【開催報告】会員サロン『住民の参加を促すNPOの役割~「動員参加」にならないために~』(2023年7月7日開催)

日本NPOセンターでは、多彩な活動をされている会員同士が交流し、互いの組織・取り組みを知り合い、議論を深める場として会員サロンを開催しています。

2023年度、第二回目の会員サロンは、「住民の参加を促すNPOの役割~『動員参加』にならないために~」。当日は、日本NPOセンター事務局次長の上田からの自身の経験も含めた問題提起の後、特定非営利活動法人フェリスモンテ事務局長、隅田耕史さんから住民参加型在宅福祉サービスと住民参加の現状についてご紹介いただきました。最後に参加会員の皆さんとNPOが取り組む住民参加の現状について事例や経験を持ち寄って議論、意見交換をしました。

自身が住む地域のPTAや自治会に関わる上田は、「現在の地縁組織の活動は『動員』によって維持されている側面がある。『動員』から住民の主体的な参加を促すモチベーションを生み出すことは難しい。その意味において、『動員的な参加』が抱えるリスクを理解する必要がある。」と問題提起しました。そして、NPOは、本来的な参加の意義やあり方を伝える努力を今一度することが必要だと呼びかけました。

上田の問題提起を受けて、ゲストスピーカーの隅田さんからは、ご自身の団体の活動と、副代表幹事を務める住民参加型在宅福祉サービス団体全国連絡会の活動の紹介を通じて地域の住民参加の現状と課題について説明とご意見を伺いました。住民参加型在宅福祉サービスは、1970年代後半に作られた地域住民間の助け合い(相互扶助)を基盤とした、住民主体、有償、非営利の在宅福祉サービスのこと。現在、全国で約2,000団体が活動していると言われています。

一方で、住民参加型在宅福祉サービスは、参加住民を確保できないという困難に直面しているようです。隅田さんによれば、2000年に施行された介護保険制度は、多くの住民参加型在宅福祉サービス団体に介護保険サービス提供者となるか、住民参加型在宅福祉サービスを続けていくかという決断を迫りました。隅田さんが事務局長を務める特定非営利活動法人フェリスモンテは1999年に住民参加型在宅福祉サービス団体として設立されました。2000年以降は、介護保険制度に基づいたサービス提供(ヘルパー派遣やデイサービスなど)に舵を切りながらも、制度だけではカバーできない領域(高齢者のサロンや配食サービスなど)での地域住民の助け合いは依然重要と考え、双方のサービスを一体化して展開されています。

介護保険制度を管理する地方自治体も介護保険のサービスが在宅福祉サービスのすべてをカバーしていると考えてはいません。フェリスモンテは、総合事業という地域住民の助け合いを基本にした生活支援のパイロット事業を行政と協働して実施しています。地域住民が柔軟に参加できる安価な生活支援サービスの設計を試行しているとのことでした。しかし、隅田さんによれば、サービス提供の担い手となる住民を発掘することは引き続き課題とのこと。

動員型と参加型を対立軸とした住民参加に関する問題提起で始まった今回の会員サロンは、「いかにして参加できる住民とつながるか、何が参加に「魂」を与え、人々を参加へと動機付けるのかという議論に。

会員の皆さんからご自身の実践や経験が共有されました。活動に参加する人を見つけるためには、① 広く募集したり、自治会に紹介を依頼するよりは、個人的な紹介や、問い合わせてきた方に個別にアプローチする、② 「動員」をきっかけに、その中から継続的な活動につなげていく、③ 関心のあるテーマで集客して、その中から継続して関与していただけるよう呼びかける、④実際の体験の中からしか活動の動機は生まれない、などの意見が共有されました。

住民参加を動機づける要素としては:① 生活のリズム感の提供、② やりがい、③ 感謝、④ 人の役に立っているという実感、⑤ 価値の交換、などが出されました。

地域コミュニティでの取り組みには、行政施策だけではなく、地域住民の主体的な参加による自治が期待されています。しかし、地域活動への動員的参加だけでなく、参加の本来の意義を重視するNPOにおいても、主体的参加の担い手を確保することは簡単なことでないように見受けられます。隅田さんによれば、住民参加型在宅福祉サービスの担い手(住民)は在宅福祉サービスの担い手の1%に満たないと言います。

それでも、歴史の流れや社会の変容の中で、これまで見いだせなかった新しい層の中に主体的な参加に関心を持っている人が地域には一定数存在しており、そのような人とつながることを通じて、参加者数を評価指標とするのではなく、参加の内容に注目してその質的な違いを示していくことが、NPOが地域コミュニティの中で連携・協働する役割だと確認をしました。

住民参加型在宅福祉サービス団体全国連絡会
https://www.sankagata.net/ 

特定非営利活動法人フェリスモンテ
http://www.otasha.jp/ 

登壇者プロフィール

特定非営利活動法人 フェリスモンテ 理事・事務局長 隅田耕史さん
1981年大阪生まれ。2006年よりNPO法人フェリスモンテでボランティア、2007年より事務局長。
桃山学院大学 非常勤講師、認定NPO法人日本NPOセンター 評議員、住民参加型在宅福祉サービス団体全国連絡会 副代表幹事、一般社団法人全国食支援活動協力会 理事、宅老所・グループホーム全国ネットワーク 監事、大阪有償ボランティア団体連絡会 代表、大阪宅老所・グループハウス連絡会 共同代表、地域共生ケア生野推進委員会 代表など

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