2023年度助成先が決まりました
タケダ・女性のライフサポート助成プログラム第2回助成の審査を行い、 下記の通り決定いたしました。
助成先一覧
■新規助成
団体名 | 所在地 | 事業名 | 助成額 |
---|---|---|---|
特定非営利活動法人 やっぺす | 宮城県石巻市 | 生きづらさを抱える女性とこどものための、 居場所と自立にむけた支援事業 | 421万円 |
特定非営利活動法人 NEXTしらかわ | 福島県白河市 | 生きづらさを抱える女性の孤立を防ぎ、 新しいコミュニティをもって自立に繋げる事業 | 484万円 |
特定非営利活動法人 つなげる | 兵庫県尼崎市 | 双子シングルマザー生活物資送付型相談支援事業 | 488万円 |
特定非営利活動法人 ジャパンマック | 東京都北区 | 女性としての生活諸課題を併せ持つ依存症女性の回復支援事業 | 500万円 |
■継続助成
団体名 | 所在地 | 事業名 | 助成額 |
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特定非営利活動法人 女のスペース・おん | 北海道札幌市 | 生きづらさを抱える女性の継続・個別的な女性支援事業 | 400万円 |
特定非営利活動法人 ダイバーシティ工房 | 千葉県市川市 | 暮らしに困難を抱える女性を支えつなぐためのSNS相談事業 | 400万円 |
特定非営利活動法人 ピッコラーレ | 東京都豊島区 | 孤立した妊産婦のためのワンストップ拠点運営事業 | 400万円 |
*助成期間:2023年4月1日から2024年3月31日までの1年間
*助成件数:7件(新規:4件、継続:3件)
*助成総額:3,093万円(新規:1,893万円、継続:1,200万円)
選考総評
1.新規助成 応募の傾向
「タケダ・女性のライフサポート助成プログラム」の第2回助成は、2022年11月14日に告知を開始した。2022年12月14日~20日の受付期間に東京都を中心に18都道府県の29団体から29件の応募があった。団体の活動エリアは市区町村域、都道府県域、広域あるいは全国域がほぼ1/3ずつであった。法人格別では、特定非営利活動法人からの応募が全体の79%となった。助成の対象となる取り組みについては、多くの申請が複数の取り組みに該当するものであった。また、応募総額は1億2,096万円、平均応募額は417万円であった。
2.選考委員会 総評
■新規助成
第2回助成は、全国から29件の応募がありました。昨年度から引き続き、本助成に寄せられた期待の大きさを実感しています。
今回も選考委員会で審査をし、助成団体を決定いたしました。特に重点を置いた議論のポイントは、「パーソナル支援」です。生きづらさを抱える女性は、一人ひとり状況が異なり、それぞれの置かれた状況に合わせた支援を行うことができるかという視点で、議論が活発に行われました。
また、選考基準には、以下の3つのポイントも掲げました。
・先駆性:創造性に富み、チャレンジ性がある。
・課題解決性:生きづらさを抱える女性が抱える今日的課題の解決につながる。
・新規・発展性:これまでの実績を踏まえ新しく展開、発展し、他のモデルとなる事業である。
今回、採択したのは4団体でしたが、生きづらさを抱える女性支援を行っている他の団体に対して様々な知見をもたらしてくれる存在になることを期待していますし、その知見を得た多くの団体で支援が深まり広がることで、生きづらさを抱える女性が安心で健康的な生活を取り戻すことを願っています。
■継続助成
第1回助成の全5団体より応募をいただき、選考委員会へのプレゼンテーションを経たうえで審査をいたしました。昨年度の活動の振り返りがしっかりと行われており、継続して助成することで、生きづらさを抱える女性への支援活動がさらに発展・改善されることが期待される3団体を継続助成団体として決定いたしました。
本助成による成果が各地で同様の活動に取り組む団体にも共有され、全国のモデルとして広がることを望んでいます。
(*選考委員会メンバーは昨年と同様のため掲載せず。)
助成概要と推薦理由
■新規助成
助成事業テーマ「生きづらさを抱える女性とこどものための、居場所と自立にむけた支援事業」
2011年の東日本大震災後に設立された同団体は、当初より「女性」を中心に事業を展開してきた。また、石巻地域やその周辺地域の住民、企業、NPO、行政等さまざまな主体と協働して事業を行っている。新型コロナウイルスの影響により2020年以降、地域女性からの生活困窮の相談が増加すると、パントリー、シェルター、県からの委託による相談窓口の設置など、困っている女性たちのニーズに合わせて支援メニューを開発し、支援の幅を広げてきた。様々な事業を行っているのは、一人ひとりの声を聴き、それに対応してきた証であると言える。支援を広げ実績を積み上げていること、地域との信頼関係が築かれていることが高く評価された。
今回行われる事業は、相談の場、安心安全な居場所の提供、食の支援、個々の状況に合わせたコミュニティ支援、スキルアップ支援、小さな収入につながる支援など、これまで行ってきた支援に一貫性をもたせ、より拡充した支援を行うことだが、相談から自立支援まで一貫した支援を受けられることは、生きづらさを抱える女性のエンパワーメントに大きな意義があると考える。
助成事業テーマ「生きづらさを抱える女性の孤立を防ぎ、新しいコミュニティをもって自立に繋げる事業」
NEXTしらかわは社会課題に市民協働で取り組むという理念の下、生活困窮者を対象に相談、子どもの居場所、シェルターなどの機能を持つ「みらいハウス」を運営してきたが、その対象が広いことでひとり親家庭が利用しにくいという状況にあることを踏まえ、今回の助成事業では、シングルマザーとその子どもを対象とした「KAKOMU」の設置・運営を行う。機能としては当事者同士のコミュニティーとしての居場所、24時間のSNS相談、担い手の育成、自立創業支援、パソコン教室などを予定している。
ターゲットを絞ったうえで、当事者同士が常時つながれることを目指した居場所やSNS相談のほかに、就業を支援するためのサービスも展開することで特徴のある事業となっている。団体幹部がITや起業の分野に強いこと、行政とのつながりも強いことなどの団体の特徴も生かして、あたらしい支援の形を切り拓くことを期待する。
助成事業テーマ「双子シングルマザー生活物資送付型相談支援事業」
つなげるは、双子育児の体力的・精神的な負担軽減や、孤立・孤独をやわらげることで、子どもの健全育成を図る活動へとつなげることを目指す団体である。双子育児の親御さんは、孤立・孤独を抱えがちであるにもかかわらず、コロナ禍によって同じ境遇の人や適切な支援者に巡り合えず、さらにその状況が深刻化している。
1年目の事業では、双子を抱えるシングルマザーに焦点を当て、団体が運営するオンラインコミュニティやSNSへの情報発信の強化によって、適切な情報および支援を受けられるよう状況改善を目指す。また支援物資の配布や相談事業を展開し、自らが課題を解決する手段を見出せるようエンパワーメントする。
双子育児に関する行政の支援はあるものの、双子シングルマザーに焦点を絞った支援はなかなか見られないため、本助成事業は大変意義深い。また情報発信を通じ、彼女たちが抱える課題とその存在を社会に広く知ってもらうことも、大いに期待している。
助成事業テーマ「女性としての生活諸課題を併せ持つ依存症女性の回復支援事業」
この団体は、依存症を抱える人々の支援では45年の実績があり、アルコール・薬物等の依存症女性に対する回復支援施設としても20年の活動実績がある。施設を利用する人の中には、依存症以外の問題(子女の養育、発達障害、盗癖、性暴力被害など)も抱える当事者が少なくないという。今回は、それに対してオーダーメイドの支援を多機関連携により実施しようという計画である。リエゾンスタッフを置く、個別面談をしてオーダーメイドな支援を行うなどという事業案は妥当なものであり、これらの課題について対応が必要であるということは、世界各国の現場でも指摘され取り組まれていることでもある。依存症を切り口にこの施設の支援につながった方に対して、必要な、包括的な支援が始まることに期待したい。
■継続助成
助成事業テーマ「生きづらさを抱える女性の継続・個別的な女性支援事業」
女のスペース・おんは、札幌を拠点に、女性に対する差別と偏見および暴力のない世界の実現をめざして、相談事業やシェルターの運営などを長く続けてきた団体である。コロナ感染下で浮かび上がった家庭内DVや若年女性の非正規・サービス業従事者の失業、物価高など若年女性の問題は、今なお深刻だ。1年目の事業では、こうした若年女性の困難に焦点を当て、のべ約1,000人に生理用品や食料等を定期的に手渡ししながら関係性を構築するなど、一歩ずつ実績を重ねている。
2年目となる本助成では、支援物資配布とともに積極的な声がけを行い、より相談しやすい環境を作ることで、行政・他団体と連携した実際の支援につなげていく。また市民や団体、企業への巻き込みを通じて、ボランティアや寄付の受け皿づくりに取り組む。若年女性の抱える課題に寄り添い、情報を発信し、理解者を増やしていくことで、一人でも多くの人々に裨益するような展開を期待したい。
助成事業テーマ「くらしに困難を抱える女性を支えつなぐためのSNS相談事業」
ダイバーシティ工房は、困難を抱えながらも自ら相談機関に赴くことが難しい女性のため、「いつでもどこでも相談できる」SNS相談を実施している。相談のうち具体的な支援を要するケースについては、法人が持つ自立援助ホームなどで受け入れるほか、地域の直接支援機関につないできたが、助成2年目となる本年度は、これまでの経験を踏まえ、とりわけ孤立、困窮の状況が著しく、また住居の確保に苦慮している母子家庭に着目し、「母子向けシェアハウス」の立ち上げを予定している。これにより、単身の者のみならず、母子も確実に直接支援へつなぐことができるようになることが期待できる。
相談から直接支援へのつなぎはどの団体でも苦慮するところであるが、当団体は、地域密着型の団体の特性を生かし関係機関との連携を強めると同時に、それでも不足する社会資源については自ら設置・運営し、さらに次年度は住居の支援も予定しており、地域の中で対象者に継続的に伴走する支援体制のよいモデルとなることが期待できる。
助成事業テーマ「孤立した妊産婦のためのワンストップ拠点運営事業」
妊産葛藤の相談支援や啓発活動をしているこの団体が、昨年新たに居場所事業を始めた。この1年間で宿泊利用、日帰り利用ともに、かなり若い年齢の女性たちへ支援実績を作った。その活動によって、日本で毎年起きている「出産した子どもの死亡・遺棄事件」を防止できたのだと彼女たちは自負する。今後はさらに利用後のアフターケアも取り組むという。また、制度のはざまにいるこうした利用者に向き合うことによって、現在進もうとしている子ども家庭庁や厚生労働省の施策への提言につながる発見もあり、各地で取り組む団体とのネットワークづくりも進めているという。これらのことから、他地域への波及効果も期待され、政策提言にもつなげられる可能性を有している。「孤立した妊娠」に焦点を当てて問題を掘り下げた活動によって、この社会にまだ足りていない、必要な支援を発見して実践し、明確な社会発信を行えていると評価できる。