東日本大震災現地NPO応援基金[一般助成]第4期第2回助成の審査を行い、下記の通り決定いたしました。選考結果のご報告(PDF版)
助成先一覧
≪新規助成≫
No. | 団体名 | 所在地 | 助成額 (単位:万円) |
---|---|---|---|
1 | 特定非営利活動法人SET | 岩手県 陸前高田市 | 50 |
2 | 認定特定非営利活動法人底上げ | 宮城県 気仙沼市 | 50 |
3 | 特定非営利活動法人エイブル・アート・ジャパン | 宮城県 仙台市 | 50 |
4 | 一般社団法人福島県助産師会 | 福島県 福島市 | 50 |
5 | 特定非営利活動法人ふよう土2100 | 福島県 郡山市 | 50 |
≪継続助成≫
No. | 団体名 | 所在地 | 助成額 (単位:万円) |
---|---|---|---|
1 | 特定非営利活動法人アスイク | 宮城県 仙台市 | 50 |
2 | 一般社団法人日本カーシェアリング協会 | 宮城県 石巻市 | 50 |
3 | 特定非営利活動法人青空保育たけの子 | 福島県 福島市 | 50 |
*助成期間:2023年4月1日から2024年3月31日までの1年間
*このほかに助成対象団体のフォローアップ事業として2事業 99万円
助成対象件数:10件(新規助成5件、継続助成3件、フォローアップ事業2件)助成総額:499万円
*第4期第1回助成は、日本NPOセンターが実施する東日本大震災の支援事業のいずれかのプログラムで支援対象となった団体を対象に実施し、2023年1月30日~2月6日までに応募のあったエントリーを対象に、審査を行い助成が決定したもの。
審査総評
日本大震災現地NPO応援基金[一般助成]第4期第2回助成
審査委員(座長) 山崎 宏
1.審査の経過と結果
東日本大震災発災直後の2011年3月に開始した「東日本大震災現地NPO応援基金(以下、応援基金)」は第1期から第3期の助成を通じて、「組織基盤の強化」に重点を置いて進めてきた。
2022年4月からは専門家や運営アドバイザーなど、より専門性の高い外部の人材を活用した組織基盤強化の取り組みを支援する第4期がスタートした。
第2回となる今回の助成は、2023年1月16日に告知を行った。1月30日~2月6日の受付期間に継続助成に3団体、新規助成に6団体、計9団体からエントリーがあった。
2月15日には事務局によるエントリー内容の事前確認を実施した。
事務局による事前確認では、エントリーシートをもとに「被災した地域や人々を対象とした自団体の活動の成果や課題を捉え、今後の活動に展開や見通しをもち、組織の課題と組織基盤強化の内容が明確になっているか」の観点から、9団体すべてがエントリー要件を満たしていることを確認した。
審査会は、審査委員3名が出席し3月3日に開催。「被災した地域や人々の現状を十分に捉えているか、持続可能な組織像が明確に描けているか、目標達成に向け具体的な手法が考えられているか、実施体制・スケジュール・予算等が十分に計画されているか、適切な外部協力者を選定し組織の成長と発展が期待できるか」などの観点からエントリーシートをもとに審査を行い、9団体に対し、より具体的な企画提案書の作成を依頼することとした。
企画提案書の作成を依頼するにあたって、事務局が各団体にヒアリングを行うとともに、審査会で示された懸念点やアドバイスを伝え、企画提案書への反映をお願いした。
3月19日までに各団体から提出された企画提案書をもとに審査委員が再度審査を行い、8団体を助成先団体として採択した。
各団体の組織基盤強化事業への期待は、「助成概要と推薦理由」を参照されたい。
また、助成対象となった団体への事務局によるフォローアップを目的とした2事業について審査を行い、採択した。フォローアップ事業では、普段の相談対応に加えて、現地訪問を実施する伴走支援現地フォローアップ事業と団体間の連携促進を目的とする団体間連携促進事業の2事業を実施し、団体の組織基盤強化が着実に図られるよう支援を強化する。
以上の結果、第2回助成では、継続助成3団体、新規助成5団体の計8団体の組織基盤強化事業と、事務局のフォローアップ2事業の合計10件、総額499万円の助成を決定した。
2.助成にあたって
東日本大震災現地NPO応援基金を2011年3月に立ち上げ、多くの方々のご支援をいただきながら、被災者の生活再建や被災地の再生・復興に取り組むNPOへの助成活動を続けて12年が経過した。
被災地では、心のケアなどソフト面でのサポートの継続が重要視されている中で、2020年から感染が拡大した新型コロナウイルスの影響はコミュニティを分断させ、孤立孤独の状態が深刻化している。
こうした現状に震災からこれまでに蓄積したノウハウがあるNPOへの期待は大きく、実際に行政からの委託を受けて事業展開する団体も多くなっている。ノウハウを活かし社会情勢に合わせ試行錯誤を続けながらも、様々な課題解決に向けた支援活動を行っていることに敬意を表したい。
助成対象となったNPOについては、これまでの実績を基礎に、地域の再生と活性化を目指し、外部協力者の力を最大限に活用して組織基盤強化に努めていただきたいと願っている。
最後に、2022年秋に被災地を訪問し、現地のNPOが抱える課題が12年前とは大きく変化していることを認識した。これまでの事業を見直し新たなチャレンジを始める団体、代表主体の法人運営から組織を意識した活動に移行する団体など、いずれにしても大きな転換期にあると感じた。
また、単独の団体で活動を継続していくことが困難になってきており、地域の団体、企業、行政などと連携した活動が求められていると改めて実感した。
同時に、応援基金も多様なセクターとの連携を意識したNPOの支援のあり方をしっかりと考えていく時期であることを再確認したことを加えておきたい。
<審査委員>
山崎 宏(座長) 特定非営利活動法人ホールアース自然学校 代表理事
木内 真理子 認定特定非営利活動法人ワールド・ビジョン・ジャパン 理事・事務局長
田尻 佳史 認定特定非営利活動法人日本NPOセンター 常務理事
[助成事務局]
認定特定非営利活動法人日本NPOセンター
助成概要と推薦理由
≪新規助成≫
組織基 盤強化 テーマ | 大きな飛躍に向けて人材を守り事業価値を向上させるための基盤づくり |
---|---|
団体名 | 特定非営利活動法人SET |
主な活 動地域 | 岩手県 陸前高田市 |
推薦 理由 | 本団体は、若者の流出や人口減少が被災を機に加速した岩手県陸前高田市において、 外部からの刺激と応援を入れ続けることで「町のために」と活動する人を町内外に 増やすことや、伝統文化の継承、地域産業の振興に取り組んでいる。また、東北最 大規模の修学旅行民泊の受け入れを行っている。 活動を継続する中で、年齢層や働き方も多様化している。今後の団体の継続と質の 向上を図るうえで、スタッフが働きやすい職場環境の整備が不可欠となっている。 また、事業拡大する一方で、多様なステークホルダーに対して会計報告が必要となり、 会計業務によって事業が圧迫されているため、シームレスな会計フローと担当者の 役割の明確化が急務になっている。 今回の組織基盤強化では、外部の専門家のサポートを受けながら、中核になりうる 人材の確保・定着を見据えた労務管理ロードマップの作成と会計報告を見据えた 業務フローの見直しに取り組む。 活動を支える労務、会計の仕組みが整備されることで、人口減少が大きな課題と なっている地域での活動が安定的に継続され、交流人口の増加や地域活性化に つながることを期待したい。 |
組織基 盤強化 テーマ | 若手職員の人材育成スキームの構築と実践による組織全体のチーム力向上 |
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団体名 | 認定特定非営利活動法人底上げ |
主な活 動地域 | 宮城県 気仙沼市 |
推薦 理由 | 本団体は、宮城県気仙沼市において、中学生、高校生を対象とした学習を通した 「居場所」を2012年から提供しているほか、市内の行政などと共に「高校生マイプロジ ェクトアワード」を開催するなど若者支援に取り組んでいる。 2022年度からスタッフの若返りと、人材の育成に注力し取り組んでいるが、組織内に 人材を育成する経験が不足していること、人材育成のスキームが整理されていない 現状があり、人材育成計画や育成スキームの構築が急務である。 今回の組織基盤強化では、法人内のルーブリック指標の作成と目標管理制度の導入に 取り組むほか、若手職員向けの研修を、他の複数団体と共に実施する。 人材育成は多くの団体が抱える課題であり、複数の団体と共に研修を開催することで より大きな効果が期待される。同じように人材育成に課題を抱えている団体の参考に なることを期待したい。 |
組織基 盤強化 テーマ | 障害のある人による芸術活動の情報発信 |
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団体名 | 特定非営利活動法人エイブル・アート・ジャパン |
主な活 動地域 | 宮城県 仙台市 |
推薦 理由 | 本団体は、「芸術文化活動には人が生きることを助ける力がある」を理念に、震災直後から 複数のNPOと連携し、障害のある人と福祉施設の“生きる力と仕事再建”に取り組んでいる。 2013年からは東北事務局を仙台市に開設し、芸術文化ならびに災害文化に関わる中間支援組 織として活動している。 これまで情報発信は紙媒体が中心となっており、SNSなどのデジタルツールを活用しきれて おらず、SNSを利用する層にリーチできていなかった。また、団体で導入している顧客管理 システムを有効活用できていないため、運用オペレーションの確立が急務となっている。 今回の組織基盤強化では、コミュニティ形成(受益者・協働者ならびに会員・ボランティア の拡大)と、被災地での社会づくりと災害文化の継承を目的に、IT専門家によるウェブサイ トおよびSNSによる情報発信とアーカイブ化、データベースを活用した情報発信とコミュニ ティ管理に取り組む。 組織基盤強化によって、様々な情報発信の仕組みが整理され、必要とする方に必要な情報が 届くことで、その人に合った暮らしの質の向上につながることを期待したい。 |
組織基 盤強化 テーマ | 継続した母子支援活動に向けた組織基盤強化事業 |
団体名 | 一般社団法人福島県助産師会 |
主な活 動地域 | 福島県 福島市 |
推薦 理由 | 本団体は、1965年に設立、2011年10月に法人化した。福島県内で母子に寄り添った産前・ 産後ケアを行っているほか、妊産婦支援研修会などを実施している。 ここ数年、利用者が減少しており、原因は新型コロナウイルス感染拡大の影響や広報の不 足、社会情勢に合った対応が不十分であったことが考えられる。利用する年齢層に合った 広報や支援の方法としてSNSの活用やオンライン化、それに付随するITリテラシーの確立 が急務となっている。 今回の組織基盤強化では、ホームページの見直し、SNS等を活用した広報活動の整備を行 うとともに、ITリテラシーの確立と他の助産所とも共有する研修なども実施する。その他、 時代に合わせて就業規則や付随する規約等の見直しも行う。 産前産後ケアは少子化対策においても非常に重要な取り組みになる。組織基盤強化される ことで必要な情報がより多くの利用者に届き必要なサービスが受けられること。 また、他の助産所にも波及しより多くの効果につながることを期待したい。 |
組織基 盤強化 テーマ | 令和6年4月法改正に向けた組織基盤強化 |
団体名 | 特定非営利活動法人ふよう土2100 |
主な活 動地域 | 福島県 郡山市 |
推薦 理由 | 本団体は、2011年8月に法人化し、震災直後から被災地の障がい児者家族支援に取り組んで きたほか、2015年1月からは児童福祉法に基づく通所支援事業を中心に、子ども支援、 障がい児者支援の活動に取り組んでいる。 2015年の放課後等デイサービス開設時に必要な就業規則等の労務関係の整備を行ったが、 時間の経過や社会情勢に沿った就業規則や労務規程等の整備が喫緊の課題となっている。 また、令和6年4月の児童福祉法改正にともなうハラスメント対策等の整備が急務となって いる。 今回の組織基盤強化では、職員がより安心して働き続けることができる環境整備と、 利用者にとって報酬単価の見直しをはじめとする法改正を見据え、パワハラ・セクハラ 対策等のリスク管理を明文化するだけでなく、運営オペレーションの見直しに取り組む。 組織基盤強化によって、職員の継続的な雇用により、サービスの質が向上し、利用者家 族がより安心できる環境の提供につながることを期待したい。 |
≪継続助成≫
組織基 盤強化 テーマ | 情報の集約発信力強化による市民活動支援力向上 |
団体名 | 特定非営利活動法人アスイク |
主な活 動地域 | 宮城県 仙台市 |
推薦 理由 | 本団体は、2011年3月に任意団体として活動を開始し、現在は宮城県内24市町村で生活 保護家庭、ひとり親家庭等の子どもを対象とした学習、体験の機会づくり、家庭環境も 含めた生活支援等に取り組んでいる。 地域に根差した活動を続けてきた結果、年間1,000以上の家庭を支える規模に発展した 一方で、事業・受益者の拡大に情報管理のシステムが追いついておらず、業務の非効 率化、事業・担当者間での情報共有が課題となりつつある。2年目は、1年目に情報管理 システムを導入し、一部でパイロット施行することで確立した運営オペレーションを 法人全体で活用できるよう継続的に取り組む。 震災直後から被災地で行われてきた学習支援では、コロナ禍を経て増え続ける不登校生 や貧困問題、ヤングケアラーなど新たな課題とも向き合う必要が出てきている。 組織基盤強化によって、バックオフィスの体制が整えられ、子どもたちを取り巻く課題に 継続的に取り組むことで子どもたちの未来への一助となることを期待したい。 |
組織基 盤強化 テーマ | 寄付車を活用した支援活動の継続発展のための組織基盤強化事業 |
団体名 | 一般社団法人日本カーシェアリング協会 |
主な活 動地域 | 宮城県 石巻市 |
推薦 理由 | 本団体は、宮城県石巻市を拠点に寄付車両を活用し、車をシェアして支え合う仕組みを 地域につくるコミュニティ・カーシェアリング事業を7府県25地域で展開しているほか、 生活困窮者向けの低価格カーリースや、NPO や移住者に向けたソーシャル・カーリース、 自然災害時に被災者に向けて貸し出す車を確保する災害時返却カーリースなどを実施。 また、全国で発災する自然災害の被災者や被災者支援団体に車両の無償貸出支援を行う モビリティ・レジリエンス事業にも取り組んでいる。 1年目は、組織名称や法人形態、活動を継続するにあたっての理事体制・定款変更に関して、 複数の外部協力者との意見交換や情報収集を行い、組織としての方向性を探った。 2年目は、1年目の取り組みで見えた法人の方向性を具体化するためNPO法人への移行及び 認定NPO法人取得に向けた取り組みと、自動車の現物寄付の仕組みを日本で実施するため の調査・体制づくりに外部の協力を得て取り組む。 現時点では日本国内での実例がない自動車の現物寄付の税控除が公に認められ、支援を 必要とする方に必要な車両が届けられることで移動手段に困難を抱える方や災害時の支援 につながることを期待したい。 |
組織基 盤強化 テーマ | 未来のこども達のためにわたし達にできることを計画し運営できる組織作り |
団体名 | 特定非営利活動法人青空保育たけの子 |
主な活 動地域 | 福島県 福島市 |
推薦 理由 | 本団体は、福島県福島市において、2009年から野外保育に取り組み、震災後の2011年10月 からは、山形県米沢市で認可外保育施設の運営などを行っている。保育施設の開所日は、 放射能汚染を危惧する福島の児童を米沢市まで毎日送迎しているほか、米沢市への避難者の 児童などを中心に受け入れている。 非常勤職員が多く、日々のスケジュールをこなすだけで精一杯な現状がある中、1年目は、 団体の目的の明確化、人材や資金の安定化のための事業計画とその実現のための洗い出しを 行った。 代表理事に業務が集中している現状から、2年目は、外部協力者の伴走支援を受けながら、 理事体制の再構築、理事の育成を行うことで副代表理事等への役割の分散など組織として の運営体制への転換に取り組む。 また、新役員体制に合わせて再度ロジックモデルの検討、目的・ミッションの明確化、 人材や資金を安定させるための事業の構築に取り組む。 組織基盤強化を行い持続可能なNPO組織を作ることで、子どもとその親への支援が 継続されることを期待したい。 |