東日本大震災現地NPO応援基金[特定助成] 「JT NPO応援プロジェクト」第10回助成 選考結果について
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助成概要と選考理由 | 選考結果のご報告(各ページのPDF版)
東日本大震災現地NPO応援基金[特定助成] 「東日本大震災復興支援 JT NPO応援プロジェクト」 の第10回選考を行い、下記の通り決定いたしました。
助成先一覧
No. | プロジェクト名/団体名 | 所在地 | 助成額 (単位:万円) |
---|---|---|---|
10-1 | 石巻の復興公営住宅におけるアートを通じて多世代が交流できる新しいコミュニティ作り 特定非営利活動法人 にじいろクレヨン |
宮城県 石巻市 |
340 |
10-2 | 親子の健全な心と体の成長と地域の支援者を育成する「すくのび広場」の運営 すくのびくらぶ |
福島県 いわき市 |
500 |
10(継)-1 | 障害者や要介護高齢者等の暮らしを支える福祉無償運送事業 特定非営利活動法人 愛ネット高田 |
岩手県 陸前高田市 |
400 |
10(継)-2 | 地域住民の生活支援および地域コミュニティ形成の促進プロジェクト 特定非営利活動法人 生活支援プロジェクトK |
宮城県 気仙沼市 |
260 |
10(継)-3 | 次世代の若者による実践的地域社会課題解決プログラム 一般社団法人 Bridge for Fukushima |
福島県 福島市 |
300 |
助成件数:5件(新規2件、継続3件) 助成総額:1,800万円(新規840万円、継続960万円)
*第10回助成は2015年10月1日から10月15日までの応募について10,11,12月に選考し助成が決定したもの。
*助成期間は2016年1月1日から2016年12月31日までの1年間。
*愛ネット高田、生活支援プロジェクトK、BridgeforFukushimaは第6回助成対象団体で、何れも継続して助成することとなった。
選考総評
選考委員長 大橋正明
[JT NPO応援プロジェクト概要]
「東日本大震災復興支援 JT NPO応援プロジェクト」は、特定非営利活動法人日本NPOセンターが2011年3月から行っている「東日本大震災現地NPO応援基金」に対して、日本たばこ産業株式会社から寄付を受け、「特定助成」として2013年8月から実施している助成プログラムである。これまでの2年間で9回の助成を行い、52のプロジェクトに計2億1千万円を超える助成を行ってきた。
[応募状況]
第10回助成(助成期間2016年1月1日~2016年12月31日)は、2015年8月より告知を開始、応募受付期間は2015年10月1日~10月15日であった。
新規助成の応募は42件、応募事業の活動地域と団体の所在地は、いずれも宮城県が最も多く、次いで福島県、岩手県であった。応募団体の結成時期を見ると、東日本大震災後に被災地で結成された団体が約7割を占め、これまでで最も高い割合となった。全体の約4割(17団体)は過去1年間にJT NPO応援プロジェクトに応募したことがある、つまり今回の応募が再チャレンジとなる団体であった。
継続助成は、応募資格がある8団体のうち5団体から応募があった。この内、継続2年目への応募が3団体、継続3年目への応募が2団体であった。
[選考プロセス]
新規助成の選考は、これまでの選考と同様にまず事務局による予備審査で応募要件等に基づいて検討を行い、本審査の対象として18件を選出した。この18件を全ての選考委員が選考基準に基づいて事前に書面評価を行ったうえで、全員参加の選考委員会の場で活発に意見を交わし、助成にふさわしいと考えられる5団体を選出した。選考委員会終了後、事務局スタッフが5団体を訪問し、活動状況や選考委員会で挙げられた点について詳細なヒアリングを行った。この結果を選考委員長に報告して、最終的な決裁を行い、助成事業2件を決定した。助成額合計は840万円である。
継続助成の選考は、前回のプロジェクトの成果と課題に関する報告内容と今回の応募内容について、全ての選考委員が選考基準に基づいて書面評価を行ったうえで、選考委員会で継続助成にふさわしいと考えられる団体を3団体選出した。その後、事務局スタッフによるヒアリングを行い、選考委員長の決裁を経て、助成事業3件を決定した。助成額合計は960万円であった。
新規助成と継続助成をあわせて、助成件数は5件で助成金額は1,800万円となった。
[選考における議論のポイント]
新規助成では、応募要項に記載している5つ選考基準*1をベースに審議を行った。また、継続助成では、以下の選考基準に加えて、前年度の事業の目標達成状況等も踏まえて審議を行った。
新規助成、継続助成の審議においてポイントであったのは次の点である。
新規助成は「プロジェクトと組織の将来的な在り方」が論点となった。応募プロジェクトが将来的には受益者等の負担により持続されるのか、何らかの制度の中に組まれていくのか等、その方向性とその形へ行きつくための流れとして計画されているのか。プロジェクトの方向性は同時に組織としての方向性も反映しており、この点において明確さと具体性がある企画は高く評価された。
継続助成は、「プロジェクトの成果の可視化」と「変化する地域への対応」が論点となった。1年目もしくは2年目のプロジェクトの実績について、実施した内容とそれに基づく成果と今後の課題が明確になっているものは高く評価された。また、新規助成の申請時から1年もしくは2年が経過したことで多くの地域ではその状況は変化しており、この変化を的確にとらえた上で企画できているかによって選考委員のプロジェクトに対する評価は分かれた。
2015年も後半に入り、東北で活動する多くの民間非営利組織が2016年以降の取り組みについて模索していることが今回の応募書類を読む中で伝わってきた。従来から指摘されてきた震災への関心の低下や支援金の減少も実際に表れてきている。改めて活動する地域の状況の変化を適切にとらえること、自組織の将来的な展望を決めて打ち出していく必要が高まっている。助成する5団体には、刻々と変化する地域の状況を見据えながら、プロジェクトで関わる方々の声に耳に傾け、息の長い持続的な取り組みを通して被災地のコミュニティの再生に取り組んで頂けることを期待している。
【選考委員】
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助成概要と選考理由
【新規助成】
テーマ | 石巻の復興公営住宅におけるアートを通じて多世代が交流できる新しいコミュニティづくり |
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団体名 | 特定非営利活動法人 にじいろクレヨン |
代表者 | 代表理事 柴田滋紀 |
助成額 | 340万円 |
選考理由 | にじいろクレヨンは、震災後に設立され、宮城県石巻市において避難所や仮設住宅での訪問型子どもの居場所づくり、仮設住宅の住民を対象としたアートプロジェクトを実施してきた団体である。 本プロジェクトでは、復興公営住宅の住民および子どもの保護者を対象としたサロンや、子どもと大人が一緒に参加できるアートワークショップを行い、1年を通じてコミュニティ形成のモデルづくりに取り組む。 仮設住宅から復興公営住宅への移行が今年から来年に掛けて本格化する石巻市内において、復興公営住宅での新たなコミュニティ形成は急務の課題であり、震災当初からの専門性を活かして協力・連携団体と共に、子どもを中心とする新たなコミュニティづくりに期待したい。 |
テーマ | 親子の健全な心と体の成長と地域の支援者を育成する「すくのび広場」の運営 |
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団体名 | すくのびくらぶ |
代表者 | 代表 前澤 由美 |
助成額 | 500万円 |
選考理由 | 福島県いわき市は地震・津波被害に加え、原発事故の影響が残り、住民はいまだ不安の中にある。とりわけ子育て家庭は、屋外遊びに対する不安を抱え、親子ともに心身の健康に支障をきたすケースも出てきている。 すくのびくらぶは、企業の協力を得て3年前からいわき駅付近に立地する商業施設の一角を利用して、0歳から6歳までの乳幼児と保護者を対象に屋内の遊び場「すくのび広場」を設置、運営している。また、この広場は子育て相談や子育て支援者の学びの場にもなっている。 本プロジェクトは、過去3年で確立してきた広場の運営を維持し、より専門的な子育て支援の拠点となるよう、スタッフの保育士資格の取得を支援する。また、子育て世代が子育不安を解消し安心した生活が送れるよう、子育て家庭・支援者・高齢者に学びの機会を提供する。 本団体のメンバー(有給スタッフ・ボランティア)が力を合わせて運営にあたっている様子が伺われ、本助成によりプロジェクトが質量ともに発展していくことを期待したい。 |
【継続助成】
テーマ | 障害者や要介護高齢者等の暮らしを支える福祉無償運送事業 |
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団体名 | 特定非営利活動法人 愛ネット高田 |
代表者 | 代表理事 岡本 幸子 |
助成額 | 400万円 |
選考理由 | 愛ネット高田は、2002年より岩手県陸前高田市で介護保険事業を実施している団体であるが、2015年1月よりJDFいわて支援センターから引き継いで、障害者や要介護高齢者を対象に無償での移動支援事業を実施している。 助成1年目のプロジェクトでは、障害者や要介護高齢者の重要な移動手段として活用され、延べ利用者数は2,000人に達した。 助成2年目となる今回のプロジェクトでは、継続して福祉無償運送事業に取り組み、慢性疾患を抱える利用者の定期通院化を実現する。また、福祉有償運送事業として持続的な取り組みに発展できるよう行政等に働きかけ、最終的には陸前高田市の交付金事業として確立することを目指す。 郊外の高台への住居移転や市内外の公共交通機関が未整備な状況にあるなど地域課題が山積する中、こうした移動手段を求めている被災者等のニーズは相当高いものと思われる。NPOの経営基盤の強化も含め、継続した取り組みになるよう期待したい。 |
テーマ | 地域住民の生活支援および地域コミュニティ形成の促進プロジェクト |
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団体名 | 特定非営利活動法人 生活支援プロジェクトK |
代表者 | 代表理事 阿部 正孝 |
助成額 | 260万円 |
選考理由 | 生活支援プロジェクトKは、宮城県気仙沼市階上地区の応急仮設住宅および在宅の被災者を対象に、「はしかみ交流広場」を拠点に、なんでも相談・健康相談、いきいき体操、健康講話・保健劇をはじめ、野菜づくりや編み物講座、自治会への支援活動等、地域に密着した多様な支援活動を実施している。 助成3年目となる今回のプロジェクトでは、応急仮設住宅やみなし仮設住宅から防災集団移転や災害公営住宅等への転居という転換期を迎えるにあたり、これまでの活動を継続しつつ、住民同士で支え合うことができる地域の体制づくりに取り組む。 各地域において住民一人ひとりの問題を地域全体の課題としてどう対処していくのかが問われており、本プロジェクトにおいても、支援者間の協議の場づくり、行政との連携等、支援の輪を広げて継続した取り組みとなるよう期待したい。 |
テーマ | 次世代の若者による実践的地域社会課題解決プログラム |
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団体名 | 一般社団法人 Bridge for Fukushima |
代表者 | 代表理事 判場 賢一 |
助成額 | 300万円 |
選考理由 | Bridge for Fukushimaは、福島県内の高校生たちが自ら関心をもった社会テーマを取り上げ、その解決に向けたプロジェクトを参加者した高校生自身が主体的に組み立て、実行できるよう、高校生のメンタリングから資金調達まで支援するプログラムを運営している。 助成2年目のプロジェクトでは、高校生から提案された企画について、具体的な手法を学ぶ機会を提供し、参加者同士の作戦会議や事業評価を兼ねた合宿などを通して、学校を超えたつながりや、同じ学校における先輩・後輩のバトンリレーが生みだしてきた。 助成3年目となる今回のプロジェクトでは、参加者のさらなる拡大や、県内外の大学生メンターを養成するなど、プロジェクトを発展させながら継続的な取り組みとすることを目指す。 本プロジェクトを通して、さまざまな問題を抱える福島という土地で、社会的な課題に取り組む若者が一人でも多く育っていくことを期待したい。 |