特例認定特定非営利活動法人グローカル人材開発センター 行元 沙弥さん

バックキャスティングと安心安全に話し合える土壌づくり

グローカル人材開発センターは2013年から、学生と企業人がフランクに普段の姿で出会える場を創出している団体です。現在の変化が激しい時代、国際的な情勢の変化がすぐに日本の地域にも影響を及ぼします。グローカル人材開発センターという名称には、国際的な視野を持ちながらローカルできちんと自立した個人が活躍していく社会を作っていこうという思いを込めています。

グローカル人材開発センターは、就職や雇用のミスマッチから起こる自殺などの社会問題に対して、産学公民の連携の中で日々活動を行っています。働くにまつわる問題に対して個々で悩んだり考えたりするのではなく、今起こっている社会課題に対して一緒に考え、一緒にビジョンをすり合わせてアプローチしていくPBL(project based learning)を切り口に、課題を見つけて解決する授業を展開しています。

企業からテーマをもらい、学びの中で働くということを考え、社会を知っていくことで、自然に学生は視野を広げていきます。

設立当初の資金源は、文部科学省大学間連携事業の5ヶ年の補助金でした。2017年2月で補助金受託期間が終了したので、これから全てを自分たちでデザイン・アレンジしていくというフェーズに入っています。

2017年1月、これまでの5年間の成果の報告と研修の場がありました。その場で、スタッフ間の理念の共有が、全然できていないということに気づかされました。目の前の仕事に追われて、方向性はきちんと合っているのか、本当に受益者のことを考えられているのかなど、話し合う場を持つことができていませんでした。

研修の場で行ったバックキャスティングの作業の中から、ビジョンを描くために今の資源でいいのか、今の活動でいいのかということを考えていくと、今までの景色からすごく変わっていきました。一番の気づきは、スタッフ自身の背中で「幸せに働いていける」姿をきちんと見せていかないと、活動自体が全部崩れてしまうということです。そのためにも、まずはスタッフのやりたいことも組み込みながら事業も進めていきたいと思っています。

私たちが考える組織基盤の一番は「人」です。いろいろな状況の中、人と人が対話をして様々な課題を本音で話せる場を作ることによってきちんと軌道修正ができます。それが「グローカル」の中でできたときに、学生や周りで関わって下さっている企業の社内風土も変わってくると思っています。リアルとバーチャルの時代に入っていますが、リアルでしかできない場づくり、本音で話し合うこと、良い変更はどんどん取り入れること、予定調無し、これが一番の安定的なレジリエンスに繋がっていくと思っています。

特定非営利活動法人こまちぷらす 副代表 北本若葉さん

NPO法人こまちぷらすは、子育てで孤立することなく、子どもの誕生が歓迎される社会をつくることを目指して、「こまちカフェ」の運営(居場所事業)や、子育てに関する情報発信を行っています。

団体は、2012年2月に現代表を含む友人5人で、週1日のカフェ営業からスタートしました。1年後には、常設店舗を毎日営業するとともに、区役所内での子育て応援ルームの運営と事業が展開していきました。

私が仲間に加わったのは2013年6月、まさに運営や活動も慌ただしいときでした。二つの拠点を行き来する代表とスタッフが、顔を合わせる時間もなかなか取れない。やる気のあるスタッフが集まり、頑張っているけれども、なんだかうまくいっていないという雰囲気が漂っていました。

なぜ、このような事態になってしまったのか。スタッフの話を聞いていて分かったのは、目指す方向は見えていたものの、一人ひとり大事にしているポイントが異なり、それをすり合わせる時間がなかったために、徐々にズレが大きくなっていったということでした。

そこで、まず取り組んだのは、原点に戻るということ。こまちぷらすは、何を目指しているのか。代表と理事で問い直し、確認したうえで、私たちが提供しているサービスはどのような意味を持ち、そのために組織としてどうすることが望ましいのかという視点で、活動を見直していきました。

組織が空中分解しかけたことで気づいたのは「組織は『人』ありき」ということ。これをきっかけに、新メンバーが加わる際には個別面談を必ずして、一人ひとりの想いやスキルと団体が必要としている力をマッチングさせるようになりました。

また、理念を共有するために、月1回のスタッフミーティングも始めました。その中で新たに気づいたのは、大事なのは「伝える」ことではなく、「伝わる」ということ。理念の共有が大事との思いから何度も会議の場で、口頭で伝えていたところ、「理念が分かっていないと思われているのか」とメンバーから反感を買ってしまう、ということがありました。そこで、考えた末に、理念共有に向けた工夫の1つとして始めたのがムービーの導入です。

ムービーの作成によって、メンバー内にとどまらず、ボランティアやお客様、行政や地域のキーマンにも団体を理解してもらえるようになり、結果として、人のつながりが広がり、事業の発展につながっていきました。

このほかの取組みについては、セミナーや書籍でもご紹介しています。また、ぜひカフェに来ていただき、スタッフにも話を聞いていただけると嬉しいです。

認定特定非営利活動法人環境の杜こうち 事務局長 石川貴洋 さん

とあるNPOの組織基盤強化に七転八倒する現在進行形のおはなし

環境の杜こうちは2005年、NPO法人として設立した会員100名弱の団体です。高知県の環境NPOに特化した中間支援組織で、県の呼びかけから県との「協働型事業」の受け皿として設立した経緯があります。当初は官民(県と環境の杜こうち)協働の取り組みとして、受託事業ではあっても法人のやりたい事業を随意契約で行っていたので、「組織基盤強化」を考えなくてもよい状態でした。

しかし、3年で法人としての自立を促すという県の意向によって当初の協働型から、一般的な委託受託の関係となりました。徐々に、会員の事業参画の形骸化や参加意欲の減衰が見られるようになっていきます。また、委託事業の減額や競争によって経営基盤が縮小、不安定となるなど、「組織基盤強化」を否が応にも考えなくてはいけない環境になりました。

2014年度に「環境の杜こうち・10年ビジョン」を策定したものの、実行に移されることがないまま、2016年度には基幹事業(委託事業)を他に取られてしまい組織存亡の危機に直面しました。人件費や運営費の削減、借入や賞与の期末払いなどの運転資金の確保の取り組み、新たな委託事業の獲得(仕事獲得の意識改革)、助成金の獲得、新規自主事業の実施など、様々な手を打つことで危機を乗り切りました。この時期の新規自主事業で企業や団体と関係性が構築されたことが、現在の大きな財産になっています。

そして2017年度から基幹事業の再受託に成功します。経営的には一安心でも、依然課題は未解決のままです。今後同じ轍を踏まないためにも、危機感を失わず、策定した10年ビジョンを実行に移せるかがポイントとなります。当法人の場合は議論よりも、「実行」こそが組織基盤をつくるのかもしれません。

特定非営利活動法人 NPO砂浜美術館 理事長 村上 健太郎さん

NPO砂浜美術館は1989年に任意団体として発足し、高知県黒潮町でTシャツアート展やホエールウォッチングなどを手掛けています。2003年に法人化した際には、行政主導で、観光協会など4つの団体が「観光」を切り口にNPO砂浜美術館としてまとまることとなりました。それぞれの団体に歴史があり、個性もある中で、すぐにというよりは段階的に一つにまとまっていきました。行政との関係も法人化により対等なものへと移っていきます。

法人化に伴い事業ボリュームが増え、スタッフも増加。事業分野も多岐に渡り、スタッフ間でミッションの共有ができない状況となります。スタッフに子育て世代が増加してきたこともあり、将来設計の持てる賃金体系の確立など、しっかりとした組織基盤の必要性を意識するようになりました。

パナソニックのNPOサポートファンドは、事業への助成ではなく、組織基盤強化への助成だったので渡りに船のプログラムでした。組織基盤強化で最初に実施したことは、半年間にわたる役職員へのヒアリングによる課題の洗い出しとステークホルダー調査です。調査では町議会議員全員に話を聞くなど、相応の労力を要しましたが、意外な発見があり、とても重要なステップでした。

優先課題には、(1)地域への浸透不足、(2)財政構造の転換、(3)人材管理が挙げられました。プログラムのコンサルからは「(1)と(2)は車輪の両輪であるから一体的に取り組むように」とアドバイスがあり、この視点がとてもいいヒントになりました。課題解決に向けて、地域とのつながりの強化(スポーツ大会の開催や地域への経済的な還元など)や観光ネットワークの構築、賃金体系・財源構成の見直しなどに取り組み、組織改善を図ることができました。

このときの組織基盤強化プログラムを、法人の「事業」としてきちんと位置づけて行えたことが非常によかったと思っています。プログラムによって学んだ手法は、その後の課題解決にもつなげることができています。

特定非営利活動法人 九州環境サポートセンター 理事長 宮原美智子さん

~団体の戦略と課題を見つめて~

九州環境サポートセンターは、次世代へ豊かな環境を引き継いでいくため、九州において環境に関する市民団体・企業・行政・地域と、ゆるやかなネットワークを築くとともに、中間支援組織として市民の環境活動をサポートし、振興・創造することを目的に活動しています。

私たちは、2002年ボランティア団体として活動を始め、その中で中間支援組織の必要性を痛感し、2014年NPO法人として運営するようになりました。しかし、川北秀人氏の言葉で「社会を変えたいのか、社会に良さそうなことをしたいだけなのか」という言葉を聞いたとき、自分たちの団体が「社会に求められていることをやっているか」という疑問が出てきました。

そこで、組織の棚卸をやってみることにしました。まずは、団体の強みや弱みを出していきます。今後のビジョンやミッション、中期計画の甘さから、どこを目指しているか明確にみえない部分を見つめなおすことが大事だと気づき、5か年中長期計画をつくりました。

また、理事は環境分野に携わっている方のみだったのですが、多方面からの視点も大切と思い環境分野にこだわらず理事になっていだたくことにしました。理事変革をした中で、理事の役割が非常に大事だという気づきがありました。そこで理事との合宿も実施しました。合宿では、事務局体制が機能しているか、事務局職員が育つ場になっているかという課題も出てきました。

組織基盤の強化を見直すことで、「社会に求められていること」を常に念頭におき事業計画の見直しを図りつつ、理事や事務局が積極的に市民団体の現場訪問を行うことにして、全国のネットワーク形成を重点におくようになりました。

まだまだ組織基盤強化は始めたばかりです。今後は、組織診断を外部から受け、改めて組織基盤強化を図ってみたいと思いました。

特定非営利活動法人CAPセンター・JAPAN 重松和枝さん

~ネクストステージに漕ぎ出して~

CAPセンター・JAPANは、子どもの安心・自信・自由を行き渡らせることを目標として、いじめ・虐待・体罰など、さまざまな暴力から、子どもが自分の心とからだを守ることができるように、暴力防止予防教育プログラムを提供しています。

組織基盤強化を始めたきっかけは、2009年に大きな組織改編があったことです。会員数が減少する中、収入の安定など財政の不安定さの打開が必要だと考えました。そこで、パナソニックからNPOサポートファンドの助成を受け、組織診断を受けることで、なにが問題で課題がどんなものかきちんと診てもらおうということから始まりました。

理事・事務局の共通認識では、「お金がない」という表面的なことを課題と思っていました。しかし、自分たちだけでは見つけられなかった「本当の課題」が外部の方やコンサルタントのチカラを借りて自分たちで気づくことができ、組織として納得したうえで組織基盤強化に取り組むことができました。

中長期目標・計画の策定や社会発信力の強化、地域の活動拠点強化が必要と分かったので、内部、外部を含めたネクストステージ委員会を立ち上げ、目指す未来にむけて持続可能な組織の姿を探る作業を始めました。

これまでは根拠と目標をもたずに進んできた組織が、中期目標、行動方針、重点目標などを毎年の事業計画を設定することができました。

目指す組織の姿に向けて、次に何をすべきかを見出す作業がありました。私たちは何もできていないと思っていましたが、外部の方から「できていること」がたくさんあると教えていただき、認めてもらえたことで、組織基盤強化のモチベーションが高まり意欲的に取り組むことができました。改めて、自分たちの活動を振り返り、自己肯定感を持ちながら新しい一歩を踏み出すことができたことは良かったと思います。

組織基盤強化を進める上で苦労した点は、全国にいる会員と課題や目的を共有しモチベーションを維持する仕掛けづくりや、外部とつながり一緒に行動する関係づくりの構築、社会の動きからニーズ・課題を抽出して新規事業を生み出すことなどです。意外な発見は、夢を語ることがその夢を実現していく一歩になることが分かったことや、新しいことにチャレンジしてみようという意欲が高まったことです。

最終的に、寄附金の大幅アップにつなげることができました。組織基盤強化前と比べて、社会の出来事への情報発信の迅速化や常に「外からどう見えるのか」という視点を持って考え、常に実験と捉えて変化を恐れず、次への改善を行うことが習慣化できたことも団体にとって大きな資産となりました。

特定非営利活動法人 iさいと

特定非営利活動法人iさいと(以下、あいさいと)の事務局長をしています、古賀和子と申します。私たちの団体では、組織基盤強化ということでは取り組んでいませんが、普段の活動のご紹介、そして組織が抱える強みや課題をお話したいと思います。

私たちの団体は、「古代から脈々と歴史を重ねてきた西都原を基点に、市民が共同参画できる協働体(コラボレーション)を構築し、個性豊かで自立した、元気で明るく楽しい宮崎の実現を目指し宮崎の活性化に寄与することをミッションに掲げて活動をしています。

事業としては、宮崎県からの委託で行っている、宮崎県立西都原考古博物館の運営支援業務をメインに、NPO支援のためのコーディネートや、まちづくり活動で文化的なイベント、主に講演会やコンサートを開催したりしています。また、市民活動のお手伝いということで事務局を請け負ったりもしています。各事業を少しだけご紹介いたします。

西都市に広がる西都原古墳群、その場を活用し様々な事業を行っています。古代住居の復元ということで、竪穴住居の復元プロジェクトを地元の方々のご協力のもと行ったり、博物館と連携して古代生活体験事業を行っています。

また、日産と博報堂、NPO事業サポートセンターと協働で日産リーフのワークショップの開催も行いました。そのほか、東日本大震災の支援や、地域活性化・文化再興プロジェクトとして滝行の復活など様々な活動を行っています。滝行にご興味ある方、募集しておりますので是非ご参加下さい。

事業高の推移ですが、雇用対策事業などを行っているときは事業高も多く、雇用数も増えています。現在は、博物館の委託事業がメインとなっています。収入割合ですが、自主事業が30%、これは博物館の中にあるミュージアムショップの売り上げです。そして、委託・補助事業が65%、会費・寄附金その他が5%となっています。

あいさいとの運営の特徴をご説明します。通常、博物館や美術館などの公共施設のボランティアマネジメントは直接、館が行います。しかし、開館当初からNPOが間に入り、行政、NPO、ボランティアの3者協働での運営をしているのが特徴です。また、NPOの役割として専門的で難しい考古学の博物館を、いかに一般の方に知ってもらい、楽しんでもらうか、企画の部分も担っています。

この運営体制の中で、①NPO職員の立ち位置の難しさ②ボランティアさんのモチベーションづくり③館との連携、役割分担などの課題があり、いかに一緒に作り上げていき成果を出すか、ということに力を注いでいます。

組織運営でも、理事会と事務局のコミュニケーションを重視しており、事務局内でもこまめにミーティングを行っています。

継続的な活動、そしてこれからもっとステップアップしていくために、

1.理事をもっと巻き込んでいく

2.事業を企画し、実践していく人材の育成

3.安定的な組織運営を行うための自主事業を実践

4.全体をマネジメントする事務局の機能強化

5.スタッフ、理事相互のコミュニケーションの場を増やす

など、課題は多いですが一つ一つ一歩一歩前へ進んでいきたいと思います。

特定非営利活動法人 環境ネットワークくまもと

環境ネットワークくまもとは、「私たちの命を育む環境を次世代へ引き継いでいくため、それぞれの独自性を尊重しながら、個人や各グループの情報を共有・公開し、環境保全意識の拡大と環境保護運動への参加を図る」ということを目標に、1994年に発足しました。

活動の柱としては、①環境保護に取り組む個人・団体のネットワーク構築②市民への環境問題の啓発活動③行政・企業・NGOのパートナーシップコーディネートがあります。

発足当初は35団体150名で任意団体でのスタートでしたが、熊本を中心に多くの環境保全・普及啓発活動を行ってまいりました。

2008年には法人格を取得しましたが、設立から20年が経過した2014年には様々な組織課題に直面していました。

もともと「政策提案型組織」として長く活動をしてきましたが、組織の持続可能性の観点から「事業型NPO」として、経営のノウハウを取得する必要性が生まれ財源安定化のために事業立案が急務となりました。

そのためにはまず、「初期メンバー、理事、職員のビジョン共有」が必要な状況であり、「事業の役割分担や責任体制」も見直す必要がありました。

こうした組織の基盤とも言えるガバナンス構築やマネジメントを強化していくことが求められました。

こうして私たちのキャパシティビルディングへの挑戦が始まりました。

まず、組織基盤強化を行っていく上での目標を設定します。1年目は外部コンサルタントによる組織診断。そして、活動の進捗状況確認と将来像の共有を理事とスタッフで行っていくことを決めました。2年目には、外とのネットワークを強化することとビジネスモデルスキームの確立を目標としました。

まず、今後の目標の設定と法人経営の骨子となる事業執行体制づくりを行うため、SWOT分析や事業化基礎診断、ビジネスモデル診断、ビジネス化指標診断を実施。そして、役割分担や責任体制を明確化するため、総会・理事会・戦略会議・定例会議を定期的に行うことで、年間計画や事業方向性の共有、具体的な事業戦略、日常的な業務の進捗報告での確認作業など非常に具体的に自分たちの活動を見直していきました。

そして共有ビジョンとして「持続可能な地域づくりをプロデュース」していくことで方針が決定しました。

2年目にはビジネスモデルを形成するため、専門家とのネットワーク構築、先進事例のヒアリング、事業ブランティングを実施。「かんくまおひさまファンド」の事業化を図りました。

様々な動きの中で、国の制度をタイムリーに活用し、事業性を高め、かつ組織運営を支える資金を生み出すプロジェクトにすることができました。

組織診断を通じて、かんくまに関わる人々が改めて自分たちが行う活動を見直し、そしてそれが地域で生きる人のために役立つことなんだと気づくことが出来ました。

終わりに、私たちひとり一人が、ローカルな地域の課題にしっかりと目を向け「共に学び・気づき・育ち・変わる」中から、地域の風土・歴史・文化に根ざした地域固有の解決策を見出し、それを広くグローバルに共有することが、ひとつ一つの、ひとり一人の命の尊厳が保たれる社会の実現につながると確信します。

特定非営利活動法人 みやっこベース

-東日本大震災のボランティアコーディネートからはじまった-

私は福岡県の北九州市出身ですが、東日本大震災以降は岩手県宮古市の災害ボランティアセンターにて活動するようになり子ども支援、学習支援、学生ボランティアコーディネートの活動をしてきました。そうした繋がりから現在に至るユースみやっこベースの活動設立になりました。復興が長期化する中で、学生自身も活躍の場を模索し、「何かやりたい」という思いの方が多くいると聞いたので、場作りが必要と感じました。ビジョンには「若者が主体的に社会参画することができるまち」と掲げ、ミッションとして「主体的に社会参画する若者を育成、若者が参画できる社会環境の整備」を掲げております。

事業は大きく4つあり、「活動機会創出」、「社会活動支援」、「キャリア形成支援・Uターン環境整備」、「社会環境整備」と分けています。設立の時から毎月一回行っている「高校生サミット」は、みんなで話し合いながら自分たちが何をやっていく必要があるかアイディアを出し、それを実際のアクションに繋げています。これまで39回毎月行っています。「あうぇーこなび」という地元商店街のマップもこの中で誕生しました。

-高校生を支える多様な大人が関わることで、活動を実践してきた-

これらの活動を、「常勤一人、非常勤一人の2名体制」で実施しておりますが、これはひとえに多くの会員やサポーターに支えられてこそ実現しています。僕はよそ者だったのでいずれはいなくなる、でもこの活動は継続的に必要だという認識があり、そのために組織を持続可能にする「組織基盤強化」という点は、メンバーの中で設立当初から重視していました。メンバー集めは、これまで活動を通じ出会ってきた人たちへ「何のために、何をやろうとしているのか」コツコツと伝えてきました。高校生サミットを見に来てもらい、逆に大人が刺激を受けて少しずつ集まるようになりました。活動をどんどん開いていくことで、大人にも当事者意識がうまれたのかな、と思います。大人と高校生、それぞれ違った立場で異なる価値観を持ち、その場に自分なりの役割を見出していったと思います。

その中で活動のビジョン・ミッションを皆で作っていこうと提案しました。人材育成を掲げながら教育の専門家がいるわけではありませんが、だからこそみんなで考える土壌ができたと思います。人がどんどん集まることで、高校生が企画実行する一つのプロジェクトに一人の大人がつくというメンター制であったり、印刷業を営む理事が本業を活かしてかかわってくれたりするようになりました。これにより高校生も宮古の職業に興味を持てるようになった、という効果もありました。経営においては、こうした多様な大人が貴重な人材資源を担っていると思います。それぞれがそれぞれの視点で関わりながら、組織基盤強化をしていこうと思いますし、それが波及して街全体で若者の活動を応援する気運が高まっていると思います。

認定特定非営利活動法人 みやぎ発達障害サポートネット

-転機。組織基盤強化の必要性を実感-
私たちは発達障害のある人とその家族が、人格の尊厳を保って、安心して暮らせる社会づくりに貢献するという事をミッションに活動しているNPOです。自分を語れる当事者、発達障害を理解する市民、アドボカシーできる職員の三者がお互いに育って理解を深めることを願って子供支援事業、保護者等支援事業の二つを実施しています。2011年、当団体を取り巻く環境が大きく変化しました。東日本大震災、理事長の急逝、6名中3名の新理事という体制変化、NPO初心者にして私が代表理事に就任、銀行からの融資。活動すら危ぶまれる状況となり、組織の問題点が見えてきました。その背景には「情報共有」、「役割分担」、「当事者意識」といった課題があり、そこでパナソニックサポートファンドを活用しようと考えました。

-助成3年目のいま、振り返る。組織診断、中期計画、アクションプラン-
1年目は、組織診断です。まずは「うちのミッション言える?」から始まりました。その組織診断結果から中期計画策定を最優先目標課題と考え取り掛かりました。これを通じ3年間の中期計画が出来あがり、あわせて計画の実現に向けたアクションプラン策定にも取り掛かりました。1年目の成果は、「中期計画を策定出来た」、「策定を通じ全職員で意識共有出来た」、「個の業務から組織全体を見る」という点です。第三者の視点を入れながら中期計画が出来た事で、法人の歩む方向が内部でも見えやすくなり、スタッフの疲弊感や徒労感も解消されましたし、対外的にも活動や展望を発信しやすい状況がうまれました。
2年目は、中堅職員育成と活動拠点の確保にも取り組みました。そこで目標に向かって必要と感じたアクションプランを作成して取り組みました。「自分たちのためでなく、活動の先にある「人」の事を考えて行動する」。これは全職員1日集中型研修というのを行いましたその時のある職員の言葉です。1年目から更にアップしたモチベーションは、組織運営の力強い下支えになりました。売上高が伸び悩んだ大変な時にも、どんな風にやろうかと職員全員で話し合いました。これまでは一つ課題が起きると「どうしよう(でもまあいいか)」というのが真っ先に出て来たのですが、こんな風に話し合って解決していける力が増えているのを強く感じました。
2年間の成果は、1点目は中期計画、アクションプランができ、見通しのある運営ができること。2点目は利用者増が運営の安定に繋がる、という点ですし、これらを考える上でやはり大切なのは人材、人だなと痛感しました。実は助成を受ける前までは、「収入の安定が経営の安定」と思っていたのですが、そうではないなく、やはり人材こそ経営の安定にして組織基盤強化の肝だと強く感じたことも大きな成果だったと思っています。そして今後の組織基盤強化とは、中期計画と行アクションプランの実施・継続にあると考えています。
現在助成3年目となり、中期計画は2年目です。来年サポートファンドの報告が出来る頃には、新しいことが進んでいますというお話が出来るように頑張っていきたいと思いますし、ぜひ皆様の応援をよろしくお願いいたします。