどう使うかという視点を持つこと。IT化しやすいところではなく、取捨選択をし、効果の出る、役に立つところからIT化することが大事である。
ITコーディネーターは、組織経営とITの橋渡しをする役割である。組織の価値を高めるために何が必要か、目的にそったIT活用をすることがポイントである。組織の分権化度に加えたITへの投資、組織の見直しを継続的にしているかどうかも重要となってくる。
IT化の効果が上がっている企業は同時にマネジメントや事業モデルの改革も行っている。組織経営と情報技術の両方に詳しい、ITコーディネーターの存在が必要と考え、ITコーディネーター協会を設立した。企業で言えば、企業とベンダーの間で橋渡しをする役割である。IT化による効率化の気づきの支援から、IT投資の支援、継続的なIT経営の支援まで行っている。
【IT導入の前に】
1.何のためにITを活用するのか。組織の目的とIT導入目的は同じはずである。
2.導入が容易なところからではなく、最も効果が出るところにITを活用する。目的を明確化する。
3.目的を定めたら、最も適した技術を使う。ITの技術は日々進化し選択肢は拡大しているが、最新を使う必要はなく、最適なものを使う。
【IT導入の流れ】
目的・課題の確認→強化ポイントの絞り込み→行動計画、それに対応したIT活用計画→ITの調達・導入→効果・成果の評価、フィードバック。
【質問】
1:IT化プロデュースがうまくいっている業界はあるか?
→京都の帯を扱う伝統産業で成功例がある。トレーサビリティ(履歴管理)を使い、付加価値を効果的に取り入れ、最終消費者に届けている。
2:最初は活発でも次第に消滅してしまうSNSを上手に利用し続けるにはどうしたらよいか?
→リアルな場との組合せが必要で、バーチャルだけでは難しい。核になる人物がいることも重要。
3:クラウドコンピューティングの環境、現状、見込みについて。
→世界的なクラウド、データーセンターはマイクロソフト、グーグル、アマゾン等5台あれば十分とも言われている。現在データーセンターで有料及び無料のサービスを提供している。
(5) ITサポート情報
【Office2010】バージョンアップし、様々な機能が向上した。Power PointでのPhotoshop並みの画像編集機能や、動画挿入機能など、これまで専門的なソフトがなければ出来なかったことも可能である。団体のCM制作も容易となり、助成金等のプレゼンの際、現場の写真や動画を入れることでNPOの活動をより効果的に訴えることができる。
【Windows Live】WEB上での情報共有や、Office製品が入っていなくても直接編集が可能、ソフトを起動しなくてもブラウザソフトのみで文字追加等の編集が可能など、機能が拡大された。NPOにとっては、活動写真を共有してWEBでの活動報告更新やチラシ作成等へ活用したり、直接修正ができることから共有した報告書を確認し直接編集で追記できるなどが役立つ。
NPO会計のIT化など、組織運営をする為にITをどう使うかが重要である。個人のスキルアップから、組織のスキルアップが必要だが、中小企業診断士のようなバランスをとれた視点を持つのはなかなか難しい。中間支援組織である杜の伝言板ゆるるがコーディネートしてバランスをとっていくネットワークに期待している。

記録提供:菅原牧恵さん(杜の伝言板ゆるる)