ファイナンシャル・インクルージョン(金融包摂)は、おもに途上国の低所得者層に対する政策として知られ、銀行口座の開設やクレジットカードの作成があまり問題にならないと考えられがちな日本では、あまり必要な観点とは見なされていません。一方で近年、貯蓄率の低下、多重債務のため新たな金融サービスが受けられない状況、格差拡大などの現象がみられ、経済的に困窮している個人や世帯が増えており、この概念の有用性や政策の必要性が議論されはじめています。
当分科会では、日本NPOセンターがメットライフ財団からの助成金で行ってきたファイナンシャル・インクルージョンに関する調査事業をもとに、金融排除・包摂の日本における現状を概観し、NPO、生協、社協などの立場からの取り組みを紹介するとともに、今後セクターを超えて必要とされているアクションについて討議します。
■スピーカー
田代 絢子(たしろ じゅんこ)さん
メットライフ財団 カントリー・ディレクター / メットライフ生命 CSRゼネラルマネージャー
大学在学中、ケニアの保健医療の現場を経験、ビジネスの手法を活かした国際開発の在り方を模索し始める。卒業後McKinsey & Companyに入社、日本・中国・欧州で経営戦略立案、新規事業策定、組織変革等に従事。渡米後は、国連開発計画(UNDP)、国際金融公社(IFC)にて途上国貧困層向けビジネスのアドバイザリー業務を担当。2012年、Acumen Global Fellowに選出、ガーナの社会的企業・GADCOにて零細農家を高級市場向け生産網に取り込む新規ビジネスを立ち上げる。2014年よりメットライフ財団およびメットライフ生命CSRにて、日本国内のファイナンシャル・インクルージョンに取り組む。東京大学教養学部(国際関係論専攻)・コロンビア大学国際公共政策大学院卒業、行政学修士(MPA)。
前川 瑞穂(まえかわ みずほ)さん
金融広報中央委員会事務局次長 / 日本銀行情報サービス局参事役
1986年日本銀行入行。システム情報局企画役、文書局管財課長、名古屋支店次長、甲府支店長等を経て、2013年から現職。全国各都道府県にある金融広報委員会の活動を支援するほか、関係官庁、金融業界団体等との連携を図りながら、「金融リテラシー・マップ」の策定、大学での金融リテラシー講座や社会人向けセミナーの企画・運営等に携わる。
上田 正(うえだ ただし)さん
日本生活協同組合連合会 福祉事業推進部 生活相談・貸付事業アドバイザー
1954年生まれ。岩手県生活協同組合連合会や岩手県消費者団体連絡協議会の事務局長として消費者問題に取組み、1996年から消費者信用生協で生活相談・貸付事業に携わり、2009年消費者信用生協専務理事を経て2013年より現職。生活相談・貸付事業の実施生協への支援と普及活動に取組んでいる。
渋谷 篤男(しぶや あつお)さん
社会福祉法人 全国社会福祉協議会 常務理事
1954年、名古屋生まれ。1977年より全国社会福祉協議会。全国ボランティア活動振興センターをスタートに、地域福祉、ボランティア、市区町村社協、介護関係を中心に担当してきた。2016年4月より現職。日本NPOセンター理事。人間関係の希薄化がさまざまな問題を引き起こしているとの認識のもと、支援を要する人に対し、地域社会がつながりを修復する作業を意識的に行うことが必要で、それが自身の仕事の基本テーマと考えている。
■モデレーター
今田 克司(いまた かつじ)
特定非営利活動法人日本NPOセンター 常務理事
1996年、米国で日米NPOセクターの人材交流を推進する日米コミュニティ・エクスチェ ンジ(JUCEE)を立ち上げ、事務局長。2000年 に帰国し、CSO連絡会の事務局長を経て、2004年より市民社会の役割に関する 普及活動をすすめるCSOネットワークの共同事業責任者。世界の貧困をなくすグローバル・キャンペーン(GCAP)に参加する日本のネットワークの事務局長などを務めた。2008年より、市民社会の強化を推進するCSOのグローバルな連合体であるCIVICUS (南アフリカ)にて事務局次長。2012-13年 に事務局長代理。現在、日本NPOセンター 常務理事、一般財団法人CSOネットワーク代表理事、動く→動かす(GCAPジャパン)代表、CIVICUSシニア・アドバイザー。日本評価学会認定評価士(2014年)。