東日本大震災現地NPO応援基金[特定助成]大和証券フェニックスジャパン・プログラムでは、資金支援のほか、新規助成対象団体を主な対象に事務局主催の合同研修会を助成期間中に2回実施しています。
2016年助成がスタートして間もない10月7日に、仙台で第1回の研修会を実施し、助成対象の7団体、選考委員、そしてドナーである大和証券グループ担当者等、26名が参加しました。
本プログラムは、大和証券株式会社からの寄付により、東日本大震災の被災地の現地NPOの組織基盤を強化するために、NPOが実施する「人材育成」の取り組みを応援するものです。
今回の合同研修会では、NPOにおける人材育成についての基本的な考え方を理解すること、育成責任者(スーパーバイザー/SV)と、育成対象スタッフが、それぞれの育成計画を認識すること、そして他の助成対象団体との関係づくりを目的として実施しました。
半日かけて、組織基盤に関するレクチャー、団体ごとの育成計画の発表、グループワークによる研修を行いました。
1.レクチャー(1)
市民社会創造ファンド運営委員長 山岡義典さん
はじめに、市民社会創造ファンド運営委員長の山岡さんより、「NPOとは何か―その組織基盤と人材育成―」というテーマで、NPOにおける人材育成の要点についてレクチャーが行われました。
被災地域で震災後立ち上がったNPOは、組織づくりが一気に進んだことで基盤が未成熟なことが多く、そのような組織を支えるのがこの助成プログラムであるとお伝えしました。さらに、組織基盤強化における人材育成については、個人の「人材育成」だけにとどまらず人間「関係強化」であることなど、NPOという組織のあり方を踏まえた、人材育成の考え方をお話しいただきました。
2.レクチャー(2)
選考委員長/東洋大学社会学部社会福祉学科
須田木綿子さん
続いて、選考委員長の須田さんから、「サーバントリーダシップ」というリーダー論を軸にレクチャーをいただきました。
初めに、周囲からは変わり者と言われがちなリーダーが、そこに共感するフォロワーを獲得し、大きなムーブメントを生み出していく、という映像を見ました。そのあと、サーバントリーダーの特徴についてや、また、そもそもフォロワーこそがリーダーを育てる、といったリーダーシップそのものを現象と捉えたお話をいただきました。
3.参加7団体による育成計画の発表
下記の各団体の育成対象スタッフから、新規の助成対象団体は5分程度、継続の助成対象団体は10分程度で、団体や活動の紹介、今回の育成計画で団体が目指していることなどを発表いただきました。
まずは、助成対象団体どうしが知り合うとともに、このプレゼンテーションを育成対象スタッフに組み立てていただき、発表することも研修の一環としています。
(助成対象団体)
<新規助成> 3団体
●一般社団法人 SAVE IWATE (岩手県 盛岡市)
計画名:和グルミからの経済復興を担う中核人材の育成
●特定非営利活動法人 故郷まちづくりナイン・タウン (宮城県 登米市)
計画名:中核スタッフの総合力強化による事業充実と組織強化プロジェクト
●認定特定非営利活動法人 いわき自立生活センター (福島県 いわき市)
計画名:被災地の障がい者・難病者支援力強化
<継続助成> 4団体
● 一般社団法人 おらが大槌夢広場 (岩手県 大槌町)
計画名:共育プログラムの発展と継続のための基盤づくりとその担い手となる若手スタッフの育成(2)
● 特定非営利活動法人 愛ネット高田 (岩手県 陸前高田市)
計画名:被災地の障がい者、要介護高齢者等の持続的生活支援のための運営管理者育成(2)
● 特定非営利活動法人 ポラリス (宮城県 山元町)
計画名:被災地で暮らす障害者の素敵な生きかた・はたらき方を支援する人材育成(2)
● 特定非営利活動法人 みんなのひろば (福島県 伊達市)
計画名:線量が高い地域における発達障がい児サポートの支援力向上のためのスタッフ育成(2)
4.グループワーク
続いて、スーパーバイザーと育成対象スタッフで、2部屋に分かれてグループワークを行いました。
<スーパーバイザー・グループ>
スーパーバイザーの部屋では、スーパーバイザー7名と選考委員2名が集まり、スタッフ育成のスタートにあたり意見交換を行いました。
今後の育成期間におけるスーパーバイザーの役割や立ち位置、どのようなスタッフを育てたいか、またどのようにフォローしていけばよいのかなどについて、日本NPOセンターの田尻がファシリテーターをつとめ、意見交換が行われました。
また、継続助成の団体からは、先輩としての昨年の経験共有や、選考委員からは前半のレクチャーや経験を踏まえたアドバイスをいただくなど、今後1年間の取り組みの良いスタートとなりました。
<育成対象スタッフ・グループ>
育成対象スタッフの部屋では、1年間の育成プロジェクトの開始にあたって、各自の育成計画をもとに、改めて目的と目標の整理に取り組みました。日本NPOセンター事務局の山本がファシリテーターを務めました。
まず、育成対象スタッフによる個人ワークを行いました。ワークシートを使って、自分たちの育成目標を書き出し、その後、複数ある目標の中で優先順位をつけていきました。最後に、最も優先度が高い目標について、なぜそれを1番に選んだのかを発表しました。
このワークの意図としては、育成対象スタッフ自らが、育成計画の目標や自分なりの成長目標を意識していただくことにあります。「共感を得るためにも自分らしさを出したい」、「会計の知識など学んだことを実務で実践して定着させたい」など、それぞれ最優先とする内容は異なりますが、最初の一歩として何をするのかを明確にし、次のアクションにつなげていくことの重要性を確認しました。
5.共有とまとめ
ワークの後、再度全員で集合し、育成対象スタッフからスーパーバイザーに対して、目標設定のワークの結果を団体ごとに共有しました。
最後に、参加いただいた選考委員の皆さんから一言ずつコメントをいただきました。足りないものばかりに注力せず、今ある資源を生かすこと、外部要因に流されそうになるときは団体本来のミッションに立ち戻ることなど、これからの団体の活動に対するアドバイスやエールを頂きました。
6.さいごに
この助成プログラムでは、東日本大震災の被災地の現地NPOの組織基盤強化のために、組織の中核となるスタッフの育成事業を応援しています。
冒頭のレクチャーにもあったとおり、震災後に組織が立ち上がった、或いはこれまでの組織からは激変した、という団体においては、組織や事業が出来上がるのも早ければ、本来NPOが歩む組織づくりのプロセスも通常より早い速度で歩んできたのかもしれません。また、周囲の状況も年々大きく変化していきます。そのような、内部も外部も変化が多い状況で、NPOの組織の中核を担うスタッフを育成する、という本助成プログラムでの取り組みが、団体への力強い応援になることと思います。
また、今回の研修では、変化の折にはミッションを見直す必要がある、という選考委員のコメントがありましたが、同時に組織内部の関係性を見直していくことも大変重要です。この助成プログラムでは、育成レポートや合同研修などを通して、スーパーバイザーと育成対象スタッフが向き合うためのツールや場を設けています。育成するというと、どうしてもスタッフの成長ばかりに目がいきがちですが、スーパーバイザーとの関係構築も含めて育成である、ということを意識しながら、事務局でもこれから1年間、団体をフォローしていきたいと思います。
(記録作成:市民社会創造ファンド 山田)