助成先一覧 | 選考総評 |
助成概要と選考理由 | 選考結果のご報告(各ページのPDF版)
東日本大震災現地NPO応援基金[特定助成] 「東日本大震災復興支援 JT NPO応援プロジェクト」 の第12回選考を行い、下記の通り決定いたしました。
助成先一覧
No. | プロジェクト名/団体名 | 所在地 | 助成額 (単位:万円) |
---|---|---|---|
12-1 | 滝沢市内在住の内陸避難者を対象とした交流活動及び生活支援相談実施事業 特定非営利活動法人 いなほ |
岩手県 滝沢市 |
351 |
12-2 | 「米崎りんご」を通した若者の育成と後継者育成の為のコミュニティ形成事業 一般社団法人 SAVE TAKATA |
岩手県 陸前高田市 |
482 |
12-3 | 気仙沼大島における、地域住民との協働による教育コミュニティの構築活動 ACTION-students’ project for 3.11- |
宮城県 気仙沼市 |
330 |
12-4 | 福島県富岡町の暮らしの記憶を次世代へ継承する事業 特定非営利活動法人 とみおか子ども未来ネットワーク |
東京都 八王子市 |
397 |
12(継)-1 | 被災地の人的資源と連携した自立的長期メンタルヘルス支援サービスの構築 認定特定非営利活動法人 心の架け橋いわて |
岩手県 大槌町 |
371 |
12(継)-2 | いいたてミュージアム-までいの未来へ記憶と物語プロジェクト-2016 いいたてまでいの会 |
福島県 飯舘村、福島市他 |
300 |
助成件数:6件(新規4件、継続2件) 助成総額:2,231万円(新規1,560万円、継続671万円)
*第12回助成は2016年4月1日から4月15日までの応募について4,5,6月に選考し助成が決定した。
*助成期間は2016年7月1日から2017年6月30日までの1年間。
*心の架け橋いわて、いいたてまでいの会は第8回助成対象団体で、何れも継続して助成することとなった。
選考総評
選考委員長 大橋正明
[JT NPO応援プロジェクト概要]
東日本大震災復興支援 JT NPO応援プロジェクトは、特定非営利活動法人日本NPOセンターが2011年3月から行っている、東日本大震災現地NPO応援基金に対して、日本たばこ産業株式会社から寄付を受け、2013年8月から実施している助成プログラムである。3年間で計11回の助成を行い、66のプロジェクトに計2億6千万円を超える助成を行ってきた。
[応募状況]
第12回助成は、2016年3月より公募を開始し、2016年4月1日~4月15日に応募を受け付けた。新規助成への応募は48件、応募事業の活動地域は宮城県が最も多く、全体の約5割を占め、次いで福島県が3割、岩手県が2割であった。また、継続助成への応募は、継続2年目が3件、継続3年目が1件、計4件であった。
[選考プロセス]
新規助成の選考は、これまでと同様、まず事務局による予備審査を行い、助成の趣旨や団体要件への適合性、選考基準にもとづいて、本審査の対象として相応しいと判断した21件を選出した。本審査では5名の選考委員が21件の応募書類を読み込み、各委員が選考基準にもとづいて総合的に評価が高いと判断した5件を推薦し、これを選考委員会に持ち寄り、活発に議論を交わし、助成候補6件を選出した。その後、事務局スタッフが6件を現地訪問し、活動の状況や選考委員会で挙げられた点について詳細なヒアリングを行った。なお、1件はヒアリング時に応募の取り下げがあった。選考委員長は5件のヒアリングの結果を加味して助成対象と金額を検討し、最終的に助成対象4件、助成総額1,560万円を決定した。
継続助成の選考は、これまでの取り組みと今回の応募プロジェクトの企画内容について、各選考委員が選考基準にもとづいて評価を行ったうえで、選考委員会で助成候補3件を選出した。その後、事務局スタッフが現地ヒアリングを行い、選考委員長の決裁を経て、助成対象2件、助成総額671万円を決定した。
新規助成と継続助成を合わせた助成件数は6件、助成総額は2,231万円となった。
[応募内容の全体的な特徴と選考のポイント]
今回の応募内容から窺える全体的な特徴として以下の3点が挙げられる。
(1)被災者が抱える課題と支援の状況は、被災から5年間が経過し一層変化している
(2)多様化したニーズや支援状況を反映して、応募内容はこれまで以上に幅広い
(3)被災者に限定したコミュニティづくりを主眼とした取り組みはかなり少ない
今回の審議では、被災した地域の人々がイニシアチブを発揮しているプロジェクトが全体的に評価された。これは、今回の助成が本プログラムの3年間の最後の審査であることを踏まえ、今後の復興支援活動と団体の継続性が意識されたからである。
本プログラムのテーマである「コミュニティの再生」の視点で審議を振り返ると、一般的に挙げられる仮設住宅あるいは復興公営住宅における住民のコミュニティ形成だけではなく、それぞれの地域の特性や状況をとらえた多様なコミュニティづくりを期待した選考だったと言える。最終的に助成対象となったプロジェクトの内容も、内陸避難者を支えるためのコミュニティづくり、住民が若者・子どもを育てるコミュニティづくり、原発事故による避難者を結ぶコミュニティづくり、住民が専門家と協力して支援を必要とする人々を支えるコミュニティづくりと様々であった。
一方で、選考基準に挙げている参加性や連携性の視点から、単発のイベント開催を軸とするプロジェクトや、他の団体や行政と協力関係がつくれていないプロジェクトは、評価を下げた。これらのプロジェクト自体の意義や生み出されるだろうインパクトは一定の評価ができるが、コミュニティづくりに必要な定常的なインパクトが期待できないという評価であった。
また、応募プロジェクトの継続性や今後の展望は、地域性(被害の大きさ、地域の特徴、自治体の力量、他のNPO等の活動状況など)に左右される部分が大きく、前回と同様に多くの団体が模索段階にあった。プロジェクトの内容によっては短期的な結果を求めず、中長期的に成果を出していくことの必要性が確認された。
2011年3月の大震災から5年が経過するだけではなく、被災地の人々の多様な期待や希望に応えてきた民間非営利組織がより安定的に活動が行えるよう、支援・応援することを目的とした本プログラムも、当初計画の3年間の最後の助成審査となった。助成を受けた団体がプロジェクトをしっかり行うことはもちろん、助成終了後からの中長期間の状況をよく見据え、被災者と復興のためにNPOならではの取り組みを、持続可能な形で取り組み続けることを切に願うものである。
【選考委員】
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助成概要と選考理由
【新規助成】
テーマ | 滝沢市内在住の内陸避難者を対象とした交流活動及び生活支援相談実施事業 |
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団体名 | 特定非営利活動法人 いなほ |
代表者 | 代表理事 兼 事務局長 佐藤 昌幸 |
助成額 | 351万円 |
選考理由 | いなほは、岩手県の内陸部に位置する滝沢市で、沿岸部からの避難者への支援活動を行ってきた団体である。 5年にわたる避難生活で、避難者に高齢化や心身状態の低下が見られ、細やかな対応が求められているが、行政や社会福祉協議会による個別支援体制は十分ではなく、本団体によるサロン活動がこれを補完している。また、避難者が立ち上げた自助グループと本団体は連携し、沿岸部からの避難者と滝沢市内の住民とをつなぐ役割を果たしている。 本プロジェクトでは、既存のサロン活動に加え、健康状態の悪化からサロンなどへの参加が難しくなった避難者への関わりを強化し、孤立化を防ぐとともに、必要に応じて種々の支援サービスにつなぐための戸別訪問活動を新たに計画している。また、避難者が制作した手工芸品の展示会を開催し、避難者のやる気を引き出そうという試みも計画している。 本プロジェクトは復興のフェーズに応じて活動内容を変化させていく柔軟な視点を有していると評価した。息の長い生活支援活動となるよう期待したい。 |
テーマ | 「米崎りんご」を通した若者の育成と後継者育成の為のコミュニティ形成事業 |
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団体名 | 一般社団法人 SAVE TAKATA |
代表者 | 代表理事 佐々木 信秋 |
助成額 | 482万円 |
選考理由 | SAVE TAKATAは、東日本大震災直後の2011年3月に、津波で壊滅的な被害を受けた岩手県陸前高田市の復興と発展に寄与するために設立され、震災前からの地域課題でもあった超高齢化や若者の減少、産業の衰退などに対して様々な活動を展開し、もはや地元になくてはならないNPOの代表格として認識されるまでに至っている。 本プロジェクトは、後継者不足に悩む地元の農家と首都圏を含む地域内外の若年無業者をつなぎ、地元の特産品である「米崎りんご」を復興途上にある陸前高田市の産業として発展させようとするものである。また、地元のりんご農家はもちろんのこと、市の農林課、市社協の他、若者の就労支援に取り組むNPOなど、様々なセクターの協力を得て実施する。 一団体の願いを超えて、協働で取り組む姿勢を評価した。行政による大型復興プロジェクトが佳境を迎える中、このような民間発の取り組みが、今後の真の復興の下支えとなるよう期待したい。 |
テーマ | 気仙沼大島における、地域住民との協働による教育コミュニティの構築活動 |
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団体名 | ACTION-students’ project for 3.11- |
代表者 | 代表 神田 大樹 |
助成額 | 330万円 |
選考理由 | Action -students projects for 3.11-は、関西の学生たちが、大きな津波被害を受けた宮城県気仙沼市の離島・大島に定期的に通い、大島の子どもたちが島の仕事、暮らし、文化を学び、壁新聞を作成するワークショップを通じて、地域の魅力を発見し、地域に誇りと愛着をもつための活動を5年間にわたり行ってきた。 本プロジェクトは、大島の小・中・高校生を対象にした学習サポート活動と、住民が「島の先生」となって子どもたちに生活の技や島への想いを伝えるワークショップ活動を通じて、島に新しい教育コミュニティをつくろうとするものである。 島外の大学生主体の活動から、島民と協働したより地域に根差した活動へと展開し、2年後には島と本土を結ぶ橋が架けられることから、島の在り方も見据えた長期的なコミュニティづくりや、島の次代を担う子どもたちの育成へとつながるよう期待したい。 |
テーマ | 福島県富岡町の暮らしの記憶を次世代へ継承する事業 |
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団体名 | 特定非営利活動法人 とみおか子ども未来ネットワーク |
代表者 | 理事長 市村 高志 |
助成額 | 397万円 |
選考理由 | 福島県富岡町は、東日本大震災に伴う東京電力福島第一原子力発電所の事故により、現在も避難地域となっており、町民は全国各地で避難生活を余儀なくされている。 とみおか子ども未来ネットワークは、こうした長きにわたる離散で段々薄れゆく「ふるさと富岡」の記憶を、高齢者が話し手となり、若者が聞き手となって記録し、町のアイデンティティを残し、継承していく活動を続けている。 本プロジェクトは、震災前に約1,400人いた若者に呼び掛け、丁寧な研修を実施した上で、高齢者にインタビューを行い、原稿を作成し、発表会を開催しようとするものである。 民間ならではの発想に基づくものであり、震災の風化が叫ばれている中、地道でも着実に達成しようとする真摯な姿勢を評価した。事実上ふるさとを奪われ、無念さや絶望感を抱いている方々に、本プロジェクトが未来への大きな希望の懸け橋となるよう期待したい。 。 |
テーマ | 被災地の人的資源と連携した自立的長期メンタルヘルス支援サービスの構築 |
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団体名 | 認定特定非営利活動法人 心の架け橋いわて |
代表者 | 理事長 鈴木 満 |
助成額 | 371万円 |
選考理由 | 岩手県大槌町は、自発的な通院が困難な統合失調症や認知症を抱えた人、長期未治療事例や震災による病態の悪化など、精神医療の過疎地ならではの課題がある。 本プロジェクトは、心の架け橋いわてが、多職種のメンタルヘルスの専門家によるチームを組み、サロンでの相談活動と被災者宅への継続的な訪問活動に取り組むもので、2年目の助成となる。 本団体は、行政や社会福祉協議会からの依頼が増加しており、これらと連携して被災者宅への同行訪問を行うなど、プロジェクトの実効性は高い。また、新規事業として、団体の拠点を活用してコミュニティカフェを整備し、住民参加型のサロン運営を計画している。 助成終了後の展望として、県外の支援者の協力を得た活動から、段階的に支援活動の担い手を岩手県在住の支援者に移行する構想があり、既にインターンシップを導入するなど地域の人材育成にも着実に取り組んでいることから、今後の展開に期待し、助成を決定した。 |
テーマ | いいたてミュージアム-までいの未来へ記憶と物語プロジェクト-2016 |
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団体名 | いいたてまでいの会 |
代表者 | 共同代表・幹事長 佐藤 彌右衛門 |
助成額 | 300万円 |
選考理由 | 福島県飯舘村は原発事故により全村避難となり、いいたてまでいの会は、失われつつある飯館村の生活と文化を、村民が所有する「モノ」によって語るプロジェクトに取り組んでいる団体である。 2年間の助成によって、村民ひとり一人に丁寧なインタビューを行い、「モノ」が語れるように記録することで、飯舘村独自の「物語」を紡いできた。また、図録や冊子の制作、県内・県外での巡回展や展覧会を通じて、村民や福島県民のみならず、広く飯館村のことを知ってもらうための活動に取り組んできたことを評価した。 3年目の助成となる本プロジェクトは、巡回展などによる情報発信を継続するとともに、飯舘村の中学生を取材対象に加えることで、若年層の村への誇りを醸成する。 本プロジェクトが、飯舘村の帰村が実現した後も、将来にわたり、村民間の心のつながりや絆づくりのきっかけとなるよう期待したい。 |