東日本大震災現地NPO応援基金[特定助成] 「JT NPO応援プロジェクト」第9回助成 選考結果について

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東日本大震災現地NPO応援基金[特定助成] 「東日本大震災復興支援 JT NPO応援プロジェクト」 の第9回選考を行い、下記の通り決定いたしました。

助成先一覧

No. プロジェクト名/団体名 所在地 助成額
(単位:万円)
9-1 石巻市の地元住民による小中学校サポート活動を通したコミュニティ形成事業
一般社団法人 プロジェクト結コンソーシアム
宮城県
石巻市
490
9-2 雄勝花物語 第5章「若者・お年寄り・女性の参加による故郷復興プロジェクト」
一般社団法人 雄勝花物語
宮城県
石巻市
428
9(継)-1 街角Café桜/フリースペースららポート
特定非営利活動法人 夢みの里
宮城県
石巻市
340
9(継)-2 被災による子どもの貧困救済及び貧困連鎖予防事業
特定非営利活動法人 キッズドア
東京都
中央区
399
9(継)-3 ふくしまの農業を現地で知り交流する「スタディファーム」
特定非営利活動法人 がんばろう福島、農業者等の会
福島県
二本松市
400

助成件数:5件(新規2件、継続3件) 助成総額:2,057万円(新規918万円、継続1,139万円)
*第9回助成は2015年7月15日までの応募について8,9月に選考し助成が決定したもの。
*助成期間は2015年10月1日から2016年9月30日までの1年間。
*夢みの里、キッズドア、がんばろう福島、農業者等の会は第5回助成対象団体で、何れも継続して助成することとなった。

選考総評

選考委員長 大橋正明

[JT NPO応援プロジェクト概要]
 「東日本大震災復興支援 JT NPO応援プロジェクト」は、認定NPO法人日本NPOセンターが2011年3月から行っている「東日本大震災現地NPO応援基金」に対して、日本たばこ産業株式会社から寄付を受け、「特定助成」として2013年8月から実施している助成プログラムである。2年間で8回助成を行い、47団体に1億9,000万円を超える助成を行ってきた(2015年9月末時点)。

[応募状況と選考プロセス]
 第9回助成(助成期間2015年10月1日~2016年9月30日)は、2015年6月より告知を開始、応募受付期間は2015年7月1日~7月15日であった。
 新規助成の応募件数は、40団体であった。応募事業の活動地域と団体の所在地は、いずれも宮城県が最も多く、次いで福島県、岩手県の順番であった。本助成プログラムに過去1年間で応募したことがある、つまり再チャレンジしたのは19団体で、全体の5割近くを占めた。また、前回同様、東日本大震災後に被災地で結成された団体は約6割を占めた。
 継続助成は、応募資格の対象となる9団体のうち7団体から応募があった。この内、継続2年目への応募が5団体、継続3年目への応募が2団体であった。

 新規助成の選考は、過去の選考と同様にまず事務局による予備審査で応募要件等に基づいて検討を行い、本審査の対象として15件を選出した。この15件について全ての選考委員が選考基準に基づいて事前に書面評価を行ったうえで、全員参加の選考委員会の場で活発に意見を交わし、助成にふさわしいと考えられる4団体を選出した。この選考委員会の終了後、事務局スタッフが4団体を訪問し、活動状況や選考委員会で挙げられた点について詳細なヒアリングを行った。この結果を選考委員長に報告して、最終的な決裁を行い、助成事業2件を決定した。助成額合計は918万円であった。

 継続助成の選考は、過去1年間の事業の成果と課題に関する報告内容と今回の応募内容について、新規助成と同様な審査を行い、選考委員会で継続助成にふさわしいと考えられる団体を3団体選出した。その後新規助成と同様に事務局スタッフによるヒアリングを実施、選考委員長の決裁を経て、助成事業3件を決定した。助成額合計は1,139万円であった。

 新規助成と継続助成をあわせて、助成件数は5件で助成金額は2,057万円となった。

[選考における議論のポイント]
 新規助成では、応募要項に記載している5つ選考基準*1をベースに審議を行った。また、継続助成では、以下の選考基準に加えて、前年度の事業の目標達成状況なども踏まえて審議を実施している。

*1≪JT NPO応援プロジェクト選考基準≫

地域性:活動する地域のニーズを把握、事業の内容がそれらに基づいて組み立てられているか
参加性:地域の人々や外部からのボランティア等の参加が期待できるか
連携性:地域の他の団体、企業、自治体等と協力して事業が実施されるか
実現性:目標設定、目標に対する計画、予算等が適切で実現性が高いか
継続性:参加する人々の主体性を育て、活動する地域への長期的な貢献を行なえるか

 なお継続助成については、上記の選考基準に加えて、1年目事業の活動実績や目標達成状況なども評価した。上記の選考基準に加えて新規助成、継続助成の審議においてポイントであったのは次の2点である。

 新規助成は、「事業の目標と実施内容の一致」がポイントであった。事業を通して目指す地域の在り方や対象者の姿が、実施内容によって実現できる可能性があると感じられる事業は概ね高く評価された。
継続助成は、「1年目・2年目の助成事業の実績に対する自己評価」がポイントであった。1年目・2年目の助成事業の実績について、「事業として立てた目標がどこまで達成できているか」、「そもそも目標設定に瑕疵はなかったか」、「事業の対象者の評価や声はどんなものか」などを明示し、これらに基づいて継続助成の実施計画を組み立て、事業の継続性や発展性に期待できる取り組みは概ね高く評価された。

 本プロジェクトは今回で3年目を迎えた。プログラム開始当初から懸念されていた東日本大震災に対する民間団体からの助成金等の支援や国・自治体の支援の減少は、残念ながら確実に進んでいる。加えて、仮設住宅から公営住宅への移行など住民を取り巻く環境の変化や震災前からの地域課題の深刻化も、あちらこちらで見受けられる。これらを踏まえて震災当初から支援を続ける団体、新たな活動を立ち上げる団体、それぞれの団体が転換期を迎えていると感じる。この助成プログラムが、これからの東北のコミュニティ再生(あるいは再々生)という挑戦に取り組む団体の持続的な活動への足掛かりとなることを祈念している。

【選考委員】
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助成概要と選考理由

【新規助成】

テーマ 石巻市の地元住民による小中学校サポート活動を通したコミュニティ形成事業
団体名 一般社団法人 プロジェクト結コンソーシアム
代表者 理事長 長尾 彰
助成額 490万円
選考理由  東日本大震災により地域コミュニティが分断され、仮設住宅での暮らしの長期化により学校教育への影響が生じている。プロジェクト結コンソーシアムは、石巻市内の56の小中学校の先生たちをサポートするため、地域内外のボランティアの協力を得ながら、通学路での見守り活動や図書の整理、プールの清掃などの学校のサポート活動を実施してきた。
 助成事業では、学校を地域コミュニティの活動の拠点とし、地域主体の活動に移行させるため、地域住民の参加とネットワーク形成に取り組む。復興への道のりがまだ遠い被災地において、学校を拠点にコミュニティの復興をめざす取り組みが県内、県外にも広がるよう期待したい。
テーマ 雄勝花物語 第5章「若者・お年寄り・女性の参加による故郷復興プロジェクト」
団体名 一般社団法人 雄勝花物語
代表者 代表理事 徳水 利枝
助成額 428万円
選考理由  雄勝花物語は、東日本大震災による津波で壊滅的な被害に遭った石巻市雄勝町に「雄勝ローズファクトリーガーデン」を設立し、ここを拠点に地元の女性や若者らを中心に植栽活動や無料コンサート等の復興支援活動を行い、2012年から延べ50団体3,000人以上のボランティアを受け入れてきた。また、小学校から大学、企業の社員を対象とした防災と復興をテーマとした教育支援活動にも取り組んできた。
 助成事業では、被災地での緑化支援活動と教育支援活動を継続し、これに加えてハーブ、ラベンダー、果樹の栽培と商品開発に取り組む。本事業を通じて、地域住民や他地域の市民との交流が広がり、より持続的な取り組みへと発展するよう期待したい。

【継続助成】

テーマ 街角Café桜/フリースペースららポート
団体名 特定非営利活動法人 夢みの里
代表者 理事長 菅原 桂子
助成額 340万円
選考理由  夢みの里は、障害の有無に関わらずあらゆる人が暮らしやすい環境づくりと子育て支援に取り組み、石巻市内で障害児の放課後ディサービス等を実施している。
 1年目の助成事業では、東日本大震災の影響により失われた地域の活気を取り戻し、障害児を持つ母親の就労機会を創出するため、「街角Café桜」を開設した。
 2年目の助成事業では、「街角Café桜」がより地元住民に必要とされる場所となるよう、人気の高い洋食メニューの充実やスタッフの特技を活かしたスイーツの開発、フリースペースを活用したパソコン教室やカラオケ教室の開催などに取り組む。
本事業が地元住民によって支えられ、障害児を持つ親たちが地域に居場所と役割を見つけ、地域が活性化されるよう期待したい。
テーマ 被災による子どもの貧困救済及び貧困連鎖予防事業
団体名 特定非営利活動法人 キッズドア
代表者 理事長 渡辺 由美子
助成額 399万円
選考理由  キッズドアは、子どもの貧困や教育格差を解決するため、生活困窮世帯等の子どもを対象に東京都内で学習支援活動を行っていたが、震災後は仙台市にも拠点を置き、宮城県や福島県の子どもたちへの学習支援活動も行ってきた。
 1年目の助成事業では、経済的に厳しい家庭環境にある仙台市内の中高生延べ1,200人を対象に、学習支援活動や補食付き自習室の運営、キャリア教育や大学見学ツアーを実施すると共に、保護者を対象に教育資金準備セミナーや家計相談会を開催した。この結果、高校進学希望者28名全員が進学する等の成果をあげた。
 2年目の助成事業では、従来の事業に加え、被災した家庭の子どもたちの学習支援活動に重点的に取り組む。これらの事業が持続できるよう、自治体との連携強化や公的資金の確保、スタッフの資質向上のための取り組みも期待したい。
テーマ ふくしまの農業を現地で知り交流する「スタディファーム」
団体名 特定非営利活動法人 がんばろう福島、農業者等の会
代表者 理事長 齊藤 登
助成額 400万円
選考理由  がんばろう福島、農業者等の会は福島県内の50の農家により組織され、震災直後から、放射能汚染に対する風評被害に立ち向かい、消費者の理解を得るための活動を続け、ネットショップを通じて安全な農作物を市場に送り出してきた。
 1年目の助成事業では、福島県の農業の実態を知ってもらうため、福島県二本松市内の農園などに500人以上のスタディツアー客を受け入れた。また、県外へ出向いて福島県の農業の現状を伝える出張スタディファームの参加者は1,500人を超えた。
 2年目の助成事業では、これまでの事業に加えて、海外への情報発信にも取り組む。本事業を通じて、生産者と消費者の顔の見える交流の場づくりが強化され、福島県の農業復興が実現するよう期待したい。