2022年度助成先が決まりました

タケダ・女性のライフサポート助成プログラム第1回助成の審査を行い、 下記の通り決定いたしました。

助成先一覧

団体名所在地事業名
助成額
特定非営利活動法人女のスペース・おん北海道 
札幌市
生きづらさを抱える女性の継続・個別的な女性支援事業444
万円
特定非営利活動法人ダイバーシティ工房千葉県
市川市
くらしに困難を抱える女性を支えつなぐためのSNS相談事業426
万円
特定非営利活動法人ピッコラーレ東京都 
豊島区
孤立した妊産婦のためのワンストップ拠点運営事業500
万円
特定非営利活動法人くにたち夢ファーム東京都 
国立市
生活困窮女性が地域で自立して生きる力をつけるための支援450
万円
一般社団法人京都わかくさねっと京都府 
京都市
困難を抱えた少女たちが主体的に夢を実現する居場所づくり活動397
万円

*助成期間:2022年4月1日から2023年3月31日までの1年間

*助成件数:5件  

*助成総額:2,217万円

選考総評

1.応募の傾向

「タケダ・女性のライフサポート助成プログラム」の第1回助成は、2021年12月15日に告知を開始した。2022年1月17日~26の受付期間に首都圏や近畿圏を中心に18都道府県の41団体から41件の応募があった。東北地方の応募が多かった背景には、東日本大震災により、生きづらさを抱える女性の存在が顕在化し、支援活動が継続していることがあるかと思われる。団体の活動エリアは市区町村域、都道府県域、広域あるいは全国域がほぼ1/3ずつであった。法人格別では、特定非営利活動法人からの応募が多かった。助成の対象となる取り組みについては、多くの申請が複数の取り組みに該当するものであった。また、応募総額は1億6,201万円、平均応募額は395万円であった。

2.選考委員長メッセージ

第1回助成は、告知から応募までの期間が約1カ月と短期間でしたが、全国から41件の応募があり、本助成へ寄せられた期待の大きさを実感しました。まず、時世にあわせた本助成プログラムを支援くださる武田薬品工業株式会社の皆様に心からの感謝を申し上げます。

今回、多くの応募をいただいた中、選考委員会では、委員ひとり一人の知見と経験を通した活発な意見交換により、助成団体を決定いたしました。主な議論のポイントは、団体の持つネットワークや、迅速に手を差し伸べることができる体制の有無、当事者のエンパワメントや自己選択を大切にした支援のあり方等でした。

採択された5団体のみならず、生きづらさを抱える女性の課題解決は、個々の団体のみで実現できることではなく、地域の行政機関や関係団体、支援者との連携があって初めて可能になることです。応募いただいたすべての団体が長期的な視点で活動を続けていただき、生きづらさを抱える女性が安心で健康的な生活を取り戻すための支援を展開していただくことを期待しています。

タケダ・女性のライフサポート助成プログラム 選考委員長 萩原なつ子

<選考委員>

北仲 千里広島大学ハラスメント相談室・准教授/特定非営利活動法人全国女性シェルターネット共同代表
吹田 博史武田薬品工業株式会社グローバルコーポレートアフェアーズ 
グローバルCSR&パートナーシップストラテジー ジャパンCSR ヘッド
平山 亮 大阪市立大学大学院文学研究科 人間行動学専攻 · 准教授
村木 厚子津田塾大学客員教授/一般社団法人若草プロジェクト代表よびかけ人
萩原 なつ子
(選考委員長)
認定特定非営利活動法人日本NPOセンター代表理事
立教大学社会学部社会学科 教授・立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科 教授

<助成事務局> 認定特定非営利活動法人日本NPOセンター

助成概要と推薦理由

特定非営利活動法人女のスペース・おん(北海道札幌市)

助成事業テーマ「生きづらさを抱える女性の継続・個別的な女性支援事業」

女のスペース・おんは、札幌を拠点に、女性に対する暴力根絶をめざして、相談事業やシェルターの運営などを長く続けてきた団体である。今回の応募は、コロナ感染下で急増した思春期、青春期の女性の困難に焦点を当て、生理用品や食料等を定期的に手渡しすることにより関連性を作りながら相談・支援につなげようとするものであり、また、支援員のいる「寄り添い型シェルター」の運営により丁寧な回復支援を行おうとするものである。
コロナ感染下で、若年女性の自殺が急増したことからも分かるように、家庭内でのDVや虐待の激化、また、非正規、サービス業従事者の失業や収入源など若年女性の問題は深刻だ。札幌では風俗産業に働く者も含め状況は厳しいだろう。既存の支援機関の支援が届きにくく、また、自立までに丁寧な支援と息の長いアフターケアが必要なこの層への新たなアプローチとして、本事業がどういった成果をもたらすか、大いに期待している。

特定非営利活動法人ダイバーシティ工房(千葉県市川市)

助成事業テーマ「くらしに困難を抱える女性を支えつなぐためのSNS相談事業」

千葉県市川市を拠点とするダイバーシティ工房の応募事業は、経済的問題や暴力被害などによる「生きづらさ」を抱える女性たちを対象とした、SNSを用いた相談事業である。SNSを用いた相談事業自体はめずらしくはないが、同団体の応募事業では、行政による類似事業がカバーしていない時間帯にも相談を受け付けるとともに、地域密着型の団体だからこそ有する地域資源の知識を活かし、近隣の支援機関と連携して迅速に課題解決を図るポテンシャルを持ち合わせていることが、推薦の決め手となった。これまでの事業運営にもとづき、団体による直接支援が可能な領域も持ち合わせているほか、虐待や性被害のように早急な対応が求められる事案等への対応強化のため、研修を通した相談スキルのさらなる向上を計画している点も評価できる。
「生きづらさ」を抱えた女性たちが住み慣れた地域から移動することなく、自身の困難に対処するための資源にアクセスできるようになることは重要であり、この事業を通した同団体の経験知の蓄積とその波及は、すべての女性が健康的な生活を確立できる社会を実現させるために大いに意味があると考える。

特定非営利活動法人ピッコラーレ(東京都豊島区)

助成事業テーマ「孤立した妊産婦のためのワンストップ拠点運営事業」

近年、全国各地で「にんしんSOS」相談窓口が開かれているが、その中でも、際立って多くの相談を全国から受け、直接当事者と会い支援する活動をしているのが2015年に設立されたこの団体である。彼女たちはまた、相談支援を通じて見えてきた女性の抱える様々な困難や、社会の側の支援の不足、制度等の問題についても積極的に社会に発信し、Youtubeや出張保健室などを通じた若者への啓発活動も展開している。他の誰も指摘できなかった社会課題を発見し、取り組んでいる団体だと言える。
このように真正面から相談活動を行っていれば、実際に被害者が立ち寄り、滞在できる拠点が必要と感じるようになるのも当然である。今回行われる事業は、孤立した妊産婦のためのワンストップ拠点の運営、社会への発信、そして支援者の人材育成であるが、もっと多くの当事者がこのような支援を受けられるようになることが本当に今の日本で求められており、拠点運営や人材育成を後押しすることは非常に意義があるものではないかと思う。

特定非営利活動法人くにたち夢ファーム(東京都国立市)

助成事業テーマ「生活困窮女性が地域で自立して生きる力をつけるための事業」

この団体は、2015年に設立され、DV、親からの虐待、生活困窮などに悩む女性を支援するための相談、緊急宿泊対応、避難後の自立支援を東京・多摩地区で行っている団体である。
今回推薦の決め手となった要素として、この団体がDVや虐待などの当事者支援には「避難するまで」の初期支援だけではなく、その先の生活の支援が必要であることを明確に認識し、その実施を目指していることがあげられる。それに加えて、民間団体としては規模が大きい緊急避難部屋等の住宅支援から、カウンセリング、立ち寄りカフェ、子ども朝ごはん提供、食糧支援にいたるまでの包括的な支援を、自治体と連携もしながらすでにおこなってきているという実績、支援力を持っていることも選定の理由である。申請内容は何か新しい事業を立ち上げるというものではなく、これらの支援を今後も続け発展させていくというものであるが、公的支援ではできていない支援を地域でしっかり提供できる民間団体を後押しする意義は十分にある。

一般社団法人京都わかくさねっと(京都府京都市)

助成事業テーマ「困難を抱えた少女たちが主体的に夢を実現する居場所づくり活動」

京都わかくさネットは、生きづらさを抱える少女たちを対象として、京都府更生保護女性連盟が立ち上げた事業がもととなり、2018年に法人化された比較的若い団体である。これまで少女が立ち寄れる居場所「わかくさカフェ」の開催や居場所作りのトライアル事業、公開シンポジウムなどの普及啓発事業など、当事者とともに運営していくことを主眼として活動している。
コロナ禍によって、これまで社会的にも不安定かつ流動的な立場にある少女たちがさらなる窮地に追い込まれている一方で、行政の制度や支援が及ばないケースも多く、本音が語れる場がないことから、少女の不安と孤立が一層深刻化している。
そういった中、本団体は当事者である少女たちが「わかくさカフェ」を運営することでピアとなり、悩みを分かち合いながらも立ち直っていくことを目指している。
本助成により「わかくさカフェ」が継続開催され、そういった活動の場が提供されることで、今後、少女たちが主体的に活動できるようになっていくことが期待できる。また、この助成を通じて、組織の基盤強化を図るとともに、同様の活動をしている団体や地域との連携により、支援活動のモデルになるような団体に育っていってほしい。