市民社会創造ラボの第6回目は、産業能率大学経営学部教授の中島智人さんをゲストにお迎えし、「市民社会の再構築への取り組み~英国ボランタリーセクターの20年~」をテーマに語っていただきました。
中島さんは、2001年から2005年までイギリス・ロンドンに滞在。その間、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)市民社会センター(Centre for Civil Society : CCS)でボランタリー組織について学ばれていますが、その後も一貫してイギリスのボランタリーセクターについての研究を続けている日本の第一人者です。
まず、イギリスのボランタリーセクターについて、第二次大戦後の福祉国家から、サッチャー、ブレア、キャメロン政権に至る流れと、その間の市民社会の再構築についての取り組みについて紹介していただきました。
- 戦前から1940年代までは政府とボランタリーセクターはそれぞれ独立した二元モデルであったが、1940年代・1950年代になると福祉国家の下にボランタリーセクターは政府の補助金による国家支配モデルとなり、1960年代・1970年代では国家支配ではあるもののボランタリーセクターは独自の情報提供やアドバイスなど新しい役割を見出すようになる。
- 1980年代・1990年代には福祉多元主義に基づき政府からの補助金による契約文化へと変わり、ボランタリーセクターは政府の下請化へと進むが、1998年にブレア政権がコンパクトを受け入れたことで契約から協働への流れとなった。
- しかしながら、コンパクトは期待どおりの成果はあげられずに政府の関心は希薄化し、ボランタリーセクターは新自由主義的政策のもとに、次第に市場競争に組み入れられていくようになった。
- 2017年にメイ政権になり、昨年、新しい市民社会の再構築戦略が示されたが、EU離脱についての混乱の中で先行きは不透明。
中島さんのレクチャーの後は、参加者を交えて活発な意見交換がおこなわれました。
英国の市民社会は400年におよぶチャリティの歴史があり、地域レベルでは市民による様々な活動が見られますが、サッチャー政権以降の市民社会を再構築しようとする動きは必ずしも成功していると言えない様子です。イギリスから学ぶべき点は多々ありますが、後追いすることは慎重になる必要があるかもしれません。
第7回市民社会創造ラボの当日資料はこちらからご覧ください。
《第7回市民社会創造ラボ(終了)ゲスト紹介》
中島智人さん 産業能率大学経営学部 教授
1967年埼玉生まれ。2001年から2005年まで、イギリス・ロンドンに滞在。その間、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)市民社会センター(Centre for Civil Society)で、ボランタリー組織について学ぶ。専門は、日本とイギリスの非営利組織や社会的企業の経営、政策・制度、および市民参加・市民協働。神奈川県内を中心に、自治体の市民活動推進・市民協働推進の委員を歴任。全国食支援活動協力会(旧全国老人給食協力会)の運営委員として、食支援活動にもかかわる。著書として、『英国チャリティ』(弘文堂)、『英国福祉ボランタリズムの起源』(ミネルヴァ)、『ソーシャル・キャピタル(福祉+α)』(ミネルヴァ)、『イギリス非営利セクターの挑戦』(ミネルヴァ)など(いずれも共著)。現在、産業能率大学経営学部教授。
次回の第7回市民社会創造ラボは、7月26日(金)に開催予定です。
駒澤大学教授の李妍焱(り・やんやん / Li Yanyan)さんをゲストにお迎えし、「『中国的市民社会』のリアリティから学べること」をテーマに語っていただきます。
◆詳細とお申込みはこちらから: 第7回市民社会創造ラボ
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