【開催報告】第2回「Otemachi Discovery Salon 注目のフードバンクの多様性を知り、これからの真のあり方を考える」

2021年5月31日に第2回「Otemachi Discovery Salon」を開催いたしました。第2回目のテーマは、「注目のフードバンクの多様性を知り、これからの真のあり方を考える」です。特定非営利活動法人 フードバンク岩手 副理事長兼事務局長の阿部 知幸さんからお話しいただきました。

冒頭、阿部さんが取材を受けた報道番組を視聴しました。阿部さんは、2011年3月の東日本大震災の発災前は岩手県内で営業マンをしていました。発災後、得意先回りをしていた地域が津波により大きな被害を被っている惨状を目の当たりにして、被災地でボランティアとして支援活動に日々従事。発災前に決まっていた転職先を断り、同年7月に開所された「もりおか復興支援センター」のスタッフとして支援活動を継続することにしました。生活支援相談員として盛岡市に避難をされてきた700世帯全てを幾度となく訪問し、電話や窓口も含めると18,000件を超える相談に応じる中、時間の経過とともに相談内容が被災支援から生活に関わる相談が増加していることに気づきます。生活困窮者を対象にしたフードファーム(農園ボランティア)事業の立案などを経て、食料提供を通じた支援活動を広げるべく2014年4月にフードバンク岩手の活動を開始しました。阿部さんの熱い思いを受け止めて講演がスタートしました。

「フードバンク」という名前を掲げていても、団体ごとの「フードロス問題の解決」や「生活困窮者支援」という課題設定の重みづけによって活動は異なってきます。

 

 

阿部さんには自団体の特徴に加えて、全国各地で活動するフードバンク団体の多様性や、フードバンク団体の食料受け入れ・提供を行う基盤を強化しなければ課題解決につながらない共通課題をご説明いただきました。

フードバンク岩手が取組んでいる生活困窮者支援は食料支援をツールとして個別訪問等により生活困窮者の方達のSOSを早期に拾い出すための工夫をしています。またNPOなどの子ども食堂、行政や福祉機関(福祉、子ども)、スクールソーシャルワーカー(図中のSSW)など幅広い関係者との連携による支援が特徴です。フードバンク岩手は、困窮への芽を早い段階で摘むことも重視して活動しています。

 

 

今後、企業やフードバンク団体の連携を強化してより広域の東北フードバンクセンター機能を構築したいと考えています。そのためには、何と言っても食料を集めるしくみが必要です。阿部さんから、設置されたフードバンクポストへ寄贈する食品を持ってきてもらい食料を集める「フードドライブ」への協力事例の紹介がありました。日本たばこ産業株式会社は、社員が車移動勤務の帰路にフードバンクポストに寄せられた寄贈食品をフードバンク岩手の食糧庫に運搬しています。更に、社員自ら多くの人が集まるスーパーマーケットにフードバンクポストを設置させていただけないか交渉し、置かせてもらうことにも成功しています。そして、会社に寄贈食品を持ってきてもらう「社内フードドライブ」も有効な方法です。

 

 

参加者の方々からは、多くの質問が寄せられました。一部ご紹介します。

・生活困窮者の方々と接点を持つ上で行政や社会福祉協議会等から個人情報に当たる対応を大変難しいとは思うが、どのような対応で情報提供を頂いているのか。

そして、食品提供は個人の尊厳を重視する必要があると思われるが、生活困窮者の方々への物資を配給する上での場所や配布方法など、他人の目を気にしない工夫などはどうされているのか?

・フードバンクポストの設置場所や回収頻度や回収した商品の団体への受け渡しの方法など全国各地の企業の事業所から問い合わせがあるのだが、各地域のフードバンク団体はどのように連携しているのですか?

(当日の質疑応答の模様や当日資料は、お問合せいただきました日本NPOセンター会員のみなさまに追ってご送付させていただきます)

非常に盛りだくさんの内容でしたので、70分間の講演では、一つ一つのトピックに対して、深堀して意見交換できなかったかもしれません。その中でも、フードバンク団体のミッションや活動の多様性と、フードバンク岩手の阿部さんが目指す活動について、その想いやあり方をお伺いすることが出来たかと思います。

今回も、コロナ禍の中でのオンライン開催ではありましたが、ご参加頂いた皆さま有難うございました。次回3回目以降も皆さまに興味を持って頂けるテーマを設定しながら、開催して参ります。Otemachi Discovery Salonはどなたでも大歓迎です、ご参加をお待ちいたしております。

■第2回 ゲストスピーカー

阿部 知幸(あべ ともゆき)さん

特定非営利活動法人 フードバンク岩手 副理事長/事務局長
一般社団法人 全国フードバンク推進協議会 理事

東日本大震災をきっかけに民間企業よりNPOの世界へ転身。被災者支援を継続していくなかで、生活に困っている方々への支援のひとつとして食料支援を開始すると同時に岩手県で食のセーフティーネットを構築するために、2014年フードバンク岩手を設立。
岩手県内の行政や社会福祉協議会等の生活困窮者相談窓口からの年間約900件に及ぶ緊急食料支援要請に対応。食品ロス削減推進法の充実・被災者支援の制度改正にも取組み中。