
日本NPOセンターが事務局を務めるNPO広報力向上委員会と電通が協力し、広報・コミュニケーションの考え方を学ぶ2024年度「伝えるコツ」事業が終了しました。今年度は地域セミナーを5年ぶりに開催し、プロジェクト開始から20年を迎えた記念フォーラムも行いました。
宮城県と福岡県で地域セミナー開催
2024年11月13日(水)には宮城県気仙沼市で気仙沼まちづくり支援センター、おおふなと市民活動センター、陸前高田まちづくり協働センターとともにセミナーを開催しました。講師は電通の魚返洋平さん、高橋慶生さん、大澤希美恵さんが務め、「伝えるためのステートメントづくり」をテーマに講義とワークを行いました。
12月6日(金)には福岡県福岡市でふくおかNPOセンターと協働して開催。講師は電通の鈴木契さん、三上和輝さん、高橋慶生さんが務め、「根っこから考えて伝わる言葉を見つけよう!」をテーマに講義とワークを行いました。
両会場合計27人のNPO/市民活動の担い手が集まり、これまでの開催回数は全国155回、参加人数は延べ5,809人となりました。
20周年記念フォーラムを電通本社ビルで開催
記念フォーラムは2025年2月19日(水)に電通本社ビルで開催。NPOを取り巻く環境が大きく変化していること、企業も本業を通じて社会課題に取り組むようになっていることを受け、今後の広報・コミュニケーションのあり方を展望するために企画しました。
会場には当初定員を大幅に超える132人が集まり、元電通執行役員で「伝えるコツ」創設メンバーの一人である白土謙二さんによる基調講演とNPO広報力向上委員会メンバーを中心としたディスカッションが行われました。
基調講演:① NPOの広報活動の変化
まず白土さんは、企業との関係性が「対立」から「協力」へと変化し、例えば企業がNPOのスキルも活用して社会や環境の問題に取り組むことが増えて、近年は課題解決のためにNPOではなく企業を立ち上げる若者も増えていることについてお話をされました。
また、NPOの広報はSNSの活用などでデザインや表現が洗練される一方、内容が類似的になる「中央値化」を懸念点として指摘。白土さんは、今後さらに生成AIの活用が進む中で、今一度、原点に立ち返った活動の独自性を保つことの大切さを強調しました。
基調講演:② 企業活動の変化と「サステナビリティ」
続いて、企業は社会や環境の問題に配慮するようになり、その背景としてトリプルボトムラインやESG経営への関心が高まったことを紹介。具体的な企業の事例を踏まえながら、企業活動の変化に関する分析と考察が語られました。
さらに、統合報告書やサステナビリティレポートの重要性が増す一方、世界的に深刻で困難な課題に取り組んでいれば自ずと起こるであろう「失敗例」が書けない・書かれていない点を白土さんは指摘しました。また、SDGsの本質について、アジェンダ冒頭の「Transforming our world(我々の世界を変革する)」、社会変革への覚悟を理解することが重要だと参加者へ語りかけました。
基調講演:③ これからのNPOに期待されること
そして、NPOの活動における「想像力」について触れ、課題の本質を想像し理解するためには強い「動機」を持つ、持ってもらうことの重要性を参加者へ伝えました。白土さんはその課題の本質を企業や社会に積極的に伝えることが、これからのNPOに大きく期待される役割の一つであることを挙げました。
NPOと企業のコミュニケーションと多様な連携に向けて
基調講演に続き、白土さんに加えて電通コーポレートワン コンプライアンスオフィス 人権啓発部長の安藤勉さん、ワールド・ビジョン・ジャパン理事・事務局長の木内真理子さん、ひょうごコミュニティ財団 代表理事の実吉威さんが登壇し、ディスカッションを展開。フォーラムの最後には、NPO広報力向上委員会メンバーである電通の鈴木契さん、わくわく共創オフィス代表で元日本経済団体連合会の長澤恵美子さん、日本NPOセンター事務局長の吉田建治が登壇しNPOの広報・コミュニケーションのこれからについて考えました。
ディスカッションでは、コミュニケーションに加えて実際に参加し体験するコミュニティ形成の必要性や、瞬間的な反応を作るだけでなく課題の本質に通じる道のりとその入口をどう作るか、など活発な議論が展開され、NPO/企業のコミュニケーションと多様な連携に向けた可能性を模索する機会となりました。
次年度も引き続き「伝えるコツ」セミナーを実施予定です。ぜひご参加ならびに引き続き何卒ご支援・ご協力のほどよろしくお願いいたします。