●日時:11月27日(2日目)16:00-17:30
●企画運営:市民セクター全国会議2021新潟・上越実行委員会
●登壇者
人口減少と高齢化が進む地方では、自治体や住民、企業、移住者など多様なプレイヤーがコミュニティづくりに関わっています。自らのライフスタイルを大切にしながら、地域とつながり、魅力的に活動する事例を通して、地方での新たなまちづくりの潮流を探ります。
新潟県上越地方において、暮らしや生業と結びついた活動をおこなっている4人の若者が、上越市にある築100年を超える映画館「高田世界館」に集まりました。本分科会では、「フォロワーとつくるまち」をテーマに、4人の活動を紹介していただき、の概要や地域との関わり方について議論しました。
はじめに、コーディネーターの大島誠さんは、「1998年にNPO法が施行されたころの市民活動は、地域を良くしたい、元気にしたいという思いを「組織」という形にして取り組みを進めるというやり方をとっていました。最近は「組織」という形態にとらわれず、自分のやり方で市民活動に参画する若者が増えた印象を持っています。「そんな若者たちの活動を発信できたら」と、このテーマを設定した趣旨を語りました。
活動の紹介や議論を深める中で、魅力的なまちづくりの実現のために共通して出てきたキーワードは、「地域の人への感謝」、「自然体な生活」、「周囲との一体感」です。登壇者の4名は、世代や立場を超えて共感者(フォロワー)を得ることで、新しいコミュニティを形成することに成功しています。
「高田世界館」支配人の上野さん。「高田世界館」は、NPOが運営しており、NPO設立当初は市民が修繕に加わり、建物保全からスタートしました。町屋風景が残る上越市高田地区に位置する同館を、まちづくりの中心として盛り上げるべく、地域住民を巻き込んだ様々な企画を展開しています。SNS上では、高田地区は「高田世界館」を中心としてレトロなまちとして注目を集めており、熱い応援をいただけていると言います。
糸魚川市で「長者温泉ゆとり館」を運営する屋村夫妻。山間集落の真ん中に位置し、長年、集落経営という形態をとって村人が運営していた「ゆとり館」を移住してきた屋村夫妻が引き継ぎました。知らないことを素直に伝える、自分たちのことを積極的に自己開示するなどの努力の結果、集落に受け入れられ、地域と一体となった施設運営ができるようになりました。施設は集落の真ん中にあるため、地域の方にとっては暮らしの一部です。その感覚を理解できる人や味わいたいという人に宿泊してもらうという配慮で、地域の方との信頼、支援を得られていると言います。
諸岡さんは、妙高市の中山間地域で古民家宿「こつぼねの家」を運営しています。同時に現地の農業法人で米作りにも従事しています。地域の人々や生活の知恵をリスペクトし、もっと学びたいという思いから「こつぼねの家」を運営しながら地域で生活する選択をしました。宿泊施設という形を取ることで、地域の素晴らしさ、地域の方の知恵の素晴らしさを宿泊者に伝えることができると言います。ホームページからの予約申込や問合せをあえて排除し、宿泊するための「やりとりの手間を楽しめる人に来てもらいたい」と言います。「関係人口」よりも「愛着人口」を増やすためにも、自分ではなく、地域に住み続けている人の生活をもっと知って欲しいと語ります。
最後に、大島さんは、各登壇者の活動によって地域が元気になったと言います。市民活動というものではなく、むしろ自然な暮らしをとおして地域と一体となることが、真に地域が求めている、「地域おこし」、「地域残し」なのではないか、その現場を実際に見に来てほしいと、本分科会を締めくくりました。
(報告:猪飼 愛さん)