社会全体の変容と共に、経済や世帯のあり方など生活の前提とされてきたものが揺らぎつつある中、社会課題の多様化・複雑化が進んでいます。従来のセーフティネットでは対応できない現実や、見えづらくなっていた状況が明らかになってきたことにより、日本社会は、“多様な”、そして“新たな”課題に直面しているといえます。
そうした中、課題をいま抱えている人もそうでない人も、あらゆる人が受け入れ合い、支え/支えてもらいながら共に生きる社会を、いま改めて目指していく必要があると考えます。そのためには、社会として課題当事者へのサービス提供や理解が進むことと並行して、生活スペースとしての地域社会において、安心できる暮らしがあることが大切です。
さらに、いわゆる地域の「課題」や「困りごと」と言われてしまうことが、逆に地域の助け合いの力が引き出されるきっかけとなったり、地域の「良いところ」に変化したりする、プラスの流れへの転換が生まれることも重要です。
地域が支え合うこと、課題をプラスに変換する動きが生み出されることのために、NPOをはじめ市民活動がどのような触媒的な関わりをすることができるかを考えます。
議論のための話題提供として、1)児童館とNPOの協働事業が軸となり、外国にルーツを持つ家族と地域の相互理解が生み出されている取り組みと、2)東日本大震災による広域避難者の支援活動から、地域が支え合う力を引き出す取り組みをご紹介します。
・多様な人を受け止められる地域であることの具体な姿とは
・地域の「課題」ではなく、地域の「力」というプラスの転換をどう作るか
[スピーカー]
桜井 野亜さん(福島避難者のつどい 沖縄じゃんがら会 代表)
1972年福島県生まれ。/2011年東日本大震災及び福島第一原発事故の発生により沖縄県へ避難。2012年3月に会を発足。/震災前は広告制作業&フードスタイリスト、震災後、那覇市教育委員会教育相談課非常勤勤務(那覇市長賞受賞)/復興庁事業「県外自主避難者等への情報支援事業」の受託と共に沖縄じゃんがら会事務局専任となり、業務全体の管理運営、経理、相談業務を担当。
梅原 麗子さん(福知山市福祉保健部子ども政策室 南佳屋野児童館 館長)
福知山市役所勤務で、戸籍に始まり、税や保健、福祉、家庭教育など様々な分野に携わり、現在児童館館長6年目を迎える。地域のおばちゃん目線で子どもを見た時、「元気がないなあ。」と感じ、間もなく迎える定年まで子どもたちと一緒に元気に遊んでいっぱい楽しい事をやりたいとフルパワーでかかわっている。特に、外国にルーツのある親や子は様々な支援を求めており、地域の中で孤立している現状があったが、文化や習慣の違いは地域を豊かにする。それを引き出すのが私の役割だと思っている。
東家 零子さん(特定非営利活動法人 京都丹波・丹後ネットワーク)
阪神大震災が自分自身の生き方を見直すきっかけとなり、近畿郵政局(現日本郵便近畿支社)を退職。その後、生まれ育ったまち福知山に帰り、社会保険労務士等の資格を取得後、2010年、丹波と丹後をつなぎ人と情報をつなぐことをミッションに、中間支援の活動を主とするNPO法人京都丹波・丹後ネットワークを設立。
最近は、人々の暮らしに重点を置き未来につながるまちづくりを目指して、NPO等の情報発信や助成金申請等の支援に力を入れている。夢はマクロフォトグラファーである。
[コーディネーター]
星野 智子さん
(一般社団法人 環境パートナーシップ会議 副代表理事 / 一般社団法人 SDGs 市民社会ネットワーク 業務執行理事 / 特定非営利活動法人 日本NPOセンター 理事)
環境・開発に関する国際会議や「国連持続可能な開発のための教育(ESD)」、生物多様性やG7サミットなどに関わる環境NGO活動をサポート。現在、地球環境パートナーシッププラザ(GEOC)の運営を行う環境パートナーシップ会議(EPC)の副代表理事として、SDGsの推進・普及や対話の場づくりなどパートナーシップ推進を行っている。 ボランティアでは、お米作り体験企画の主宰やユースの環境活動に関わる。
この分科会は、「子どものための児童館とNPOの協働事業(協賛:一般財団法人 住友生命福祉文化財団)」の協力によって実施します。