●福島県会津若松地域で、不登校・引きこもり・ニートと呼ばれる若者の居場所づくりを通じて子ども支援に取り組んできた寺子屋方丈舎。震災後に始めた「被災した子どもと遊ぶプロジェクト」について理事長の江川(えがわ)さんにお話を伺った。【助成金額100万円】
聞き手:このプロジェクトを始めたきっかけは何ですか?
江川:震災直後、最大時には1万人にも上る多くの避難者がこの会津若松地域に来る中で、避難所にいる子どもたちは元気を失っていました。放射線量の心配があり、外で遊べない。避難所の中で動き回ると大人に叱られる。その結果、行動や感情を制限されストレスがたまる。ストレス発散には遊びしかないと考え、子どもととにかく遊ぶ機会を作りました。言ってみれば、子どもの居場所づくりですね。
聞き手:具体的にはどんな遊びですか?
江川:外でも中でも動き回れない中、おもちゃを持ち込んで遊びました。その中でもボードゲームが大活躍。ルールの説明や対戦相手が必要なため、コミュニケーションが自然と生まれストレス発散になりますし、ボランティアも入りやすかったですね。ただ一番大切なのは、子どもに寄り添うこと。それが子どもにとって一番の安心になりますから。即効性はない活動ですが、絶叫し暴れる子どもやスキンシップを求める子どもは減りました。
聞き手:基金はどのように使われたのですか?
江川:避難所や仮設住宅が増え、活動する上でスタッフと移動手段の確保が必要となりました。移動は車を使うしかなかったので、レンタカー代に活用しました。あとはこの仕組みを回す中で有給スタッフになった方への人件費として使いました。その結果、のべ2千人を超える子どもに寄り添えたことは、我々の存在意義だと自負していますし、震災前から長年培ってきた居場所づくりの経験やボランティアを動かすノウハウが活かされたと感じています。
聞き手:今後の課題は何でしょう?
江川:まず、県外避難者に対する支援の必要性を感じています。県外避難者と県内の方を繋げ、コミュニティを構築する。これには全国のNPOとネットワークを組み、協力してもらわないとできません。
次に、我々自身が活動を続ける上で、自立の構造が大切です。自分たちで資金を作り雇用を生む仕組みを作らなければ、被災者は仕事がないままですし、活動も持続できませんから。
あとは、現在、仮設住宅で生活している方たちが、地元の沿岸地域に戻れないことを自覚しながら、今の仮設住宅でどうコミュニティを作り、さらにこの会津若松地域へどう溶け込んでいくか。この課題に取り組まなければなりません。その時、活動の軸になるのはやはり「子ども」です。自分たちの得意な分野である子どもを切り口に、コミュニティづくりもやっていくつもりです。
2011年10月27日(@福島県会津若松市)
取材者:岡本泰志