信頼されるNPOの7つの条件

7 Necessary Conditions for Reliable NPOs

はじめに

※2003年当時の議論を大切にするために、当時のまま掲載しています。

特定非営利活動促進法(NPO法)が施行されて、2003年12月1日で5年になりました。この間、約14000の特定非営利活動法人(NPO法人)が誕生し、その設立傾向はさらに活発になりつつあります。このことは、NPOという考えが日本社会に着実に受け入れられつつある証拠と考えることもできます。しかし一方では、法律制定に向けて抱いたNPOへの熱い思いが、少しずつ忘れられてきているようにも感じられます。なかには、どう見てもNPOらしくないNPOも登場しつつあります。
今問われているのは、「NPOらしいNPO」とは何か、ということではないでしょうか。それをここでは「信頼されるNPO」として考えることにしました。NPOは、まずそのサービスの受益者から信頼されなければなりません。同時に、そのNPOを応援する支援者からの信頼も欠かせません。さらにそれらを含む社会全体からの信頼が必要です。そのような三者の信頼を得たとき、それが「NPOらしいNPO」なのだと言えるのではないでしょうか。
私たち各地のNPO支援センターの現場を預かるものたちが、そのような「信頼されるNPO」の条件について考えたのが、以下の7項目です。
これらの各項目は、「理想のNPO」を語ったものではありません。NPOならせめてこうあって欲しいという、標準的な水準を描いたものです。数値目標の設定も議論しましたが、今回は入れないことにしました。次の段階では、ぜひ考えてみたいと思っています。
なお、ここでいうNPOは、NPO法人を主な対象としながらも、それ以外のさまざまな組織形態の市民活動団体を対象として想定しています。

信頼されるNPOの7つの条件

明確なミッションを持って、継続的な事業展開をしていること

NPOが目指す活動の目的を、わかりやすい言葉によって明らかにしていることが大切です。それは、その活動によってどんな社会的な変化をもたらそうとしているのかなど、出来るだけ具体的に明文化していることが必要です。さらに、活動目的に添った事業を適切に行っていることが、重要なポイントになります。また、その事業によって、質の良いサービスを安定的・継続的に提供していることも望まれます。そのためには、事業を実施するための中・長期的な事業計画を持ち、それを客観的に評価しつつ、タイムリーな見直しをしていくことも重要でしょう。

特定の経営資源のみに依存せず、財政面で自立していること

NPOの経営は「人・もの・金・情報」など、多様な経営資源によって進められます。NPOは市民の自発性を大切にして発足をしていますので、できるだけ自由度の高い自立した経営が求められます。そのため、特に財政面では、特定の経営資源のみに依存せず、会費や寄付金収入、自主事業収入などの安定した財源と、受託事業収入や補助金・助成金収入などの一時的ではあるがまとまりのある財源とのバランスを考えることが大切です。とりわけ昨今の「協働」の名のもとで増加する行政などからの委託事業に関しては、設立目的との整合性の検討や提示された条件について交渉していける力量が重要です。

事業計画・予算の意思決定において自律性を堅持していること

市民の自発性に基礎を置くNPOとしては、その原点を危うくしないように、特定の個人や組織(行政、企業、宗教団体、政党等)の意向にコントロールされることなく、独立して事業計画や予算を決められるかどうかが重要なポイントとなります。また、対外的な独立性だけではなく、運営の仕組みとしても、理事会や総会がある程度の頻度・出席率で定期的に開かれているといった、団体としての自律したガバナンスも機能していることが重要でしょう。

事業報告・会計報告などの情報を積極的に公開していること

会員や寄付などのいろいろな形でサポートしている人たちからだけでなく、ひろく社会の人々に理解してもらい、活動の意義に共感し支持・参加してもらうためには、何を目的に、どのような活動を行っているのか、その成果はどういうものだったのか、という事業の報告と、収支や資産等の会計の報告が大切です。そして、ホームページや機関紙などの自らの発信ツールを用いて、組織情報を含め、それらを解りやすく積極的に公開することが求められます。NPO法人は、年度終了後3ヶ月以内に所轄庁に事業報告書や決算書を提出し、一般の閲覧に供することが義務づけられていますが、この最低限度の法的義務にとどまらず、より積極的に情報を公開することが望まれます。

組織が市民に開かれており、その支持と参加を集めていること

市民が自発的に社会問題の解決に取り組む手段としてのNPOの運営にあたっては、その意思決定と事業推進において、広く市民が参加しやすいシステムを整備することが大切です。これは、対価を求めずに組織に関わる会員やボランティアの拡大、参加に関する明文規定の整備、会員・ボランティアの参加を進めるスタッフの確保、企画段階からの参加の機会の保障、意思決定の経過報告や事業成果の公開による組織の透明化などによって実現されます。こうした努力は、市民の共感と支持を基盤とした組織づくりを進めることでもありますが、その結果、会費や寄付金などの共感に基づく収入の拡大が期待され、財政的にも市民参加型の組織化が進められることとなるでしょう。

最低限の事務局体制が整備されていること

事務局体制には、それぞれの組織の事業内容や事業規模により違いはありますが、社会的な事業を行っているNPOとしては、常勤スタッフの有無にかかわらず、外部からの連絡がいつでもきちんととれる体制の整備が必要です。さらに、その担当者が頻繁に変わることなく、継続的・安定的に仕事をしていることも重要です。また、組織として事業を実施している限り、情報が個人にのみ所有されることのないように、組織内部で情報を共有するための連絡調整の仕組みをつくることや、担当する業務の範囲や責任の所在を明確にしておくことも重要です。物事を進めていく上での決裁の仕組みや権限の所在についても、内部で取り決めておくことが大切でしょう。

新しい仕組みや社会的な価値を生み出すメッセージを発信していること

必ずしもすべてのNPOが社会変革を目指すべきであると言うわけではありませんが、多くのNPOは、どこか社会に問題があると気づくところからスタートしていると思います。しかし日常的な事業の推進に追われるうちに、いつしか当初の問題意識を忘れてしまうことも少なくありません。NPOである限りは、当初の問題意識を忘れることなく、常に社会に目を開き、よりよい社会づくりのために何が必要か、自分たちには何ができるのか、新しい仕組みや社会的な価値の創造について思いを巡らし続けたいと思います。そして大切なことは、それをタイミングよくメッセージとして社会に発信していくことです。このようなメッセージの積み重ねが、そのNPOの大きな信頼につながるはずです。

おわりに

この7つの条件は、各地のNPO支援センターの現場の責任者が、2003年9月に札幌市内に集まり、NPO全国フォーラム開催の前日から当日の午前にかけて「民間NPO支援センター・将来を展望する会」を開催、議論を重ね、その後さらに起草委員会でその結果を整理しなおし、最終的に日本NPOセンターにおいて取りまとめたものです。多くのNPOで、自らのありようを議論するためのたたき台となることを期待しています。
なお、作成に参加した者は別表の通りです。

杉山 さかえ(特定非営利活動法人 北海道NPOサポートセンター/理事長)
中村 年春(特定非営利活動法人 NPO推進青森会議/理事長)
三上 亨(特定非営利活動法人 NPO推進青森会議/事務局長)
紅邑 晶子*(特定非営利活動法人せんだい・みやぎNPOセンター/常務理事・事務局長)
横田 能洋(特定非営利活動法人 茨城NPOセンター・コモンズ/常務理事・事務局長)
越河 澄子(特定非営利活動法人 さいたまNPOセンター/副代表理事)
西川 正(特定非営利活動法人 さいたまNPOセンター/理事・事務局長)
安藤 雄太(東京ボランティア・市民活動センター/副所長)
田中 尚輝(特定非営利活動法人 市民福祉団体全国協議会/理事・事務局長)
山岡 義典*(特定非営利活動法人 日本NPOセンター/常務理事)
田尻 佳史*(特定非営利活動法人 日本NPOセンター/事務局長)
秋山 三枝子(特定非営利活動法人 くびき野NPOサポートセンター/理事・事務局長)
市來 圭(特定非営利活動法人 ぎふNPOセンター/理事・事務局長)
磯崎 剛(特定非営利活動法人 しずおかNPOセンター/理事・事務局長)
後 房雄*(特定非営利活動法人 市民フォーラム21・NPOセンター/代表理事)
天川 隆男(財団法人 淡海ネットワークセンター)
川尻 良治(財団法人 淡海ネットワークセンター)
服部 則仁(みえきた市民活動センター/理事)
早瀬 昇*(社会福祉法人 大阪ボランティア協会/理事・事務局長)
今瀬 政司(特定非営利活動法人 市民活動情報センター/代表理事)
実吉 威*(特定非営利活動法人 市民活動センター神戸/専務理事・事務局長)
安藤 周治*(特定非営利活動法人 ひろしまNPOセンター/代表理事)
中村 隆行(特定非営利活動法人 ひろしまNPOセンター/常務理事・事務局長)
船﨑 美智子(やまぐち県民活動支援センター/センター長)
菊池 修(特定非営利活動法人 えひめNPOセンター/代表理事)
半田 雅典(高知県ボランティア・NPOセンター/主任)
内田 洋子(特定非営利活動法人 NPO高知市民会議/事務局長)
古賀 桃子(特定非営利活動法人 ふくおかNPOセンター/代表)
加留部 貴行(福岡市 NPO・ボランティア支援課/専門員)
上土井 章仁*(特定非営利活動法人 NPOくまもと/代表理事)
<別表> 「信頼されるNPOの7つの条件」作成参加者氏名(所属・役職は2004年2月当時)
(*は起草委員)
※北から都道府県順

※この文章の一部掲載、省略、追加を固くお断りします。
※また、許可のない全文転載も固くお断りします。
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