【開催報告】会員サロン「活動の成果をエピソードの共有から捉えてみよう」(2023年5月22日)

日本NPOセンターでは、多彩な活動をされている会員同士が交流し、互いの組織・取り組みを知り合い、議論を深める場として会員サロンを開催しています。

2023年度、第一回目の会員サロンは、「活動の成果をエピソードの共有から捉えてみよう」と題して、「参加型・質的評価手法」についてオンラインで意見交換しました。

当日は一般社団法人参加型評価センター代表理事の田中博さんから「モスト・シグニフィカント・チェンジ(MSC:Most Significant Change = 最も意義ある変化)」手法をご紹介いただきました。そして、特定非営利活動法人ウィメンズアイ理事の栗林美知子さんからMSC手法の実践事例をご紹介いただきました。

MSC手法は、事業を通じて起こった受益者の意識や行動の変容に着目してその成果を可視化する評価手法です。量的な目標を設定してその達成度を測るロジックモデルなどの評価手法では把握できない質的なインパクトをインタビューなどを通じて可視化し、「最も意義ある変化」という成果として事業当事者が解釈していきます。

この当事者の参加による解釈の過程が、事業実施団体にとっては、事業の成果に関する気づき、学び、そして事業の改善に寄与することがMSC手法の特徴だと田中さんは説明しました。田中さんは、問題があったプロジェクトが、MSC手法を実施することによって良くなった事例を海外で多く見てきたとも言っています。

MSC手法は、田中さんのご協力を得て、日本NPOセンターの「Johnson & Johnson 東北被災地での市民・コミュニティのエンパワメントプログラム(2014年~2017年)」の成果検証で実践されました。このプログラムを通じて南三陸町で子育てをテーマにした事業を実施した栗林さんは、MSC手法を実践した経験と感想を紹介してくださいました。栗林さんは、スタッフと当事者が参加するMSC手法のプロセスを通じて、「自分たちが想定していなかった、予想外の結果、変化を認識できた。そして、それがこのプロジェクトで最も大切なことだったとスタッフの間で合意した」と振り返ってくださいました。

お二人の発表のあと、参加者を交えて質疑応答・意見交換を行いました。参加者からの質問に対して田中さんから、MSC手法の長所と短所、実施のタイミングなどの説明がありました。田中さんは、「日本では事業評価に対する認知が十分ではなく、資金提供者に対する説明責任を目的とした量的評価を重視しすぎる傾向がある・・・欧米のように量的な評価と質的な評価をバランスよく実施するべきで、そういった評価を事業予算に組み込むことが重要」と述べました。最後に栗林さんは、「MSC手法は事業を評価するだけでなく、そのプロセスを通じて事業を改善する学びをNPO側が得ることができる。資金提供者には質的評価手法は、小さなNPOの成長も支援できるという側面を価値として認識してほしい」と会を締めくくっていただきました。

※ MSC(モスト・シグニフィカント・チェンジ)手法についてはコチラ

※ Johnson & Johnson 東北被災地での市民・コミュニティのエンパワメントプログラムのMSC評価についてはコチラ

登壇者プロフィール

一般社団法人参加型評価センター 代表理事 田中 博さん

事業を改善する教訓を学んだり、数量化できない質的変化をとらえたり、また関係者がエンパワーメントされる参加型評価のファシリテーションが専門。(特活)ヒマラヤ保全協会元事務局長。(特活)開発教育協会評議員。JICA草の根技協評価スキーム検討委員や(特活)日本NPOセンター、(公財)京都市ユースサービス協会の事業等で評価アドバイザーを務めた。共著に「自分達で事業を改善できるようになった!」『参加型評価〜改善と改革のための評価の実践』源由理子編著(2016)晃洋書房がある。
日本評価学会認定資格評価士。英国サセックス大学国際開発研究所大学院修了。日本ファンドレイジング協会准認定ファンドレイザー、愛媛大学非常勤講師

特定非営利活動法人 ウィメンズアイ 理事 栗林 美知子さん

和歌山県出身。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了、青山学院大学ワークショップデザイナー育成プログラム12期修了。東日本大震災での災害ボランティアを機にウィメンズアイの立ち上げに参加。それまでの国際協力の仕事を辞め、ウィメンズアイの事務局長として宮城県に移住。南三陸町で、地域の女性たちとともに、人をつなぎコミュニティを育てる活動を続けている。ウィメンズアイによるスタートアップシェア工房「パン菓子工房Oui(ウィ)」プロジェクト担当。身近な防災ワークショップ「ライフポーチ」担当。

【日本NPOセンター会員サロン】

日本NPOセンターにご入会いただき、多彩な活動をされている会員同士が交流し、お互いの組織・取り組みを知り合い、議論を深める場として毎月開催しております。

次回会員サロンは、7月7日(金)13時30分から開催します。NPO法人フェリスモンテ理事・事務局長の隅田耕史さんをお招きして、地域コミュニティの住民参加について意見交換をします。是非ご参加ください。詳細とお申込みはコチラから。

※本サロンは日本NPOセンターの会員限定です。会員サロンにご関心をお持ちの方は、入会お申込みをいただければその会から参加できます。
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