東日本大震災現地NPO応援基金(一般助成・第3期)第5回助成審査結果について

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東日本大震災現地NPO応援基金[一般助成]第3期第5回助成の審査を行い、
下記の通り決定いたしました。

助成先一覧

No. 団体名 所在地 助成額
(単位:万円)
 1   一般社団法人三陸駒舎 岩手県 釜石市 240
 2   認定特定非営利活動法人桜ライン311 岩手県 陸前高田市 230
 3   一般社団法人気仙沼まちづくり支援センター 宮城県 気仙沼市 220
 4   特定非営利活動法人石巻復興支援ネットワーク 宮城県 石巻市 200
 5   一般社団法人シャロームいしのまき 宮城県 石巻市 230
 6   特定非営利活動法人ベビースマイル石巻 宮城県 石巻市 80

*助成期間:2020年10月1日から2021年9月30日までの1年間
*このほかに助成対象団体のフォローアップ事業として288万円
助成対象件数:7件  助成総額:1,488万円(フォローアップ事業費を含む)
*第3期第5回助成は、日本NPOセンターが実施する東日本大震災の支援事業のいずれかのプログラムで支援対象となった団体を対象に実施し、2020年6月29日~7月3日までに応募のあったエントリーを対象に、事務局審査および本審査を行い助成が決定したもの。

審査総評

東日本大震災現地NPO応援基金[一般助成]第3期
審査委員(座長)萩原なつ子

1.審査の経過と結果
日本大震災現地 NPO 応援基金[一般助成]は、2016 年7月より、『被災者の生活再建を支援する現地NPOの組織基盤強化 ~未来をつくる持続的な組織をめざして~』をテーマに第3期を開始した。
第5回目となる今回の助成では、2020年5月8日に告知を行い、6月29日~7月3日の受付期間に27団体からエントリーがあり、7月9日に事務局による事前審査を実施した。
事前審査では、「被災した地域や人々を対象とした自団体の活動の成果や課題を捉え、今後の活動に展開や見通しをもち、組織の課題と組織基盤強化の内容が明確になっているか」の観点から評価を行い、9団体を選出した。
その後、9団体には事務局による事前審査で挙げられた課題や検討点を伝え、改めて自団体の組織基盤強化の企画提案書を8月21日までに提出していただいた。9団体のうち1団体は企画提案書が再提出されなかったため、8団体が本審査の対象となった。
本審査は、審査委員3名に事前にお願いした書面審査をもとに、9月4日に開催し、その結果、6団体を採択した。不採択となった2団体については、1団体は申請内容が全国展開のためのインフラ整備であり、もう1団体についても全国的にもモデルとなるような事業を行っていることから、限りのある当基金の支援から卒業し、次の段階に進んでもよいのではないかという意見があった。採択となった6団体には、本審査会で示された懸念点や希望を伝え、企画書への反映をお願いした。各団体の組織基盤強化事業への期待は「助成概要と推薦理由」を参照されたい。
なお、コロナ禍で組織基盤強化を行うにあたって、外部講師を招聘して行う研修等や他地域の団体への視察研修はオンラインも併用して行うことを推奨し、交通費などの助成額の一部を減額することとした。
また、本審査会では事務局による助成対象となった団体へのフォローアップを目的とした事業について審査を行い、採択を決定した。フォローアップ事業では、普段の相談対応に加えて現地訪問 や報告会等を実施し、団体の組織基盤強化が着実に図られるよう伴走支援を強化する。
以上の結果、第5回助成では、6団体の組織基盤強化事業と事務局のフォローアップ事業の合計7件、総額1,488万円の助成を決定した。

2.助成にあたって
東日本大震災現地NPO応援基金を2011年3月に立ち上げ、多くの方々のご支援をいただきながら、被災者の生活再建や被災地の再生・復興に取り組むNPOへの助成活動を続けて9年が経過し、来年の3月で10年を迎える。
被災地では、復興予算の更なる減少に加え、新型コロナウイルスの影響で、見守り活動やサロン活動の自粛・規模縮小が相次いでいる。加えて、災害公営住宅等に入居する高齢者の孤独死が増加傾向にあるほか、再建し新しくできた街からは観光客が激減し、被災地の経済は大きな打撃を受けている。また、雇用の機会が失われ、生活が困窮する方が増加している。
このような状況の中、現地で活動するNPOはコロナ禍でも常に変化する被災地の現状に向き合い、様々な課題解決に向けた復興支援活動を行っている。助成対象となったNPOについては、これまでの実績を基礎に、地域の再生と活性化を目指した事業開発と人材育成につながるような組織基盤強化に努めていただきたいと願う。
最後に、本審査会において、これまで応援基金を受け組織基盤強化を行った団体の活動が認知され全国展開に向けステップアップをしているとの報告があり、応援基金がその一助になれたことをうれしく思う。
また、復興財源が減少していく中で、復興予算に頼らいない財源の確保や次世代を担う若手人材の育成など現地NPOの課題は多岐にわたっており、地域の復興支援を行うNPOの支援のあり方をしっかりと考えていく時期であることを再確認したことを加えておきたい。

<審査委員>
萩原 なつ子(座長) 認定特定非営利活動法人日本NPOセンター 代表理事
栗田 暢之 認定特定非営利活動法人レスキューストックヤード 代表理事
山岡 義典 特定非営利活動法人市民社会創造ファンド 理事長

[助成事務局]
認定特定非営利活動法人日本NPOセンター
特定非営利活動法人市民社会創造ファンド

助成概要と推薦理由

組織基盤強化テーマ 子どもや親の専門的な支援力向上のためのスタッフのスキルアップ
団体名 一般社団法人三陸駒舎
主な活動地域 岩手県 釜石市
推薦理由  本団体は、被災地の子ども達を対象にホースセラピーを行い、2017年12月からは、児童発達支援・放課後等デイサービスの福祉事業所を開設し、障がいや発達に遅れのある子どもに特化した支援にも取り組んでいる。
東日本大震災によって地域に元々あった支え合いの機能が低下し、学校などへの不適応を抱えた子ども達が顕在化し、現在もトラウマ反応を示す子どもも少なくない中、発達に特性がある子どもとその親に対して支援を強化し、より質の高いケアの提供が必要とされている。
今回の組織基盤強化では、研修等を通してスタッフの子ども支援、親支援に関する専門的なスキルアップに取り組む。また、地域の支援機関への助言や指導、援助など中間的な支援機能も担える体勢を構築し、地域全体の支援力の向上を図る。
組織基盤強化を行うことで、地域に支援者の輪が広がり、困難を抱える子ども達やその親に対して、適切かつ効果的な支援が行われることを期待したい。

 

組織基盤強化テーマ 寄附型NPOとしての広報力強化による寄附拡大
団体名 認定特定非営利活動法人桜ライン311
主な活動地域 岩手県 陸前高田市
推薦理由  本団体は、東日本大震災で発生した津波の最高到達地点に桜を植樹し、津波の教訓を次世代に伝承する活動を行っている。また、学校での植樹会や講演活動を通じて、地域だけでなく全国に向けて震災で得た教訓や減災についての啓発活動に取り組んでいる。
これまで行政委託を受けずに活動を続け、2011年からの20年間で8億円の寄付募集を目標に掲げ、2020年6月時点で約3億円の寄付を集めているが、東日本大震災への社会的な関心が低下していることから、より緻密な活動戦略と人材の育成が課題となっている。
今回の基盤強化事業では、寄付の受け入れ態勢の強化や広報専任スタッフの育成に取り組み、植樹活動と組織運営に注力できる事務局体制を整える。
震災の記憶の風化が懸念される中、津波の教訓を後世に伝え継ぐ伝承活動は重要である。組織基盤強化に取り組むことで、寄付を中心として伝承活動を継続し、後世に教訓を受け継ぐことができる団体のモデルとなることを期待したい。

 

組織基盤強化テーマ 情報の集約発信力強化による市民活動支援力向上
団体名 一般社団法人気仙沼まちづくり支援センター
主な活動地域 宮城県 気仙沼市
推薦理由  本団体は、まちづくりの中間支援組織として、防災集団移転や災害公営住宅等においてコミュニティづくりを支援する団体に専門家を派遣したり、コミュニティ支援に取り組む団体の情報共有や活動の調整を行う「気仙沼NPO/NGO連絡会」の事務局を2011年6月から担っている。
これまで行政からの委託事業によって復興に係るまちづくり団体支援に注力してきたが、今後、復興関連の財源がますます減少していく中、まちづくり活動団体に対する支援を継続し、市民活動を持続的なものにするためにも、本団体の自主事業の開発が喫緊の課題となっている。
今回の組織基盤強化では、団体の中核となる自主事業を開発・実施できるようにすると共に、情報発信ツールの整備と運用オペレーションの確立に取り組む。
地域で活動するNPOが増える中、その活動を支える中間支援組織の重要性も増しており、本団体が組織基盤強化に取り組むことで、地域で活動するNPOの活動を継続して支え、その先にある受益者の生活の一助になることを期待したい。

 

組織基盤強化テーマ 地域の女性リーダー育成事業の新規創出に向け、組織力を向上させる
団体名 特定非営利活動法人石巻復興支援ネットワーク
主な活動地域 宮城県 石巻市
推薦理由  本団体は、被災した石巻市において、住民自らが主体的にまちづくりに参画できる地域づくりを目指し、「女性の活躍推進」「子育て支援」「復興支援」の3つの分野で、住民の学びや活躍の場と機会を提供するなどの活動を続けている。
中でも、「石巻圏域の仮設・復興住宅でのコミュニティ形成支援事業」や「育児中の母親と地域社会の絆をつなぐインターンシップ事業」などは本団体の代表的な事業となっている。
今回の組織基盤強化は、復興のフェーズの変化に合った組織運営をするために、今改めて①スタッフのエンパワーメント、②団体の活動や強みを活用した財源の強化に焦点を絞り、組織力を向上するための内容となっている。
コロナ禍の中、自主事業の柱の一つであった研修事業などの中止により、財政が圧迫された状況を打開するためにも、本団体が真剣に組織基盤強化に取り組むことを願い、助成することとなった。新たな事業が創出され、目的が遂行できる組織となることを期待したい。

 

組織基盤強化テーマ 「分かち合い」社会実現のための組織基盤強化プロジェクト
団体名 一般社団法人シャロームいしのまき
主な活動地域 宮城県 石巻市
推薦理由  本団体は、精神障がい等の当事者と家族・支援者を中心に、石巻に根ざして福祉事業所を運営する団体である。「弱さを絆に」「もう、ひとりぼっちにさせない」そして「障がいで町興し」をモットーに、震災により小さく・片隅に追いやられた人々や企業を地域社会の中心に据えた「分かち合い社会」の実現を目指して活動している。
活動の中でも、本団体が運営する福祉事業所(就労継続支援B型)と地元の水産加工会社が連携し、水産加工品の販売を更に充実させ、福祉事業所の利用者と被災企業の双方にメリットのある取り組みが評価された。
今回の組織基盤強化は、震災からの復興はもとより、コロナ禍による影響を回避するために、①地場産品の魅力の発信、②販路の拡大、③リピーターの獲得を目指した内容となっている。
オンライン販売などの工夫によって、全国的な販売への展開にもつながるノウハウを獲得することができれば、将来への投資にもなることから、その取り組みにも期待したい。

 

組織基盤強化テーマ ステップアップのための土台作り
団体名 特定非営利活動法人ベビースマイル石巻
主な活動地域 宮城県 石巻市
推薦理由  本団体は、子どもの笑顔いっぱいのまちづくりをミッションに震災直後に任意団体を立ち上げ、みんなで子育て支援事業を始め、妊娠期からの切れ目ない子育て支援としての居場所づくりや子育て相談などのプログラムを展開している団体である。
今回の組織基盤強化は、団体の立ち上げから10年を目前に控え、今一度、団体の取り組みを振り返り、ミッションや人材と財源のあり方を再確認するために、①ビジョンミッションの見直しと中期計画づくり、②理事やスタッフへの研修と協議に重点を置いた内容となっている。
寄付や助成金を中心に事業を進めてきた団体が、いつしか行政からの委託事業が中心になっていたことに気づき、改めて団体の原点に戻り、組織のあり方を確認し、今後の歩む道を模索する姿勢に共感した。自らの想いで立ち上げた団体が、地域から無くてはならないと思われる団体になることを期待したい。