2024年度助成先が決まりました
「子ども/若者ライフサポートプログラム」第2回助成の審査を行い、 下記の通り決定いたしました。
助成先一覧
■新規助成
団体名 | 所在地 | 事業名 | 助成額 |
---|---|---|---|
特定非営利活動法人 茨城居場所研究会 | 茨城県 | ひきこもりがちな若者の居場所づくり事業 | 165万円 |
一般社団法人 officeひと房の葡萄 | 兵庫県 | 困難を抱えた子ども/若者の社会的居場所「ぐれいぷハウス」の継続・安定化事業 | 223万円 |
特定非営利活動法人 ASTA | 愛知県 | 名古屋あおぞら部 | 152万円 |
特定非営利活動法人 青少年自立支援施設淡路プラッツ | 大阪府 | ひきこもりの若者とご家族のための「居場所」と「相談できる場所」をつなぐ事業 | 181万円 |
特定非営利活動法人 ほっこりスペースあい | 京都府 | 不登校・ひきこもり当事者、家族への相談と居場所支援事業 | 194万円 |
■継続助成
団体名 | 所在地 | 事業名 | 助成額 |
---|---|---|---|
特定非営利活動法人 キーデザイン | 栃木県 | 地域社会とのつながりを通して子どもたちが成長できる、フリースクールの場づくり | 250万円 |
一般社団法人 カザグルマ | 千葉県 | 子どもの居場所カフェ | 179万円 |
特定非営利活動法人 Since | 滋賀県 | “地域に飛び出て、でっかく学ぶ”子どもと地域を育むフリースクール事業 | 250万円 |
特定非営利活動法人 よりみち | 和歌山県 | 街角ライブラリーから地域の居場所へ~不登校・引きこもり支援事業 | 150万円 |
特定非営利活動法人 メロディー | 香川県 | 改・フリースペースじゆうだ事業 | 151万円 |
特定非営利活動法人 ブエンカミーノ | 広島県 | 子どもサードプレイス「安佐北フリースクールOKAZAキッズ」 | 250万円 |
*助成期間:2024年10月1日から2025年9月30日までの1年間
*助成件数:11件(新規:5件、継続:6件)
*助成総額:2,145万円(新規:915万円、継続:1,230万円)
選考総評
1.応募の傾向
「子ども/若者ライフサポートプログラム」の第2回助成は、2024年5月23日に告知を開始した。2024年6月17日~28日の受付期間に19都道府県から36件の応募があった。法人格別では、特定非営利活動法人からの応募が全体の61%となった。団体の財政規模については、300万円未満が31%と最も多く、次いで1,000万~3,000万円未満が28%であった。
2.選考委員会 総評
■新規助成
第2回助成は、全国から36件の応募があり、昨年度から引き続き、本助成へ寄せられた期待の大きさを実感しました。本助成プログラムを支援くださる武田薬品工業株式会社の皆様に心からの感謝を申し上げます。
今回の選考も、有識者などで構成する選考委員会で審査を行いました。助成対象の合致性、選考基準をもとに助成先を決定しました。
重点的に意見交換したことは、各団体が子ども・若者がかかえる生きづらさをどのようにとらえているかという点でした。支援者側だけの視点ではなく、子ども・若者の視点にたっているかという観点で議論が活発に行われました。
■継続助成
継続助成は、書類申請に加え、選考委員会でのプレゼンテーションを経たうえで選考をしました。
昨年度の活動の振り返りがしっかりと行われており、継続して助成することで、支援活動がさらに発展・改善されることが期待される6団体を継続助成団体として決定いたしました。
また、活動だけでなく、組織としての持続可能な体制がつくられるかという観点も重視しました。
この助成プログラムの実践が、子ども・若者が安心して集える居場所づくりにつながり、ここでの成果が共有され、全国のモデルとして広がることも期待しています。
助成概要と推薦理由
■新規助成
助成事業テーマ「ひきこもりがちな若者の居場所づくり事業」
茨城居場所研究会は、茨城県県北地域を中心に、ひきこもりがちな若者の居場所づくりとともに、地域の理解を進める啓発活動を実施することで、誰もが過ごしやすい社会をめざしている。
本助成では、ひきこもりがちな若者の居場所開設とソーシャルスキルトレーニングや地域の理解促進のための研修会、スーパーバイズを中心としたスタッフ研修を実施する。居場所での交流やトレーニングにより、家族以外との対人関係の広がりや、他の居場所、就労等に興味が持てる状態になることをめざす。加えて、研修会やイベントを通じて地域のひきこもりがちな若者の社会的孤立に対する理解を深め、居場所の拡大につなげていく予定だ。
支援が受けられる場所が少ない地域において重要な活動である。ぜひ、情報発信を充実させ、他団体との連携を深め、多様な支援を展開するとともに、より多くの当事者に支援を届けてほしい。そして、利用者が地域での居場所を見つけ社会参加につながることを期待したい。
助成事業テーマ「困難を抱えた子ども/若者の社会的居場所「ぐれいぷハウス」の継続・安定化事業」
officeひと房の葡萄は、家庭でケアをされていない子どもたちの存在に注目し、誰もが安心して過ごすことができる居場所づくりをしている一般社団法人である。これまで、子ども・若者のみならず若年女性や母子など、支援が必要な対象に継続的に支援を行ってきた実績がある。今回の申請事業では夜間の居場所開設を目的としている。困難な状況におかれ、支援の必要性が高い子ども・若者にとって、夜間に安心していることができる場所が重要であるにもかかわらず、社会のなかでそういった居場所はほとんどないのが現状である。そのようななかで、支援実績のある団体が夜間の社会的居場所を運営する意義は大きい。また、母子を含めて若者女性を対象としており、親を支援することが子どもの安全・安定につながるのではないだろうか。孤立した子ども・若者のケアのためのこうした活動が安定的に継続され、社会全体の理解を得られるようになることを期待する。
助成事業テーマ「名古屋あおぞら部」
ASTAは、性的少数者(LGBTQ+)の人権や多様性に関して出張事業や研修などの啓発活動を行っている。今回申請された事業「名古屋あおぞら部」は、LGBTQ+当事者の若者が2016年に立ち上げた取り組みで、愛知県内外で生活する当事者や当事者かもしれない若者が安心して集える交流の場をつくっている。運営を当事者や当事者の保護者など周囲の人が担っており、交流にとどまらず、相談やピアサポートの窓口にもなっている。
小学生から30代までの参加者が広域から集まるが、低年齢の子どもにとっては遠すぎない地域に場が必要で、今回の助成事業では、交流会の出張開催や、ニーズの高まりに応じられるスタッフ数やスキルアップにも取り組むことになっている。また、LGBTQ+成人式の実施は、本人が自分らしい姿での門出を祝えるだけでなく、LGBTQ+コミュニティで子どもが将来像を描くことにもつながり、意義が感じられた。
性の多様性についての啓発が進む一方で、当事者が安心して集える場は地方都市ではまだまだ少ない。マイノリティが孤立しないための取り組みとして、活動の展開や持続性を高めるための模索に期待したい。
■特定非営利活動法人青少年自立支援施設淡路プラッツ(大阪府)
助成事業テーマ「ひきこもりの若者とご家族のための「居場所」と「相談できる場所」をつなぐ事業」
申請事業は、学齢期以降の20歳代~40歳代までのひきこもり・ニート・不登校状態にある方々とその家族に対し、居場所支援と相談支援を組み合わせた取り組みである。申請団体自体、すでに30年以上の活動実績があり、様々な蓄積を重ねてきている。
審査においては、「若年ひきこもり支援はニーズがあるものの、支援が行き届きにくい分野であるなか、社会参加・就労・自立というストーリーを考えられた活動である」「当事者支援の内容が言語化されており、対象者への配慮が感じられる」「地域での連携も丁寧に取り組んでいる」といったコメントがあった。
支援の受け皿の少ない若者が、社会とつながることを通して社会参画でき、就労支援からさらに社会との関わりに希望を抱ける居場所として、安心できる仲間と出会える居場所として、丁寧に活動を展開することを期待している。
助成事業テーマ「不登校・ひきこもり当事者、家族への相談と居場所支援事業」
ほっこりスペースあいは、2001年に不登校の子どもや青年の居場所を地域につくりたいと願う親たちによって開所された。以後、約350人の方の相談や居場所支援を実施し、回復を応援してきた。2009年度からは京都府ひきこもり支援事業の山城地域を受託し、併せて2020年度からは宇治市のひきこもり相談窓口事業を受託し、当事者、家族とつながり続ける支援活動や地域ネットワークの構築をしてきた。
審査においては、「長きにわたり、当事者だけでなく、親や地域社会、行政と連携をしながら、実直な活動をされている」「スタッフの専門性も高く、事業計画の実現可能性が高い」「地域の関係団体との連携も丁寧に取り組んでいる」という評価コメントがあった。
行政支援の狭間にある人たちへの支援が展開されることを期待したい。
■継続助成
助成事業テーマ「地域社会とのつながりを通して子どもたちが成長できる、フリースクールの場づくり」
キーデザインは2016年に発足した遊びや人との関わりを通じて子どもが学び、人との信頼関係を育むことをめざす団体で、保護者や教員にも相談窓口を用意するなど支援者の支援にも注力している。
継続助成では、子どもたちが自主的に企画や運営を行うイベント開催など、子どもたちの生きる力の醸成に向けた活動を取り入れ、子どもの成長に必要な場を設ける。また、居場所事業とともに力を入れている学習支援も、個別支援、個別訪問や卒業生による進路相談などを行い、一人ひとりの状況や希望に沿うよう力を入れていく。
フリースクールを卒業する子どもによる経営面の課題もあったが、今後も地域に根差し、子ども・保護者・学校をそれぞれ支援しながら、子どもたち一人ひとりに合った支援を続け、子どもたちの自信を育んでいく団体として成長していくことを期待したい。
助成事業テーマ「子どもの居場所カフェ」
カザグルマは、困窮世帯が集住し、外国につながる子どもが多い地域で、居場所や食事の提供を行っている。年間300日居場所を開所し、フリースクールや夏休みの農業体験など近隣の学校や行政、病院とも連携し支援に取り組んでいる。
助成事業である子どもの居場所事業を実施するなかで、障がいなど特別な支援を必要とする子どもの利用が増えていることから、放課後等デイサービスの開設を進めている。また放課後等デイサービスの利用対象から漏れてしまう子どもたちの受け入れも進め、将来的に障がい児と健常児が共に過ごすインクルーシブな居場所づくりへの発展をめざす。
活動を通して見つかった新たな課題に取り組んでおり、利用する子どものニーズに沿った活動と期待できる。また、困りごとを抱えた子どもを取りこぼしなく支援しようとする姿勢も評価した。今後は財政面の課題をクリアし、必要な人材を確保することで子どもたちを支援できるよう期待したい。
助成事業テーマ「“地域に飛び出て、でっかく学ぶ”子どもと地域を育むフリースクール事業」
Sinceは若者が中心となって立ち上げたNPO法人であり、地域交流や連携促進の取り組みを精力的に行うフリースクールである。定期的なフリースクール開設に加えて、不登校フォーラムの開催や地域住民とのマルシェ企画・運営、小学校内での水遊びパークを実施するなど、子どもの成長を地域の人々とともに育むという視点を大切にしている。加えて、行政支援の重要性を伝えるために首長や議員との面談を行い、フリースクールへの補助を得るなど、行政との関係を構築することによって不登校の子どものための社会資源を豊かにするためのソーシャル・アクションを行っている。また、サポーター(個人、企業)を集める目的を、「子どもを肯定的に見守る地域を醸成すること」と定め、地域での理解者・協力者を募っている。不登校の子どもへのミクロレベルの支援のみならず地域づくりの視点を持ちながらの活動が、今後さらに発展することを期待する。
助成事業テーマ「街角ライブラリーから地域の居場所へ~不登校・引きこもり支援事業」
よりみちでは、ひきこもりや不登校の若者本人と家族を支援している。ひきこもりの自覚がない当事者でもアクセスしやすいように常設のライブラリーを開いている。前年助成では、部屋の増設などのライブラリー環境整備と広報、イベント開催で周知に努めることで、地域住民や支援者との認知が高まり、関係構築につながった。目的であった隠れたひきこもりや不登校の当事者数名が支援に接続する成果が生まれている。
今回2年目となる助成では、その広がりを支えるための事務局やコーディネイトの体制強化、運営主体を住民や当事者にシフトし、出張ライブラリーや継続したイベント開催などを行っていく。ライブラリーという支援色の少ない場があることが、地域との「関わりしろ」となり、当事者にとっても運営ボランティアなどの役割を通じたエンパワメントの機会となる。地域でひきこもりや不登校の当事者に関わる具体的な仕組みのモデルとして期待したい。
助成事業テーマ「改・フリースペースじゆうだ事業」
学校、家庭といった日ごろ過ごしている居場所以外での居場所での活動を通して、安心感を得るとともに、福祉制度の狭間にいる方や、福祉制度につながるべき方をサポートしていく活動である。そして、これまでの活動を踏まえて拠点を増やすとともに、新たに高校生や若者世代を対象とした事業に踏みだすのが、本事業である。
審査において「拠点が増えるのは素晴らしいが、日によって利用拠点が変更となると利用者が不便にならないか」「対象を広げることは良いが、対応できるスタッフは十分にいるのか」「子ども支援と、若者支援は抱えている課題が異なるので、相合に時間がかかるのではないか」といった懸念も示された。
これまでの活動を踏まえて、香川県内でのネットワークを維持・継続していくとともに、より多くの方が安心して利用できる居場所をつくっていくことを期待している。
助成事業テーマ「子どもサードプレイス「安佐北フリースクールOKAZAキッズ」」
ブエンカミーノは共同生活と農業を主とした若者自立支援事業を行う団体で、「地域交流フリースペースOKAZAKI」を開所し、居場所事業を通じた地域の多世代交流や孤立防止事業を展開している。
前年助成では、フリースペースの一部を活用してフリースクールを開設、稼働日数を増やして、不登校の子どもの受け入れが行われた。学校長やSSWとのつながりを持てていること、関わる大人や若者も当事者性が高く、支援するされるの垣根の低い場づくりが実践できていることが評価できる。
今回2年目となる助成では、子どもたちの学習の遅れをサポートする環境づくりや、農業体験や長期休み期間の宿泊体験など、多様な学びの機会づくりが計画されている。地域の不登校理解をさらに進め、サードスペ-スとしての多世代交流の場が息長く継続できるように、安定運営のための現実的なプランが構築されることを期待したい。