■日時 2023年12月2日(土)
■会場 聖心女子大学 聖心グローバルプラザ

開催趣旨

市民セクターが大きく広がる契機となった特定非営利活動促進法(NPO法)の成立から25年。市民セクターは広がり、成熟し、改めて変容の時期に入っています。
NPO法成立と機を同じくして活動を始めた団体は軒並み設立25年を迎え、否が応でも世代交代を意識することになり、組織のあり方の再検討が求められています。
新型コロナウイルスへの対応は活動スタイルの変化をもたらしました。自粛によって分断が進む一方で、オンラインとオフラインを使い分け、これまでにない人と人とのつながりが生まれました。
テレワークや兼業の一般化はじめとする働き方変化や地域課題への関心の広がりは、市民活動の活動スタイルの多様化をもたらしています。
この大きな転換期に改めて市民セクターの社会的意義を確認し、これからのあり方とめざす方向性について議論したいと思います。

各分科会報告

オープニング NPO法から25年 いま市民セクターに求められること

■趣旨
市民セクターの広がりの大きなきっかけの1つである特定非営利活動促進法の成立から25年が経ちました。この25年間で市民セクターを取り巻く環境は大きく変化しています。NPO法人は5万を超え社会に定着をしました。この間、企業の社会貢献活動は広がり本業との関係も変化しています。少子高齢化はますます進み、家族構造は大きく変化。セーフティネットのあり方にも変化が求められています。
25年の変化を受けて現在の社会状況をどう認識するのか。NPO、企業、行政の各セクターがどのように連携して課題に取り組み、いかに新たな社会を創っていくのか。そして市民セクターへの期待は何か。それぞれのセクターのキーパーソンと議論します。

■登壇者
福田 里香さんパナソニック ホールディングス株式会社 CSR・企業市民活動担当室 室長
一般社団法人日本経済団体連合会 企業行動・SDGs委員会 経団連1%クラブ座長)
山本 麻里さん内閣官房 孤独・孤立対策担当室 室長)
■コーディネーター
木内 真理子さん認定特定非営利活動法人 ワールド・ビジョン・ジャパン 理事・事務局長)


A分科会:市民社会を生み出す場

A-1 地方議員と市民セクターはいかに対話・連携するか

■趣旨
私たちの最も身近な行政区である基礎自治体の施策は、私たちの生活に直結しています。どうすれば市民の声を元にした施策を実現できるのか。このセッションでは地方議会における「NPOと市議会議員の協働のありかた」を検討し、多様な声を議会に届けるために必要な戦略を参加者とともに議論します。

■登壇者(五十音順)
鈴木 恵さん浜松市議会議員)
古沢 耕作さん春日部市議会議員
■コーディネーター
生越 康治さん熊谷市市民活動支援センターセンター長・NPOくまがや 理事)

■報告
鈴木恵さんから、「地方議員の多くは地域で活動しているNPOのことを知らないが、NPOは地域の社会課題を知っている議員にとってありがたい存在」、古沢耕作さんからは、「NPOは横につながっていることが多い。複数のNPOが合同で地方議員と意見交換会をしては」と話題提供がありました。参加者からの「特定の議員とつながると偏っていると見られないか」という質問に対しては、超党派をめざし、「全方位外交」を心がけること、働きかけは最大会派から実施すること、意見が異なる会派・議員にも情報提供をし続けることなどのコツが提示されました。また、年に1~2回超党派議員が参加する「研究会」を実施しているNPOの取り組み事例が紹介されました。多様性のある議会構成のための選挙も論点となり、市民による地方議会への関心や日常的な取り組みの重要性も提起されました。最後は、生越康治さんが「まずは声をかけて議員とつながること」とまとめ、本テーマの継続した情報交換の場をつくることを確認しました。

A-2 住民の交流から活動が立ち上がる場のあり方

■趣旨
街に住んでいる人たちのふとした気づきや違和感から新しい取り組みが次々と生まれる。そんな生き生きとした街が実現するには、地域の人たちが立ち寄り、くらしの中での困りごとや「あったらいいな」を語る場と、アイデアを形にしていく営みが噛み合うことがポイントのようです。住民主体の取り組みが生まれる場のあり方について考えます。

■登壇者(五十音順)
柏木 輝恵さん特定非営利活動法人シミンズシーズ 事務局長)
南 信乃介さん特定非営利活動法人1万人井戸端会議那覇市繁多川公民館館長)
■コーディネーター
北川 有紀さんほどがや市民活動センター「アワーズ」センター長/認定特定非営利活動法人WE21ジャパン 理事)

■報告
街に住んでいる人たちのふとした気づきや違和感から新しい取り組みが次々と生まれる。そんな生き生きとした街が実現するためにはどのような働きかけができるのか。柏木輝恵さんからは、「どんな事業でも一緒に作ることを大事にしている。“お客様”にしない」。南信乃介さんからは、「違和感を違和感のまま大事にすること。みなさんから話を聞いて、どう自己変革していくか。学び、変わっていく習慣をつけることが大事」というコメントが出されました。 また、南さんは前日に行われたNPO法25周年記念フォーラムの議論を引用して、「NPOは市民が行う自由な社会貢献活動である。私たちは自由なんだ、もっといろいろなことができるということを改めて確認した」とまとめられ、地域で対話を重ね参加を重視して多彩な活動を展開していこうと参加者のみなさんとも共有しました。


B分科会:人権とNPO、改めて「当事者性」を考える

B-1 私たちはいかに人権をテーマにつながるか

■趣旨
近年は女性や子ども、LGBTQなど人権に深くかかわるテーマで活動を展開する団体が増えてきました。また、企業においても「ビジネスと人権」として企業活動における人権の尊重が注目されており、一人ひとりの尊厳が大切にされる人権意識の高まりは広く社会で活動や場を見直す機会につながっています。一方、共通するはずの「人権」というテーマを前に包括したつながりが生まれない状況をどこか感じないでしょうか。本分科会では、人権侵害や差別に対する活動を展開する実践者とともに、いかにして人権をテーマに私たちがつながり、さらなるアクションを起こしていくのかについて考えます。

■登壇者(五十音順)
埋橋 伸夫さん特定非営利活動法人 暮らしづくりネットワーク北芝 代表理)
正井 禮子さん認定特定非営利活動法人 女性と子ども支援センターウィメンズネット・こうべ 代表理事)
■コーディネーター
小池 達也さん一般社団法人よだか総合研究所 理事)

■報告
埋橋伸夫さんは、被差別部落の歴史と実践の歩みを紹介しながら、「取り組む課題の重なりが大きい団体同士だと連携や協働が生まれる一方、競争などから反目も生まれる」「例えば、社会手当としての住宅手当のような、課題の重なりが少ない、けれど取り組まなければいけない課題でつながろうとすることが、人権をテーマにつながるヒントになる」と述べました。正井禮子さんは、「DV被害女性への支援や子どものための居場所づくりを通して、住まいの重要性を痛感した。相談者から、暴力を我慢するか、暴力から逃れて貧困状態になるかしか選べないのかと聞かれ、安全・安心の住まいは『居住人権』だと考えている。今、悲願のシェルターを建設しようとしている」と述べました。参加者との議論では、「分野にとらわれず、『暮らし』や『住まい』の視点から活動を考え、つながろうとすることが必要」「まずは、NPOの中にも人権侵害や差別が『ある』という認識に立ち、対策を考えることが大切なのでは」として、締めくくられました。

B-2 「居場所づくり」を当事者性とウェルビーイングから考える

■趣旨
子ども家庭庁の施策や孤独孤立対策などにおいて、NPO・市民活動・ボランティアの「居場所づくり」は重要な取り組みとして位置づけられています。地域住民や当事者が試行錯誤で作ってきた活動が評価され始めていることは歓迎すべきことです。一方、国や社会での認知が広がる中で「居場所づくりはこうあるべき」と枠組みが固定化されることや、課題解決としての期待が高まりすぎて、結果的に居場所に携わる人や居場所を必要とする人たちの「ありのまま」が尊重されにくくなる懸念があります。この分科会では、居場所づくりを支援-被支援の関係性を超えた場に居る私たちの当事者性とウェルビーイングの視点からとらえ、多様な居場所のあり方を通した人権尊重について考えます。

■登壇者(五十音順)
久保田 翠さん認定特定非営利活動法人 クリエイティブサポートレッツ 理事長)
嶋村 仁志さん一般社団法人TOKYO PLAY 代表理事)
■コーディネーター
毛利 葉さん公益財団法人とっとり県民活動活性化センター 理事長)

■報告
久保田翠さんは、「多様な人がともにいる場所を街につくる。新しくつくるというより、すでにある場所や施設も居場所にしていくことが大切」と述べ、嶋村仁志さんは、「子どもにとって遊ぶことの最大の効用は、もっと遊びたくなること。その遊びの空間が地域で少なくなっていることは、環境問題ではないか。道路を歩行者天国にして、遊びをキーワードにご近所につながる多世代交流の取り組みを行っている」と述べました。参加者とともに議論が行われ、「自分の意思を表現しづらい人の気持ちをくみ取りながら、でも、あくまで本人の気持ちを常に確認し活動をすすめていきたい」「物理的な居場所をつくるだけでなく、すでにある場所も含め心理的な居場所、居場所感をいかに街につくることができるか」「いろいろな人に触れ合えることは子ども・人にとって権利として大切にしたい」などの意見が出されました。


C分科会:NPOの現代的課題

C-1 寄付の対価性をどう考えるか

(企画運営:NPO法人会計基準協議会)
■趣旨
寄付をいただいた際にお礼をするのは、市民活動団体として当然行うべき行為です。その際、どのような、またどの程度のお礼であれば寄付として認められるのでしょうか。近年ではクラウドファンディングで寄付を募集する活動も一般的になっていますが、クラウドファンディングではリターン設定の検討が必要です。リターンとしてどの程度の価値がある返礼であれば寄付金として認められるのでしょうか。また、認定NPO法人として寄附金受領証明書の発行が可能な寄付とは、どの程度の返礼をした場合なのでしょうか。この分科会では、返礼がある寄付の取り扱いについて、NPO法、税法、NPO法人会計基準といった各ルールの取り扱いを俯瞰します。過去に実施された対価性のある寄付についての意識調査や、差額方式などの諸外国の制度、また6月に改定となった認定NPO法人の内閣府Q&Aなどに関してご紹介し、そもそも寄付とは何なのかを改めて考え、協議する機会とします。

■登壇者(五十音順)
武田 真木子さん高知県ボランティア・NPOセンター 専門職員)
脇坂 誠也さん認定特定非営利活動法人 NPO会計税務専門家ネットワーク 理事長/税理士)
■コーディネーター
大野 覚さんNPO法人会計基準協議会 事務局/認定特定非営利活動法人茨城NPOセンター・コモンズ 常務理事・事務局長)

■報告
脇坂誠也さんからは、NPO法・税制・NPO法人会計基準の考え方を共有したうえで、「寄付の対価性をどう考えるか」という課題提起、武田真木子さんからは「認定NPO法人の相談現場から」実際の相談事例を踏まえたうえでの課題提起がなされました。本分科会には、NPOからの相談を受ける立場の方(NPO支援センター、士業、行政)、ファンドレイジングを通してNPOと寄付に関わる方(NPO、フリーランス、企業)など、さまざまな立場の方が参加されました。参加者からは、認定NPO法人申請のためのPST基準がブラックボックス化しているのではないか、明確な基準があると良いのではないか、という声がありました。今後に向けて、今回のような学びを広げるような取り組みが継続して必要だということと、返礼品という言葉はNPOの想いを反映していないので、それに代わる新たな言葉をみんなで一緒につくっていけたらよいのではないか、という話がありました。
※この分科会は、NPO法人会計基準協議会が企画運営し、寄付月間賛同企画として開催しました。

C-2 「NPO代表者白書」調査報告“読書会”
~代表800人の実態から考えるソーシャルセクターの世代交代と未来~

(企画運営:特定非営利活動法人NPOサポートセンター)
■趣旨
NPO法制定から約25年、日本は社会課題に敏感な社会になり、課題解決に取り組む組織が多様化する一方、ソーシャルセクターの組織の事業承継や世代交代は決して進んでいるとはいえません。ただ、ソーシャルセクターといっても多様であり、企業の事業承継とも単純に比較できないためか、このテーマに対する関心はまだまだ低い。一方、世代交代は組織がモデルチェンジする大きなチャンスでもあり、このような機会をどう活かすかは、リーダーの意識や行動に大きく影響されます。そこで、NPOサポートセンターは2023年8月にNPOや市民活動団体の代表者に、団体運営に関する意識や行動に関する全国調査を行い、約800の回答を得ました。本セッションでは、この調査結果を、事前に参加者に共有し、当日は「読書会」形式で、注目すべき結果、そこから見える論点について議論し、今後のソーシャルセクターの事業承継・世代交代、リーダーのあり方を考えます。

■報告兼ファシリテーター
松本 祐一さん特定非営利活動法人NPOサポートセンター 代表理事 /多摩大学経営情報学部 教授)

■報告
松本祐一さんから、NPO法制定から約25年を経た今、世代交代が期待されている一方で、組織の中でもこの話題になかなか触れられない現状があることが指摘されました。その後のグルーワークでは、NPOサポートセンターが実施したNPOの事業継承に関する調査結果を読み解きながら、参加者がそれぞれの団体で抱えている状況も交えて意見交換しました。実際に代表職を次世代に手渡したばかりというベテラン世代の方からは、後継者探しと候補者との関係構築に数年をかけたこと、団体が培ってきた価値を丁寧に伝えることに注力した経験などが、当事者ならではの視点で共有されました。ご自身も歴史ある団体を継承した松本さんは、研究者とNPO代表という二足の草鞋を履きながら、両方の強みをそれぞれの分野に活かされています。NPOの事業継承と世代交代が単に団体の存続のためだけではなく、組織の新たな挑戦や変革の促進につながる可能性を感じられるセッションでした。
※この分科会は、特定非営利活動法人NPOサポートセンターにより企画・運営されました。


D分科会:調査が拓く市民社会

D-1 不可視化されてきた女性の困難に光をあてる

■趣旨
見えにくい困難や小さな声を可視化する調査は、私たちの社会に何が起きているか、どのようなアクションが必要なのかを問いかける力があります。市民による調査は、環境破壊や外国にルーツを持つ子ども達の権利状況など、社会の関心を喚起し潮目を変えてきた歴史があります。長く不可視化されてきた女性が抱える困難にも、近年様々な角度から実態を照らし出そうという努力がなされています。どのような調査を、誰とデザインするか、そしてどう社会に問うのか。「中高年シングル女性の生活状況実態調査」「生きづらさを抱える女性の支援にかかわる団体の実態調査」の二つの調査事例を基に、調査と提言の役割、そしてあり方を考えます。

■登壇者
大矢 さよ子さんわくわくシニアシングルズ  代表)
上田 英司 特定非営利活動法人日本NPOセンター  事務局次長)
■コーディネーター
萩原 なつ子特定非営利活動法人日本NPOセンター 代表理事)

■報告
大矢さよ子さんからは、ロビイングやメディアへの働きかけの過程で客観的なデータが発揮した力が語られました。また、女性支援団体同士が分野横断的につながっていくこと、さまざまな属性の女性たちが施策や競争によって分断させられることなく共通項を見つけ、社会と政治に対しともに働きかけていくことの重要性が指摘されました。上田英司からは、調査結果から女性支援団体同士のネットワークを強化する必要性を読み取り、研修プログラムにつなげたプロセスがシェアされました。萩原なつ子は、両者の報告を受け、「自己責任」社会にメスを入れる必要性があること、そのためには「競争」ではなく「共創」をめざすべきとコメントしました。参加者からは、分断を生まない連携・連帯への共感や、社会を変えていくための働きかけをこれから始めたいという決意が聞かれました。

D-2 NPO支援センターの実態とこれから~NPO支援センター調査より

■趣旨
日本NPOセンターでは、NPO支援センターのあり方やその課題を浮き彫りにすることを目的に「NPO支援センター実態調査」を2007年から4回実施してきました。これまでの調査は、回答結果に対して単純集計をベースにした分析が中心でしたが、今回の2022年度調査は、東洋大学の協力を得て、回答結果の二次分析を行いました。同大学での演習において担当教員と学生グループが因子分析による関連要因の可視化を行ったところ、これまでの結果とは異なるいくつかの新しいテーマが浮かび上がってきました。本分科会では、学生による分析結果を提示しつつ、NPO支援センターの現場の実態に照らし、その結果からどのような示唆が得られるかなどを話し合うことで、NPO支援センターのこれからについての議論につなげていきます。

■報告者・コーディネーター
須田 木綿子さん 東洋大学社会学部社会学科 教授)
■コメンテーター(五十音順)
藤枝 香織さん一般社団法人ソーシャルコーディネートかながわ 理事・事務局長)
松原 裕樹さん特定非営利活動法人ひろしまNPOセンター 専務理事・事務局長)

■報告
NPO支援センター調査を二次分析した東洋大学のみなさんの報告を受けて、藤枝香織さんからは、「これまでの調査とは違う角度での分析で新鮮」という感想とともに、地域をリードしていく存在としてのNPO支援センターの可能性について触れられました。松原裕樹さんからは、「データからNPO支援センターの政策提言の弱さがうかがえる」との発言がありました。一方で、それが必ずしも政策提言への関心の低さを表しているわけではないとし、NPOが行う調査の有用性について言及がありました。参加者からは、相談業務に対して政策提言が少ない実態や、NPO支援センターの資源の可視化の大切さ、市民の声を発信する力の必要性、そのための連携・協働の可能性など、さまざまな感想や意見が出されました。須田木綿子さんからは、NPO支援センターが単年度予算で政策提言や調査を実施することの難しさから、アカデミア分野からの連携の可能性についての言及とともにNPO研究者の人材バンクをつくる提案がありました。

クロージング 実践と研究の交差点

■趣旨
分科会の議論を振り返り、オープニングのテーマでもあった「NPO法から25年 いま市民セクターに求められること」について確認するとともに、いかに実践から「市民の知」を形成・蓄積してさらなる市民セクターの発展につなげるか、実践者と研究者の連携にも触れながら考えます。

■登壇者
石田 祐さん日本NPO学会 会長/認定特定非営利活動法人杜の伝言板ゆるる 代表理事)
萩原 なつ子特定非営利活動法人日本NPOセンター 代表理事/国立女性教育会館 理事長)