2024年度助成先が決まりました
タケダ・女性のライフサポート助成プログラム第3回助成の審査を行い、 下記の通り決定いたしました。
助成先一覧
■継続助成
団体名 | 所在地 | 事業名 | 助成額 |
---|---|---|---|
特定非営利活動法人 やっぺす | 宮城県石巻市 | 「ひとりじゃないよ」生きづらさを抱える女性が地域と繋がる ためのサポート事業 | 324万円 |
特定非営利活動法人 NEXTしらかわ | 福島県白河市 | 生きづらさを抱える女性の孤立を防ぎ、新しいコミュニティを もって自立に繋げる事業 | 397万円 |
特定非営利活動法人 ジャパンマック | 東京都北区 | 女性としての生活諸課題を併せ持つ依存症女性の回復支援事業 | 400万円 |
特定非営利活動法人 ダイバーシティ工房 | 千葉県市川市 | 暮らしに困難を抱える女性を支えつなぐためのSNS相談事業 | 400万円 |
特定非営利活動法人 ピッコラーレ | 東京都豊島区 | 孤立した妊産婦のためのワンストップ拠点運営事業 | 400万円 |
*助成期間:2024年4月1日から2025年3月31日までの1年間
*助成件数:5件
*助成総額:1,921万円
選考総評
1.選考委員会 総評
2024年度は、タケダ・女性のライフサポート助成プログラムの最終年度となります。よって、今回は、継続団体のみに限って募集を行い、2023年度の助成団体すべてから応募がありました。
書類審査、選考委員会でのプレゼンテーションを経て、選考を行いました。継続助成であることから、これまでの助成プログラムの実績が示されているか、課題点の振り返りが行われ、発展・改善された内容となっているかなどの視点で議論が行われました。また、助成終了後も活動が持続的に続いていくのかという視点も重視しました。
結果、支援活動がさらに発展・改善されることが期待される5団体を継続助成団体として決定いたしました。今後、各団体の取り組みが、同じような取り組みを行う団体にも波及し、生きづらさを抱える女性が抱える今日的課題の解決につながっていくことを期待します。
本助成による成果が各地で同様の活動に取り組む団体にも共有され、全国のモデルとして広がることを望んでいます。
<選考委員>
市川はるひ | 武田薬品工業株式会社武田薬品工業株式会社 グローバル コーポレート アフェアーズ ジャパンCSR |
北仲 千里 | 広島大学ハラスメント相談室 准教授 特定非営利活動法人全国女性シェルターネット共同代表 |
平山 亮 | 大阪公立大学 大学院文学研究科 人間行動学専攻 准教授 |
村木 厚子 | 社会福祉法人 全国社会福祉協議会 会長 一般社団法人若草プロジェクト代表よびかけ人 |
萩原 なつ子 (選考委員長) | 認定特定非営利活動法人日本NPOセンター 代表理事 独立行政法人国立女性教育会館 理事長 |
<助成事務局> 認定特定非営利活動法人日本NPOセンター
助成概要と推薦理由
■継続助成
助成事業テーマ「「ひとりじゃないよ」生きづらさを抱える女性が地域と繋がるためのサポート事業」
2011年の東日本大震災後に設立された同団体は、当初より「女性」を中心に事業を展開し、石巻エリアやその周辺の地域住民、企業、NPO、行政など、さまざまな関係者や団体と協働で事業を行っている。1年目の事業では、生きづらさを抱える女性の相談の場を設けるほか、パントリー、安心安全な居場所の提供、食品や生活用品等の現物支援など、相談者に寄り添い、自立に向けて非常に丁寧な対応を積み重ねてきた。 2年目は、1年目の事業を継続・発展させて取り組む。これまでの活動に加え、相談者の生活をサポートする地域ボランティアの育成にも注力し、生きづらさを抱える女性が日常的・継続的に地域とつながることで安心安全に暮らすことを目指す。自立までの道のりはたやすくはないが、助成期間中に新しいつなぎ先を開拓し、確実に支援につなげられる取り組みを期待する。将来的に自立する女性のロールモデルを共有できるようになれば、生きづらさを抱える女性のエンパワーメントに大きな意義があるであろう。
助成事業テーマ「生きづらさを抱える女性の孤立を防ぎ、新しいコミュニティをもって自立に繋げる事業」
NEXTしらかわは、福島県白河市を拠点に、生きづらさを抱える女性、とりわけシングルマザーとその子どもの居場所の提供、オンラインでの24時間のつながりづくり、就労支援などに取り組んできた。これまでの取り組みの成果等の分析により、世代間でニーズが異なることが明らかになったことから、新たに若年女性向けの夜間の居場所の創設を行うとともに、異なる世代間でともに取り組むマルシェの実施により世代的な融合を図ることを予定している。また、パソコン教室と起業家育成プログラムについては、自立支援の実効性を高めるため、両事業の一体的な運営などブラッシュアップを予定している。
若年女性支援はこれまで、公的な支援の薄かった分野であり、成果を期待したい。また、当団体が「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」が施行されたことを踏まえて、行政や他の支援団体との連携を図り、事例の共有、モデル化、政策提言を目指していることにも期待したい。
助成事業テーマ「女性としての生活諸課題を併せ持つ依存症女性の回復支援事業」
ジャパンマックは、当事者と専門職スタッフの協働による依存症回復支援を40年以上続けており、アルコール・薬物等の依存症女性に対する回復支援施設としても20年の活動実績がある。近年、依存症への社会的認知が少しずつ深まり、支援機関も増加してきた一方で、この団体では、複合的な課題や深刻なトラウマを抱える人等、より高度かつ多様な専門性が求められる当事者支援が増えてきている。 本助成では、子育てと治療の両方に課題を持つ依存症者が治療に専念するための子育て支援や児童福祉機関との連携、治療の離脱や再犯を防ぐため、課題ごとの専門家とのケース協議を強化したオーダーメイドで多機関連携による支援を実践する。さらにこれらの取り組みを全国に広げるため、依存症女性の回復施設の地域ネットワークを確立し、孤立しやすい依存症女性が回復支援につながりやすい状態を目指していく。これらの取り組みが全国の民間依存症女性回復支援団体へのモデルとなり、民間支援の活性化が図られることを期待する。
助成事業テーマ「暮らしに困難を抱える女性を支えつなぐためのSNS相談事業」
ダイバーシティ工房は、自らが運営する自立援助ホーム、シェルター、学習支援(さらにシェアハウス整備)など直接支援の体制を持ちながら、同時にSNSで、孤立した子育て環境や、経済的困窮、DVなどさまざまな困難を抱える女性からの相談を受け、対面での相談、各地の支援関係機関への連絡調整を行ってケース支援を展開している。SNS相談は、気軽にアクセスできるが、途中で途切れやすく相談内容を聞き出すまでに時間がかかるという難点を持つが、この事業ではSNS相談で「気持ちが落ち着いた」「相談することで、困りごとに対して必要な情報を手に入れることができた」と答える利用者が一定層生まれている。さらに、SNSで情報提供するだけではなく、児童相談所や市役所等支援機関との仲介をするなどの継続支援が行われている。SNS相談から入ったケースを継続的に支援して結果が出せるという非常に貴重な成果を生んでいる団体であるといえる。また、この間、地域での支援機関との関係を築くことにも取り組んでおり、事業継続や発展への期待がある。
助成事業テーマ「孤立した妊産婦のためのワンストップ拠点運営事業」
ピッコラーレは、家族や地域からの支えが得られずに孤立する若年妊婦が安心できる居場所をつくるために、2020年から居住を伴う生活支援の場の運営に取り組んできた。
活動を継続する中で、相談者や利用者、元利用者へのアウトリーチ(付き添い支援)や、退所後のアフターケア(生活再建や就労)に関わるニーズが高くなっている。行政や病院、他機関からの問い合わせや連携が増えている中、複合的な支援が必要な女性が、妊娠により、さらに支援の狭間に置かれるようなケースも増え、スタッフに求められる専門性も多様化している。
国による予算化や制度化に向けた動き(特定妊婦等支援臨時特例事業等)が進んでいるが、活動地域で公的資金を活用した取り組みに至るまでにはまだ時間が必要であり、継続した支援が必要である。 本助成を通した取り組みが、孤立した若年妊婦への官民連携の支援モデル構築の一助となることを期待している。