特定非営利活動法人 iさいと

特定非営利活動法人iさいと(以下、あいさいと)の事務局長をしています、古賀和子と申します。私たちの団体では、組織基盤強化ということでは取り組んでいませんが、普段の活動のご紹介、そして組織が抱える強みや課題をお話したいと思います。

私たちの団体は、「古代から脈々と歴史を重ねてきた西都原を基点に、市民が共同参画できる協働体(コラボレーション)を構築し、個性豊かで自立した、元気で明るく楽しい宮崎の実現を目指し宮崎の活性化に寄与することをミッションに掲げて活動をしています。

事業としては、宮崎県からの委託で行っている、宮崎県立西都原考古博物館の運営支援業務をメインに、NPO支援のためのコーディネートや、まちづくり活動で文化的なイベント、主に講演会やコンサートを開催したりしています。また、市民活動のお手伝いということで事務局を請け負ったりもしています。各事業を少しだけご紹介いたします。

西都市に広がる西都原古墳群、その場を活用し様々な事業を行っています。古代住居の復元ということで、竪穴住居の復元プロジェクトを地元の方々のご協力のもと行ったり、博物館と連携して古代生活体験事業を行っています。

また、日産と博報堂、NPO事業サポートセンターと協働で日産リーフのワークショップの開催も行いました。そのほか、東日本大震災の支援や、地域活性化・文化再興プロジェクトとして滝行の復活など様々な活動を行っています。滝行にご興味ある方、募集しておりますので是非ご参加下さい。

事業高の推移ですが、雇用対策事業などを行っているときは事業高も多く、雇用数も増えています。現在は、博物館の委託事業がメインとなっています。収入割合ですが、自主事業が30%、これは博物館の中にあるミュージアムショップの売り上げです。そして、委託・補助事業が65%、会費・寄附金その他が5%となっています。

あいさいとの運営の特徴をご説明します。通常、博物館や美術館などの公共施設のボランティアマネジメントは直接、館が行います。しかし、開館当初からNPOが間に入り、行政、NPO、ボランティアの3者協働での運営をしているのが特徴です。また、NPOの役割として専門的で難しい考古学の博物館を、いかに一般の方に知ってもらい、楽しんでもらうか、企画の部分も担っています。

この運営体制の中で、①NPO職員の立ち位置の難しさ②ボランティアさんのモチベーションづくり③館との連携、役割分担などの課題があり、いかに一緒に作り上げていき成果を出すか、ということに力を注いでいます。

組織運営でも、理事会と事務局のコミュニケーションを重視しており、事務局内でもこまめにミーティングを行っています。

継続的な活動、そしてこれからもっとステップアップしていくために、

1.理事をもっと巻き込んでいく

2.事業を企画し、実践していく人材の育成

3.安定的な組織運営を行うための自主事業を実践

4.全体をマネジメントする事務局の機能強化

5.スタッフ、理事相互のコミュニケーションの場を増やす

など、課題は多いですが一つ一つ一歩一歩前へ進んでいきたいと思います。

特定非営利活動法人 環境ネットワークくまもと

環境ネットワークくまもとは、「私たちの命を育む環境を次世代へ引き継いでいくため、それぞれの独自性を尊重しながら、個人や各グループの情報を共有・公開し、環境保全意識の拡大と環境保護運動への参加を図る」ということを目標に、1994年に発足しました。

活動の柱としては、①環境保護に取り組む個人・団体のネットワーク構築②市民への環境問題の啓発活動③行政・企業・NGOのパートナーシップコーディネートがあります。

発足当初は35団体150名で任意団体でのスタートでしたが、熊本を中心に多くの環境保全・普及啓発活動を行ってまいりました。

2008年には法人格を取得しましたが、設立から20年が経過した2014年には様々な組織課題に直面していました。

もともと「政策提案型組織」として長く活動をしてきましたが、組織の持続可能性の観点から「事業型NPO」として、経営のノウハウを取得する必要性が生まれ財源安定化のために事業立案が急務となりました。

そのためにはまず、「初期メンバー、理事、職員のビジョン共有」が必要な状況であり、「事業の役割分担や責任体制」も見直す必要がありました。

こうした組織の基盤とも言えるガバナンス構築やマネジメントを強化していくことが求められました。

こうして私たちのキャパシティビルディングへの挑戦が始まりました。

まず、組織基盤強化を行っていく上での目標を設定します。1年目は外部コンサルタントによる組織診断。そして、活動の進捗状況確認と将来像の共有を理事とスタッフで行っていくことを決めました。2年目には、外とのネットワークを強化することとビジネスモデルスキームの確立を目標としました。

まず、今後の目標の設定と法人経営の骨子となる事業執行体制づくりを行うため、SWOT分析や事業化基礎診断、ビジネスモデル診断、ビジネス化指標診断を実施。そして、役割分担や責任体制を明確化するため、総会・理事会・戦略会議・定例会議を定期的に行うことで、年間計画や事業方向性の共有、具体的な事業戦略、日常的な業務の進捗報告での確認作業など非常に具体的に自分たちの活動を見直していきました。

そして共有ビジョンとして「持続可能な地域づくりをプロデュース」していくことで方針が決定しました。

2年目にはビジネスモデルを形成するため、専門家とのネットワーク構築、先進事例のヒアリング、事業ブランティングを実施。「かんくまおひさまファンド」の事業化を図りました。

様々な動きの中で、国の制度をタイムリーに活用し、事業性を高め、かつ組織運営を支える資金を生み出すプロジェクトにすることができました。

組織診断を通じて、かんくまに関わる人々が改めて自分たちが行う活動を見直し、そしてそれが地域で生きる人のために役立つことなんだと気づくことが出来ました。

終わりに、私たちひとり一人が、ローカルな地域の課題にしっかりと目を向け「共に学び・気づき・育ち・変わる」中から、地域の風土・歴史・文化に根ざした地域固有の解決策を見出し、それを広くグローバルに共有することが、ひとつ一つの、ひとり一人の命の尊厳が保たれる社会の実現につながると確信します。

特定非営利活動法人 みやっこベース

-東日本大震災のボランティアコーディネートからはじまった-

私は福岡県の北九州市出身ですが、東日本大震災以降は岩手県宮古市の災害ボランティアセンターにて活動するようになり子ども支援、学習支援、学生ボランティアコーディネートの活動をしてきました。そうした繋がりから現在に至るユースみやっこベースの活動設立になりました。復興が長期化する中で、学生自身も活躍の場を模索し、「何かやりたい」という思いの方が多くいると聞いたので、場作りが必要と感じました。ビジョンには「若者が主体的に社会参画することができるまち」と掲げ、ミッションとして「主体的に社会参画する若者を育成、若者が参画できる社会環境の整備」を掲げております。

事業は大きく4つあり、「活動機会創出」、「社会活動支援」、「キャリア形成支援・Uターン環境整備」、「社会環境整備」と分けています。設立の時から毎月一回行っている「高校生サミット」は、みんなで話し合いながら自分たちが何をやっていく必要があるかアイディアを出し、それを実際のアクションに繋げています。これまで39回毎月行っています。「あうぇーこなび」という地元商店街のマップもこの中で誕生しました。

-高校生を支える多様な大人が関わることで、活動を実践してきた-

これらの活動を、「常勤一人、非常勤一人の2名体制」で実施しておりますが、これはひとえに多くの会員やサポーターに支えられてこそ実現しています。僕はよそ者だったのでいずれはいなくなる、でもこの活動は継続的に必要だという認識があり、そのために組織を持続可能にする「組織基盤強化」という点は、メンバーの中で設立当初から重視していました。メンバー集めは、これまで活動を通じ出会ってきた人たちへ「何のために、何をやろうとしているのか」コツコツと伝えてきました。高校生サミットを見に来てもらい、逆に大人が刺激を受けて少しずつ集まるようになりました。活動をどんどん開いていくことで、大人にも当事者意識がうまれたのかな、と思います。大人と高校生、それぞれ違った立場で異なる価値観を持ち、その場に自分なりの役割を見出していったと思います。

その中で活動のビジョン・ミッションを皆で作っていこうと提案しました。人材育成を掲げながら教育の専門家がいるわけではありませんが、だからこそみんなで考える土壌ができたと思います。人がどんどん集まることで、高校生が企画実行する一つのプロジェクトに一人の大人がつくというメンター制であったり、印刷業を営む理事が本業を活かしてかかわってくれたりするようになりました。これにより高校生も宮古の職業に興味を持てるようになった、という効果もありました。経営においては、こうした多様な大人が貴重な人材資源を担っていると思います。それぞれがそれぞれの視点で関わりながら、組織基盤強化をしていこうと思いますし、それが波及して街全体で若者の活動を応援する気運が高まっていると思います。

認定特定非営利活動法人 みやぎ発達障害サポートネット

-転機。組織基盤強化の必要性を実感-
私たちは発達障害のある人とその家族が、人格の尊厳を保って、安心して暮らせる社会づくりに貢献するという事をミッションに活動しているNPOです。自分を語れる当事者、発達障害を理解する市民、アドボカシーできる職員の三者がお互いに育って理解を深めることを願って子供支援事業、保護者等支援事業の二つを実施しています。2011年、当団体を取り巻く環境が大きく変化しました。東日本大震災、理事長の急逝、6名中3名の新理事という体制変化、NPO初心者にして私が代表理事に就任、銀行からの融資。活動すら危ぶまれる状況となり、組織の問題点が見えてきました。その背景には「情報共有」、「役割分担」、「当事者意識」といった課題があり、そこでパナソニックサポートファンドを活用しようと考えました。

-助成3年目のいま、振り返る。組織診断、中期計画、アクションプラン-
1年目は、組織診断です。まずは「うちのミッション言える?」から始まりました。その組織診断結果から中期計画策定を最優先目標課題と考え取り掛かりました。これを通じ3年間の中期計画が出来あがり、あわせて計画の実現に向けたアクションプラン策定にも取り掛かりました。1年目の成果は、「中期計画を策定出来た」、「策定を通じ全職員で意識共有出来た」、「個の業務から組織全体を見る」という点です。第三者の視点を入れながら中期計画が出来た事で、法人の歩む方向が内部でも見えやすくなり、スタッフの疲弊感や徒労感も解消されましたし、対外的にも活動や展望を発信しやすい状況がうまれました。
2年目は、中堅職員育成と活動拠点の確保にも取り組みました。そこで目標に向かって必要と感じたアクションプランを作成して取り組みました。「自分たちのためでなく、活動の先にある「人」の事を考えて行動する」。これは全職員1日集中型研修というのを行いましたその時のある職員の言葉です。1年目から更にアップしたモチベーションは、組織運営の力強い下支えになりました。売上高が伸び悩んだ大変な時にも、どんな風にやろうかと職員全員で話し合いました。これまでは一つ課題が起きると「どうしよう(でもまあいいか)」というのが真っ先に出て来たのですが、こんな風に話し合って解決していける力が増えているのを強く感じました。
2年間の成果は、1点目は中期計画、アクションプランができ、見通しのある運営ができること。2点目は利用者増が運営の安定に繋がる、という点ですし、これらを考える上でやはり大切なのは人材、人だなと痛感しました。実は助成を受ける前までは、「収入の安定が経営の安定」と思っていたのですが、そうではないなく、やはり人材こそ経営の安定にして組織基盤強化の肝だと強く感じたことも大きな成果だったと思っています。そして今後の組織基盤強化とは、中期計画と行アクションプランの実施・継続にあると考えています。
現在助成3年目となり、中期計画は2年目です。来年サポートファンドの報告が出来る頃には、新しいことが進んでいますというお話が出来るように頑張っていきたいと思いますし、ぜひ皆様の応援をよろしくお願いいたします。