●被災した障がい者世帯を見つけ出し、安否確認を行うとともに、福祉機器の提供やヘルパー派遣、病院の送迎サービスなどを行う「被災地障がい者センターいわて」。事務局長の八幡隆司さんに伺った。【助成金額198万円】
聞き手:この半年の支援活動を振り返っていかがですか?
八幡:障がい者と高齢者、実数にして約160件の個人支援を行ってきました。事務所スタッフは7名です。現在は地元スタッフ4名。県外のスタッフ3名は、沖縄、千葉、神戸からの福祉サービス経験者です。今回、応援基金の助成は遠野につくった拠点の職員人件費と事務所の家賃につかいました。
聞き手:どうして遠野に事務所を?
八幡:遠野への設置は立地条件の良さからなんです。盛岡から陸前高田まで車で移動するのに通常は2時間半~3時間。その距離と時間を半分にできる好立地。そこに1週間2交代制でスタッフに入ってもらい活動してきました。その拠点を9月から大船渡に移したところです。この冬を見据えた早めの対策です。
聞き手:支援活動を通じて何か気づかれたことはありますか?
八幡:この地域の障がい者は入所施設の利用が中心で「通所」という選択肢がないんです。沿岸部には家事援助やガイドヘルパーを利用して買い物をするといった福祉状況もない。もし障がいのある子供の世話を自宅でするなら「親が頑張るしかない」と考えてしまう。そういう人々に時間をかけてじっくり話をきいて、やっと本音(ニーズ)が出てきます。
聞き手:具体的にはどんなことですか?
八幡:例えば、障がい者なら、家のガレキの片づけもゆっくりやりたい訳です。1~2カ月はかけて。どこに、何があるかを確認しながら。でも、人の手を借りる場合はテキパキと片づけて下さる。そういう難しさがあります。ですから福祉サービスを提供しながら話を聞くことがとても重要だと再認識しました。また、仮設が出来ても、移り住んだ障がい者は意外に少なく、市内にアパートを借りて住んでいる方が多くいるようなんです。その辺の状況把握が今後の課題でもあります。潜在化しているニーズは相当高いだろうと言えます。
聞き手:今後の活動計画はいかがですか?
八幡:在宅の障がい者も気軽に入れるお風呂の拠点を沿岸部に作っていきたいですね。身障者の入浴サービスは高齢者向けサービス施設に回されてしまうので。ただ、今は、行政や地元の人の動きを見極めるためにちょっと待つべき時期だとも考えています。また、このプログラムは、2~3年で済むものではなく、少なくとも5年はかかると見ています。
聞き手:そのために必要なものは何ですか?
八幡:支援としてはガソリン代と人件費。それから人材の育成も必要です。そのためにも、今回のような「顔の見える形」で受けられる助成はとてもありがたいです。それもできるだけ長期間だと嬉しいですね。私たちも歳月をかけて地元行政の「信頼」を得ていくつもりです。障害者を支援するには、障害者を取りかこむ「地域コミュニティ」を作らないといけませんから。
2011年9月27日(@岩手県盛岡市)
取材者:福田春樹