特定非営利活動促進法(以下、NPO法)が施行されて25周年を迎える2023年12月1日、NPO法25周年記念フォーラム「未来の市民社会をともに描こう」を開催しました。当日は全国各地から、NPO/NGO、企業、行政職員、学術研究者、国会議員、メディアなど約200人の方にご参加いただきました。
※本フォーラム報告における「NPO」は特定非営利活動法人(NPO法人)に限らず、広く非営利団体(NPO)として表記しています。
■オープニング
来賓からのご挨拶として、加藤鮎子内閣府特命担当大臣(こども政策 少子化対策 若者活躍 男女共同参画)、またNPO議員連盟共同代表の中谷元衆議院議員からお話をいただきました。NPO/NGOの社会的課題への取り組みに感謝するとともに、25年前の法制定までの経緯を振り返り、今後のNPOの活動に期待する旨が話されました。
■トークセッション「NPO法の理念から、目指す市民社会を考える」
セッションでは、コーディネーター松原明さん(特定非営利活動法人協力アカデミー)によりNPO法の成立当時の目的(第一条)を振り返り、社会課題解決のみならず「社会への市民参加の促進による市民主導の社会づくり(私たちの手でよりよい社会をつくる/市民のエンパワーメント)」というNPO法の理念を確認しました。
法制定当時に比べて多様な主体が社会問題解決や社会づくりに関わっていかなければならない現代において、NPO・市民活動団体はいかにして、市民の社会参加を推進しエンパワーメントしていけるのか?という問いについて、登壇者は以下のような意見を交わしました。
―平田仁子さん(一般社団法人Climate Integrate/認定NPO法人気候ネットワーク)気候変動課題が深刻化する中で、各国の取り組みを後押ししているのは力強い市民社会。日本では、市民社会形成に向けた意識や理解はなお充分に広がっておらず、NPOを支援する資金の課題も欧米に比べて大きい。問題を解決に導く鍵は市民社会にある。引き続き育んでいくことが大事。
―仲川げんさん(奈良市市長)様々なプレイヤーがいる中で、NPOや地域住民自らが主体的に取り組む自らのまちづくりの動きへの期待は大きい。
―岡本翔馬さん(特定非営利活動法人桜ライン311)1.参加のハードルをとにかく下げること。2.相手が関わり続けたいと思える事業・組織をつくること。3.信頼される人・組織であり続けるか。それに応える組織や事業のデザインが巡りめぐってこれからの市民社会づくりとなる。
最後に、コーディネーターの松原さんが、「NPOの役割は個々の課題解決だけではなく、市民の参加と協力を促し、それによって共助社会や共生社会づくりを通じた持続的で個人の幸福が実現できる社会へとつながっていく」と結びました。
■リレートーク「NPO/NGOの眺望」
全国各地、多世代の実践者から現在の取り組みとこれからの市民社会の展望をお話しいただきました。
―高橋 亜由美さん(特定非営利活動法人あえりあ)自身の支援経験から保険制度ではカバーできないニーズに、医療・福祉・介護の有資格者が身につけてきたことを活かし有償ボランティアを行うことで、「人と人とが支え合える未来」を目指している。
―渡邊 優子さん(特定非営利活動法人希楽々)総合型地域スポーツクラブとして、スポーツ庁の運動部活動の在り方の議論に「融合」という概念を創出し、ひろく地域課題に取り組みながら全国の部活動に変容を促している。
―上垣 喜寛さん(特定非営利活動法人自伐型林業推進協会)施業する山林を固定して弱度間伐を繰り返すことで持続可能な自然環境と就労を生み出すことができる自伐型林業の開発・普及啓発を行っている。中山間地域のもう1つの暮らし方や林業の構造変革に取り組んでいる。
―能條 桃子さん(NO YOUTH NO JAPAN/FIFTYS PROJECT)日本においては若者が市民活動に参画しやすい環境が整っていない現状を踏まえて、若者がより参入しやすくなるようなNPO法改正への期待やハラスメントのない市民セクターづくりを。
―正井 禮子さん(認定特定非営利活動法人女性と子ども支援センターウィメンズネット・こうべ)NPO法施行前の1992年に設立。困難な状況にある女性やそのこどもたちへの支援を行う。現在、女性たちが「ここにしか住めない」ではなく「ここに住みたい」と安心して暮らせる住まいづくりを市民からの寄付を募って進めている。
―尾崎 昭仁さん(認定特定非営利活動法人NPO高知市民会議)こどもたちが社会のしくみを疑似体験する「とさっ子タウン」の運営を通じて、次の世代を支えるという地域づくりの人材の循環に挑戦中。
―山下 浩二さん(NPO法人ここのね)人口約4,000人の町でオルタナティブスクールを運営している。不登校のこどもが全国の小中学校で約30万人おり増加傾向にあること、そのような中でこどもたちが安心して過ごす場がある社会が必要。
―江口 紗也さん(NPO法人WeD)高校生スタッフとして活動。著名アーティストが訪れる音楽フェスのボランティアコーディネートやまちづくりの活動を通じて「NPOに関わることで学校以外のつながりや居場所ができた」。
■トークセッション「これからの市民社会づくりへの提言」
最後のセッションでは、まず会場に集った参加者のバズセッションを行い世代を超えた意見交換をした後、コーディネーターの関口 宏聡さん(特定非営利活動法人セイエン)から「本フォーラム全体を通じて皆さんが感じたことから提言を考えていただき持ち帰っていただければ」として、登壇者との意見交換を行いました。
―原田 伊織さん(NPO法人ASK)「若者だからと下に見られないようにするためにNPO法人を設立することにした」。最初はまちづくり提案箱に投書した3行の要望だったものが50ページの提案書になるまで進展した。若者が活動しやすい環境整備や政策提言できる場が必要。
―南 信乃介さん(特定非営利活動法人1万人井戸端会議/那覇市繁多川公民館)1万人規模(生活圏)で地域文化を活かした社会教育活動を推進。エジプトでの公民館支援を行っている。これらを通じて、それぞれの故郷を大切に思えることが持続可能な地域とグローバルな社会への共感と行動力につながる。
―渡部 カンコロンゴ 清花さん(特定非営利活動法人WELgee)日本にたどり着いた難民と日本企業をつなげる。経験やスキルを活かした人生再建と同時に、企業もビジネスの可能性促進や組織変容に向かえるようなコーディネーション。「様々なバックグラウンドのある人がフルタイムではなくてもプロボノや出向などでNPO/NGOに関わりともに社会を変えていくためにも、多様な関わりの選択肢を確保することが大事」。
最後は、関口さんが「NPO/NGOセクターは社会をよくしていくという想いを根底にお互いに助け合うところがいいところであり、協力を深めその環境をより成熟させるための提言を私たち自らで実践することで市民活動の可能性は無限大になる」と締めくくりました。
■交流会
交流会では登壇者を含めて約100人が参加しました。超党派NPO議連共同代表の辻元清美参議院議員、同じく幹事長代理の谷合正明参議院議員、そしてNPO法や改正時の衆議院法制局のみなさまからのご挨拶に続き、特定非営利活動法人市民社会創造ファンド理事長の山岡義典さん、東京ボランティア・市民活動センター所長の山崎美貴子さんからご挨拶をいただきました。交流と意見交換の輪は途切れることなく続きました。
最後に
本フォーラムは、「NPO法施行25周年を迎えるにあたり、NPO法施行時に生まれていなかった世代の方々に、NPO法の理念を伝えていくこと」
「運営費は特定の財源とせず参加費とご寄付(ご協賛)とすること」
「登壇者は大都市圏外の方で多世代の方に依頼すること」にこだわって開催しました。
参加者の感想をアンケートから一部ご紹介します。
- 「NPO法の一番の財産は一緒に活動する仲間が集い、信頼してもらい、参加してもらうための法設計になっているところ」という部分に納得しました。
- 社会課題に取り組む団体、新しい社会価値やライフスタイルを提案する団体の広がりを感じました。
- 先人たちが作り上げた歴史を新しい世代がしっかりとつないでいる様子が分かりました。
- それぞれの活動に取り組む人たちの思いが聞け、自分たちの活動や自分自身の在り方について問い直す機会をいただきました。
- 25年の歴史を感じることができ、市民から社会を変える(影響を与える)大きなエネルギーを実感できました。
NPO法制定時の世代の方から、生まれた時からNPO法があった世代が一堂に会す機会となり、自発性に基づいて構造的な視点から先駆的な活動を創造してきたNPOは様々な形で地域に根付き広がっていることを確認することができました。より成熟し、しなやかな市民社会を創っていくための課題も提起され、参加と協力を軸としてそれぞれが未来の市民社会に想いを馳せる一日となりました。
ご登壇者や関係者のみなさま、ご参加いただいたみなさま、また当日ご参加が叶わない中ご寄付という形で応援してくださいましたみなさま、本当にありがとうございました。
○ご挨拶やメッセージをいただいた国会議員・行政関係者の皆さま(敬称略)
【超党派NPO議員連盟】
・ご挨拶
中谷 元衆議院議員(共同代表)
辻元清美参議院議員(共同代表)
谷合正明参議院議員(幹事長代理)
川田龍平参議院議員(事務局長)
・メッセージ
古川元久衆議院議員(副代表)
阿部俊子衆議院議員(幹事長)
【衆議院法制局】
・橘 幸信
・牛山 敦
・皆川 治之